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第0話

 少し憂鬱な月曜日の午後。

 俺はテーブルに広げた教科書を眺めながら、思いっきり大きなあくびをした。


「ふぅ、はぁ~~眠い~」


 まぶたがだんだん降りてくる。

 どうして教科書を見るたびに、こんなに眠くなるんだろう……

 何度も勉強に挑むけれど、集中力が散っていく、本の内容がなかなか頭に入っれない。

 やがて、勉強より、あくびの回数のほうが増えていきます。


「……今日も早起きで疲れたし、勉強はその後にしよう」


 俺の名前は『桜井(さくらい) 佑弥(ゆうや)』、20歳。

 世代木せだいき大学で経済学を勉強しています。


 興味というと──

 よく考えて見れば、特にない。


 高校生の時、一度小説を書くことに夢中になったが、今になっては、俺の黒歴史みたいなものになった。

 それに、昔書いた小説も何処かに捨てられた。

 

「ふぅ……静かだなぁ」


 今の俺は世代木大学の図書館一階のある片隅にいる。

 周りが静かくて、俺にとってはとても快適な空間です。


「……ふぁ…」


 教科書を閉じた俺は眠りの世界へ行くとき──


「桜井くん?」


 俺の名前を呼ばれたような気がした。


「ん——?」


 でも、俺は他学部の友達がないし、他学部の講義時間は詳しくないけど、大部の学生いまは講義を受けているはず。

 確認する気持ちはあるだけど、この眠気に勝てそうにない。


 やはり気のせいか……

 うん……寝よう……


 そんなふうに思ったとき——


「さ、桜井くん、どうしてここに?」


 今回ははっきり俺の名前が聞こえた。

 一体誰だ?

 重いまぶたをゆっくりと開けて、困惑している俺が振り返ろうとしたとき、ぽっと何が俺の頭に当った。


「あ……いててっ……」


 振り返った俺の視線の先、本を持って、真っ白なコートを着ている少女の姿があった。

 小さく、魅力的な顔立ちと、白く透明感のある肌に美しく長い銀灰色(ぎんはいいろ)髪が映える。


 彼女の姿が見えた瞬間、頭から眠気が一瞬払われてた。


「えぇ?!は、早坂さん?!」

「正解、えへへ、ビックリした?」

「あっ……うん」


 俺は慌てて咳払いをして、別の方向を見る。


 前言撤回、他学部の友達がないけど、気になる(好きな)人がいる。


「……早坂さん、こんにちは」


 とりあえず、いつも通りに挨拶した。


「こんにちは、桜井くん」


 彼女の名前は『早坂(はやさか) 咲音(さきね)』、世代木大学心理学部の二年生です。

 静かな人だけど、何か独特な雰囲気がある。


 そして、何故か彼女を見る度に、ドキドキする気持ちが胸にこみ上げた。

 この気持ちは好きかどうか分からないけど、多分俺は早坂のことが好き。


「桜井くん、眠そうな顔をしているよ」

「まぁ…」

「はい、コーヒー」


 そう言うと、早坂さんは鞄から1本の缶コーヒーを取り出した。


「おお、ありがとう……っで、俺に何かご用でしょうか?」

「むぅっ……」


 彼女が頬をぷぅと膨らませて、真剣な表情で俺を見ている。


「?ど、どうしたの?」

「どうしたじゃないよ。講義は? もしかして……サボり?」

「いやいや、き、今日うち休講です……」


 思わず、視線を逸らした。

 俺の返事を聞いた彼女は大きいな溜め息をつきながら、俺の隣に腰掛けた。


「やめて、嘘つかれるのが嫌いだから」

「あははははっ、バレたのか」


 まぁ、毎回講義をサボる時、俺はここにくるので、バレない方が難しい。


 俺が図書館にくる理由も簡単です。

 ここはたくさんの本があるし、集中して勉強、自習ができる。

 なにより、早坂さんはよく図書館に来るので、早坂さんの姿が見たいという不純な動機もある。


「……ごめん、今日はちょっと調子が悪くて、出る気分がない」

「はぁ~」

「…………」

「桜井くん、しっかりしなさいよ……」

「ん…次はちゃんと……」


 気がつくと、早坂さんは俺に顔を寄せた。


「ん?」

「桜井くん——」

「………………痛い!」


 痛みが走る。

 早坂さんが軽くに俺の頬っぺをつねっている。


「これは先ウソをついた罰です」

「ごめん、ごめん!!」


 俺の言葉を聞いて、早坂さんの手を俺の顔から離れた。


「いつもサボると、桜井くんの出席数が足りないよ……」

「出、出席数のことなら、心配する必要がない……と思う」

「本当ですか?」

「た、多分……出席を取る講義ではきちんと出るので」


 早坂さんの視線が痛い。

 首の後ろに汗が流れていく。


「って、早坂さんはどうしてここに……あ、小説か」


 早坂さんが持っている本の表紙を見ると、俺はすぐ分かった。

 彼女は小説を読むために、図書館に来た。


「ふぅ……都合悪くなるとスルーして……」

「…ハハ……」

「そうですよ」


 早坂さんが小説を机の上に置いて、愛らしくそれを見つめている。

 

「あなた本当に小説が好きだなぁ」

「うん、だって、物語が面白いです。 それに、子供(キャラ)が漸々に成長する姿を見ると、胸の奥が温かくなる」

「そうか」

「一緒に困難を克服し……」


 楽しそうに喋っている彼女のその姿を見ると、まるで昔の俺を見ているようだ。


「そんな彼らを見ると、(作家)の気持ちも少し分かるような気がします」

(作家)子供(キャラ)か……」

「どうしましたか?」

「あ、い、いや、何でもない。でもなぁ、流石、早坂さん、俺にはそのような気持ちが分からない……」 


 苦笑しながら、俺は缶コーヒーを開けて、中のコーヒーを飲んだ。


 正直、早坂さんが話した気持ち、俺はよくわかっています。


 でも、小説を書く時の俺にとって、書いたヒロインは自分の娘というより——


「ね、桜井くん」

「ん?」

「作者と自作キャラの関係、どう思いますか?」

「ぷ——!いきなりどうした?」


 早坂さんの唐突な質問に、思考も、言葉も、止まってしまう。


 そう言えば、このような会話が前にもあった。

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