2. 私は死んだ?
気が付けば、私は闇の中を歩いていた。
恐怖は無い。
辺りは真っ暗だというのに、自分の身体だけは見えるという不思議な現象を除けば至って平常だ。
着ているのは、学校指定の制服だった。
何も見えない。
「あら、また迷える子羊がいらしたのね」
声のした方へ振り向いた、その先に微笑んだ女性がいた。
A women greeted me with a smile.
背景と同じ色をしているというのに、これまた相手の身なりが判別出来た。
両手を組んだ胸元には、金の十字架が輝いている。
紛れもなく修道女である。
「ようこそ。ここは生と死の狭間ーー今際と呼ばれている場所です」
「どうしてココに?」
「あなたは死んだのですよ」
ーー死んだ?
「トラックにはねられて」
「憶えてないわ」
「衝撃が強過ぎたようですね」
何も考えられない。
「こちらへ。天国まで案内しますわ」
シスターは先に進んだが、私は動かなかった。
彼女に反発してというより混乱に決着が付かず、次の行動に移れなかったのだ。
ただ感情の部分では理解したようで、身体は震えて恐怖を表し、涙を流す事で、現在の状況に拒絶を示す事が出来た。
シスターは何も言わずとも、少女の涙を見ただけで相手の想いを汲み取れる出来た人らしい。
話を進めてくれた。
「まだ死にたくないようですね。しかし困ったわ。ここへ来た以上は天国へ連れて行かなければならない決まりがありますし」
シスターは自身の頬に手を添えて悩む素振りを見せた。
しかし先程とは違って、声の抑揚に違和感を感じる…つまり白々しく感じるのだ。何でだろう?
「そうだわ!試練を受ければ良いのです!」
シスターが右手を翳すと、私の後ろから風が吹いた。
…違う。
翳された右手から、圧倒的な力を感じて前屈みに身構えたが、見当違いな方向に引き込まれた。
私は落とされたのだ。