第8話
気がつくと時間が経つにつれて、お客さんは増え、店も賑わってきた。
最初の緊張感も消えて、今は少し楽しんでいるけど。
「やはり会話に入れないなぁ……」
盛り上がってるみんなと違て、今の俺は一人食事をしている。
一ノ瀬さんも彼女の友達と楽しそうに話しています。
俺は携帯を取り出す、時間を確認する。
「もうすぐ十時だなぁ」
個室にいるので、早坂さんの仕事姿が見えないのは残念だけど、彼女と一緒に帰れる機会を貰ったので、いいか。
一緒に帰るを考えるだけで、俺は少し緊張をする。
緊張というより、期待の高まりといったほうがいいかもしれません。
「水を飲んで、そろそろ、帰るか」
行く前に、喉をうるわすために、俺は一気に手元のガラス中の水を全部飲んだ。
飲んだ直後、俺はすぐ一つ事をきづいた。
「あ……」
慣れない味がした。
「あ、あれは俺の酒!」
「ごめん、ごめん……気づかなかった」
どうやら、中原先輩のビールを飲んだみたい。
テーションが少し上がったとは言え、うっかりビールを飲んだのは流石にまずい。
「いえいえ、だいじょぶ、だいじょぶ~~佑弥こそ、だいじょぶ~?」
なんか中原先輩もずいぶんのんだのんだ気がします。
「ん、大丈夫です……」
「おお、お前も酒を飲む?」
「俺は遠慮しておきます。 明日朝、講義があるので」
「お前、本当……真面目な」
「あははは……」
とは言え、ビール一杯だけで、俺は酔ってしまう。
頭はすでにクラクラして、気持ちがふわふわしている。
ビールは飲めないではないですが、かなり弱いです。
幸いのは今は十時に近い、そろそろ帰る時。
これでお酒を飲まされる機会もないだろう。
「ふむ……」
辺りを見回す。
既に酔いつぶれる何人がいる。
「すみません、俺、今日はこれで!」
それに、先に店の外に早坂さんを待つ方がいい。
金をテーブルに置いて、俺が席から立ち上がる。
中原先輩は奢ると言ったが、別に俺たちの関係はそんなにいいでもないので、そのままお言葉に甘えるのはちょっと微妙ので。
「中原先輩、俺、明日講義があるので、今日は先に帰ります!」
「おお、佑弥、じゃあな」
俺が個室に出よう瞬間——
「えーと、待って」
一ノ瀬さんが身を乗り出す、俺の腕を掴む。
「ぁ……ぅ」
そのせいで、一ノ瀬さんの胸元はぼうっと見える。
こういう状况に、自然と視線がそっちに行っちゃう。
なんていうか、男としての自然な反応というか……
心の中で自分を叱りつけつつ、視線をなんとか明后日の方向へ向けた。
「ど、どした?」
「あと、連絡してね」
スッと俺にメモ紙を差し出した。
「えーと、これは……」
「LIMEくらいもやってるでしょう?連絡して~」
目の前に起きった事がよく理解できない。
「えぇ?」
「その代わり~桜井さんのお願いも聞くから。 今日合コンに参加したことも長瀬さんに内緒します~」
「…………」
「ね? お願い~」
一ノ瀬の顔は赤くなって、下を見っている。
その可憐な姿に目を奪われて、思考が停止した。
「…………」
「桜井さん?」
頭がよく回らない。
無意識にうなついた。
「あ、いいよ」
差し出すメモ紙を手に取った。
「ありがとう……」
「えーと、ついでに一緒に帰りますか?なんか桜井さんは酔ってる気がする、ちょっと心配です」
彼女の俺を心配している姿に心臓がバクバクと脈打っている。
お酒のせいかもしれません、俺の顔もあつくなったと思う。
「ビール一杯くらいで、も、問題ありません……」
一ノ瀬さんが急に腕に力を込めて、俺を引き寄せる。
自然とお互いの体が密着してしまう。
彼女の温もりを感じて、俺の身体は熱くなってくる。
「……えっ?」
「ねぇ、桜井さん……あたしを……お持ち帰され……でも大丈夫ですよ」
心の中の獣を刺激するような甘い声で囁き。
お持ち帰り……
想像しちゃダメだと理性が叫んでいるのに、脳の他の部分がまるで言う事を聞かない。
「あははは、面白い冗談ですね」
冗談めかして、お茶を濁すことにする。
予想に反して、一ノ瀬さんが頬を赤らめたまま真剣な眼差しで俺を見ていた。
「……本当に、そう思ってる?」
「えっ……」
「桜井さん、私はあなたのことが……ずっと好きです」
「————!!」
「返事は後でも、大丈夫ですよ」
その時、一ノ瀬さんの友人から声をかけられた。
「うわ、二人とも、何にしているの!」
おかげで、理性が戻ってきたので、飛び上がるように、俺は一ノ瀬さんから離れる。
「あ、ごめん、彼女さんが待っているので、早く行かないと」
「え?そうですか じゃあ、桜井さん、バイバイ~♪」
失望した視線と寂しいそうな感情を感じだけど、一ノ瀬は笑顔のままで軽くに手を振った。
「一ノ瀬さんもなぁ」
「今日、ありがとうね、桜井さん」
「…………」
彼女の言葉に、どきん、と心臓が跳ね上がる。
そんなこと、思ってない。
思ってるわけがない。
「また学校でね、桜井さん……」
「…………」
逃げるように、その場から離れた。
※※※※※※※
「……ふぅ……」
大きなあくびをする。
合コンはこんなに疲れるとは思わなかった。
大したことをやっていないのに、激しい精神的に消耗のせいで、眠気が襲ってきた。
とりあえず、今日一日なんとか終わった。
あとは、家に帰って、風呂を入って、寝るだけです。
個室を出ると、俺は早坂さんと一緒に帰ろうとまわりを見渡す。
「あれ……?」
店の中、早坂さんの姿が見つからない。
まあ、先に外で待ってるのかも。
そう思いながら、俺は店を出ていった。
「ぐ、さむ!」
店の外に出ると、少し肌寒さを感じた。
夜風にあたって、眠気を吹き飛ばしてくれるようで、頭がすっきりしてきた。
「早坂さん……いないな」
そう思いながら、携帯を取り出し、ぱぱっとLIMEを打つ。
『店の前に待ってる』
返信がすぐきました。
『今片付いている、少々お待ち~(>人<;)』
「ぅ…………」
落ち着いた性格なのに、LIMEでよく絵文字やスタンプを使う。
その差も早坂さんの可愛いどころです。
『了解です!』
俺は静かに早坂さん来るのを待つ。
どうしてか俺は緊張していた。
早坂さんと一緒に帰るから?
「でもなぁ…」
一ノ瀬さんのことが頭の中に浮ぶ。
それにしても——
千紗とのこととは言え、女性から「気になる」のは初めてです。
これで、伝説中のモテ期?!
考えているだけで、恥ずかしくなる。
しかし、一ノ瀬さんの言葉や仕草は頭から離れない。
「にしても、早坂さん遅いなぁ」
十分が経った。
また早坂さんの姿は現れない。
店の中を覗けようとしたときに、ようやく早坂さんが店から出てきた。
「ごめんね、待たせちゃって~」
「バイトだったんだろ、少し待つくらい構いません。むしろ一緒に帰ってきてくれたんだし、ありがとう」
「フフフ……変な言い方…では帰りましょうか……」
「あ、あぁ」
早坂さんと一緒にマンションへ歩き出した。