第9話
「ねぇ、桜井くん……」
「どうしたの?」
「合コン楽しい?」
「うん、普通に楽しいよ」
「そうですか」
「そう言えば、早坂さん……バイトが増えた?」
「ええ」
早坂さんは俺の隣に住んでいる。
親から生活費などを貰った俺と違って、彼女はバイトで大学の学費、家賃と生活費を稼ぎます。
俺たち今住んでいるマンションの家賃もけっこう高いです。
あのマンションに住むメリットを言うなら、多分自宅を地下鉄やバス停に近い、交通が便利だけです。
たったそれだけのために、早坂さんは安いマンションを選ばれず、俺の隣に住んでいる。
「生活費、大丈夫ですか?」
「あ、それは大丈夫です」
「でも、バイトもほどほどになぁ、倒れてしまっては大変ですから」
「ありがとう、気を付けます」
もうちょっと安いマンションに住むなら、そんなに多くのバイトの必要もないと思うけど。
もしかして、買いたいものがあるかな?
それなら、俺が何かできることがあるか?
「桜井くん、心配しないで。あの時みたいに、大家さんに追い出されることはないから」
彼女は何かを思い出すように、目を閉じた。
俺は、そんな彼女の横顔をゆっくりと見つめた。
「ん?どうしたの?」
「な、何でもない!」
少し顔が熱くなってしまう。
「変な桜井くん…えーと、今日、合コンの中に気になる子がありますか?」
「それはないけど……」
「もったいないな。中に桜井くんのことを気にしている子がいるでしょう~」
「え、ええぇぇ、なんで分かるの?!!」
俺はびっくり過ぎで、足を止めた。
見られたのか?
い、いや……そんなはずがない。
「心理学を舐めるなよ~♪」
早坂さんは少し笑いながら、前に進む。
俺はすこし足早に彼女を追いつる。
「フフフフ~♪」
「なんで笑うの?」
「だって、桜井くんは『ええー!なんて!』みたいな不思議な顔してだんよ~」
「えぇ、俺はそんな顔をしているのか?」
「そうですよ~♪ それで、彼女と連絡先を交換したの?」
「えッと、一応?」
「一応?」
「彼女の連絡先を貰っただけです」
俺は一ノ瀬さんから貰ったメモ紙を早坂さんに見せる。
「えぇ、いいじゃないか。 どんな子ですか?」
「俺の向こうに座る女の子です。 彼女はうち大学の文学部の人です」
「同じ大学なら、これからよく会えるよね」
「どう言えばいいのかな——」
先、ほろ酔い気分になった一ノ瀬さんの赤い顔を思い出す。
『LIMEくらいもやってるでしょう?連絡して~』
『ねぇ、桜井さん……お持ち帰され……でも大丈夫ですよ』
『桜井くん、私はあなたのことが……ずっと好きです』
『今日、ありがとうね、桜井さん』
なぜ……そんな普通の俺に?俺みたい、一目惚れなの?
早坂さんの横顔をちらりと窺う。
「桜井くん、どうしたの?」
「いえ、何でもない」
頭に浮かぶイメージを振り払いながら、俺は前に進む。
「なら、桜井くんはどうするつもりなの?」
「なにもしない……」
早坂さんはちらりと横目で俺を見って、息をつく。
「あのさ、桜井くん……」
「ん?」
「覚えてる?私はあなたの恋を応援してあげる。っと言った時のこと」
そう言うと、早坂さんは俺より少し前に出て歩いた。
彼女は何かを思い出すように、遠くを見つめる。
その横顔を見るだけで、空気が重くなっていくのを感じる。
「ああ、覚えてる」
話を聞きながら、俺もふと昔話していたときのことを思い出す。
『桜井佑弥くん、私はあなたの恋を応援してあげる』
『え?どうして?』
『もしあなたが恋愛に夢中になったら、図書館のあの席も空きますから。 桜井くんが来る前に、あれは私の専用席ので……』
『でも、俺は好きな人がいません』
『じゃあ、先ずそれを一緒に探しましょう、桜井くん~♪』
あれから、半年過ぎた。
「それから、もう半年経ったんだね」
「そうだな」
「私は本気ですよ」
「…………」
どうして……
「桜井くん?」
「あ…いや、彼女は千紗の知り合いなので、俺に興味を持ったのはそのせいでかもしれません」
「…………」
「千紗のやつ一体何話しただろう」
「…………」
「困ったなぁ」
「ね、桜井くん……女性から好意を持たれたら、桜井くんは嬉しくないの?」
何故か早坂さんはふと立ち止めて、下唇を軽く噛んで俺を見つめている。
どうして、そんな表情をしているの?
まるで——
「男としては嬉しいけど………それだけです。 彼女と付き合う気はないです」
「どうして?」
何なんだよ。
お、俺は——
ダメ、そんなことを言うのはダメだ。
彼女の戸惑っている様子を見ると、口先まで出かかった言葉をのみ込んでしまった。
夜風が早坂さんの長い髪を撫でる。
彼女の顔は、優しい感じがして、でも寂しいような感じがする。
周りの喧騒が遠くに聞こえて……まるで別世界です。
早坂さんは、静かに夜空を見ていた。
そんな顔をしないで——
早坂さんと出会ったあの日と同じく、ある感情は心の奥から浮かぶ。
俺は彼女に近づく。
「さ、桜井くん?」
浮ついた気持ちに突き動かされて、俺は一回深呼吸してから、やっと話し出してくれた。
「早坂さん——」
毎回早坂さんが俺の恋を応援してあげるっと聞いた時、胸の中にはモヤモヤする。
「俺は気になる人がいます」
「そ、それは誰ですか?」
「その人を見ると……そんな気持ち…自分でもなにがなんだかよくわからない」
自分勝手に話を進む。
このまま、自分の気持ちを伝えよう。
たとえ失敗したら、酒が飲んだせいで、誤魔化すことも可能です。
それに、これは早坂さんの気持ちを分かるいい機会かもしれない。
「さ、桜井くん?」
「心理学部の早坂さんなら……」
それを言いつつ、俺は早坂さんに距離を詰める。