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第5話

 今日の講義は終わりました。

 夕日の差し込む教室に俺以外の人の気配はなかった。


 講義が終わったみんなは家や寮に帰って、あるいは何処かに遊びに行きました。

 正直、俺もそうしたいですが——


「はぁ、どうして俺がこんなことをしているだろう」


 ……とため息をつきながら、俺は椅子から立ち上がり、黒板へ歩き出した。

 上に書かれた文字を消す。


 「千紗め………」


 不意に口から出た呟き。

 そう、これはサボりがばれたの罰です。

 俺だけが教室を掃除する理由と言うと——


※※※


 俺たちが教室に到着する時、点呼が既に終わりました。

 なるべく目立たないように、千紗がそぉっと教室の後ろのドアを開けると——


 一瞬の静寂。

 教授とクラスメイトの視線が俺たちに集中した。

 一部では、俺たちに視線を向けて、何やらこそこそと話をしている。


「あの二人は一緒って……」

「それで、デートでしょう~」

「きゃあ、やはりそうですね」

「そのふたり……付き合っているの?」

「う、嘘………」


 クラスメイトの刺すような視線が痛い。


 やはり誤解されたなぁ。

 こんな事になるなら、絶対ここに来ない。

 講義をサボって、早坂さんと『図書館デート』(妄想)の方が数倍いい。

 むしろ、そうしたい!

 でも、教授が俺の姿を発見した時点で、図書館に戻るのはほば不可能ですけど——


 何事も試してみないと!


 俺がこそこそ後ろに下がる時……


「でも、千紗さんは美人だし、桜井さんの外見はままだけと、成績などはちょっと……」

「それに、学校のイベントも参加しませんし」

「そうそう、桜井さんよりやはり中原先輩の方が……」

 

「……皆さん、どうかされましたか?」


 クラスメイトの議論に対して、千紗が質問した。

 彼女の話しを聞くと、クラス中がしーんと静まりかえった。

 

「ふたりとも、デートもほどほどになぁ……あなたたちは学生で、学生の本分は勉強だ!」


 林教授が仏頂面をして、そう言った。


「デートではありません。 生徒会の会議が長引いているので」


 さきほど遅刻で慌てる様子はまるで最初から存在しなかったように、千紗が反論した。


 我が校の生徒会は行事への取り組み、諸問題を管理しているので、それなりの権力を持っている。

 つまり、テストは赤点じゃないと授業を受けなくても大丈夫です。

 そもそも、生徒会役員みんなは成績優秀な者たちです。赤点を取るのは不可能です。

 なので、生徒会役員にはかなりの自由と権力を与えた。


 千紗の言葉を聞くと、林教授の態度も柔らかくなった。


「そうですか。では、お前ら、早く席につけ 」

「はい」


 俺は千紗の後ろについて、席に向うとき——


 何故か彼女がチラッと俺を見た。

「あ、それと……」


 嫌な感じがした。


「佑、桜井さんは教室に向かった時、()()()()連れて来たの」

「え?!」


「そいうことなら、桜井は何処に行った?」


 俺がそれを意識した時、教授も口を開いた。


「お、俺は…………」

「サボり?」

「い、いや、ちょっと具合悪くて、医務室に行った……」


 慌てる俺と違って、それを言った千紗は一直線に空いた席に向う。

 そして、席についた千紗は俺を見つめて、小悪魔ぽっい笑みが浮かぶ。


「あ、そうそう、来る途中に、桜井さんから遅刻したので、何かの埋め合わせしたいと言ったよ。今日教室の掃除当番は彼に任せるのはどうですか?」


 確か、今日の掃除当番は……千紗だよなぁ。

 くそ、はめられた!


「そうですね。では今日教室の掃除は全部桜井に任せる」

「…………」


 やはりそういうことになった。


「返事は?」

「承知しました!」


 嫌だとしても、それを受けました。


※※※


「おい、千紗」

「なに?」


 講義が終わった時、俺は千紗に声を掛ける。


()()は?」

「何の約束?」

「あ、あれの…………」

「ん?なに? 用がないなら、帰りますね」


 千紗の手首を捕らえた。


「えーと、授業も付き合ったし、は、早坂さんのことを……」


 彼女は興味津々に俺の顔を見つめる。


「あ、からかわれないで!」

「ふふふ、わかってます~~」

「…………」

「咲音ちゃん、最近は居酒屋でのバイトを始めた。帰宅時間は昔より遅くなるので、エスコートしなさいよ~」

「ふむふむ、具体的な場所は何処……」

「その問題は直接本人に聞け。では、今日の掃除頑張ってね」


 千紗が軽く手を上げて挨拶をして、すぐに教室を出た。


 という訳で、今の俺はひとりで教室を掃除しています。


「ふぅ…」


 思わず溜息をついたとき。

 やはり優しい幼馴染なんて、この世に存在しない。

 今日はそれを再確認した。


「おお、まだ一人がいる!」

「え?」


 一人の男性が教室に入った。

 俺の姿を見ると、彼は嬉しいそうに俺に近づく。


「これは、佑弥じゃないか」

「え、中原先輩?俺に何か用がある?」


 中原先輩は学校の人気者であり、生徒会役員とバスケットボール部の部長も務めています。

 そして、彼は俺と同じく経済学部の生徒です。

 簡単に言うと、中原先輩は()リア充です。


「それはね、佑弥、これから予定がある?」

「ないけど……」

「おお、良かった良かった」


 中原先輩と知り合いになったきっかけも単純に彼が千紗に告白が失敗した。

 なので、千紗の幼馴染であるの俺に目を付けられた。

 まぁ、敵意ではないと思う。

 ご本人も千紗に最告白するのために、情報収集しないととか言ったし。


「えぇと、佑弥、これから合コンに行かないか?」

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