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第2話 【早坂咲音 視点】

 男女の友情はあるか?

 昔の私なら、きっと『ない』と返事しますが、桜井くんと千紗ちゃんを見たら、友情はあると思われます。

 そんな純粋な関係に……少し羨ましい。


「私たちは無理かな……」


 消えるまで去っていく桜井くんの後ろ姿を見送ると、私は手元の小説を開く。


 あの夜、私は誓った。

 私は()()の彼が知りたい。


 私はずっと彼の傍にいるのに、彼のことは何も知りません。

 他人に迷惑がかからないように、私はずっと周囲に気を遣うので、自分本当の気持ちを伝える苦手です。

 だから、私ができるのは彼の傍にいる。傍にいて、彼を支えるだけ。

 いつか彼も私の気持ちを気づくと思って……


 でも、あの日、あの子が現れた後、時々寂しいそうな顔をしている彼が変わった。

 私もすぐそれを気づいた——

 彼はあの子が好きになった。


 幼馴染だから、すぐ分かる。


 でも、最後の結論が出る前に、私は諦めたくない。

 たとえ今の彼の目には私はいませんとしても、幼馴染だから、他の人に負けたくない。

 この恋、勝ち取りたいから……


 だけど、まさか本当の彼を知るために、私は現実世界に来た。


 初めて桜井くんと会ったとき、桜井くんは彼だとすぐ分かった。

 外見は違ったとしても、彼と同じ雰囲気が持っている。


 それにしても、この世界は平和だなぁ。

 昔の私がいる小説世界では、平穏な日常の裏で人の感情を利用し、人を操るや殺す都市伝説がいます。

 今の世界では桜井くんが言ったよう、変わらない、普通な毎日です。


『続きを書かないなら、新しい展開もないよ』


 突然に、先桜井くんが言った言葉を思い出した。

 私の作者・桜井くんはもう私の物語を書かない。

 そのままだと——


 未来がない。


 想像したら、寒気がしてきたけど。


『やめる理由が必ずある。 何かの契機があれば…もう一度小説を書くことも可能だと思う』

『…………』

『小説を書く人は、結局、誰よりも自分の小説が好き……彼らもきっと…諦めたくない……』


 そう、桜井くんの言う通り、契機があれば、彼はもう一度小説の続きも書くかも。

 それに、この世界なら、無力な私でも、何かができるはず。

 でも、どうすればいいのか……


 あの日、酔った桜井くんがベランダで言った言葉と悩んで考え抜いた末に出した結論は——


 もし、恋人が出来たら、桜井くんの日常にもきっと何かの変化が起きる。

 小説の展開みたいに……


 けれと、そのご本人は——


「はぁ……」


 思わず、ため息をつく。


 学校のイベントや部活を参加せず、私と千紗ちゃん以外、自ら女の子に声をかけることもない。


「桜井くんのバカ……」


 私は一人で呟いた。


「あの日の桜井くん、カッコ良かったのに」


 それを言いながら、私はあの雨の日のことを思い出してしまう。

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