龍の継承者
ー第8話ー
屋敷騒動から数日たった。
そして神威の事情を全部奏に話した。
今はパソコンに向かい、テロリストの情報を探しながら幽霊の居候と会話をしている。
「えぇー!?じゃあ私達より大変な事情じゃないですか!」
「そんな事ないって。何がどう大変なのか人によって違うしな。」
そう、人によって事情の大変さなんて変わる。
それが心を持つ生物にとっての難問だ。
「神威は良いかも知れませんけど、イヴさんが可哀相ですぅー。」
泣きそうな声で語りかけてくる。
しかし、姿が見えないので神威の想像だ。
「・・・そうだな。イヴにはつらい事をさせてると思う。」
「でも不思議ですね。そんなに時間がたってるのに一度も会えないなんて・・・。」
「・・・奏。」
「何ですか?」
「・・・いや何でもない。」
神威は言いかけてやめた。
それは神威が隠し続けてきた事。
そしてこれからも・・・神威は隠し続けるだろう。
「よし、今日はこのくらいにして書斎に寄って今日の記録をつけて寝るか。」
書斎は二階の一番奥。
神威の部屋の向かいだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。今は・・・。」
「何を慌てている。」
と会話しつつ書斎の扉を開けた。
そしてそこにあった光景は・・・。
同い年くらいの女の子が着替えていた。
白い肌の背中と紫の生地に花の柄の着物。
髪は黒く太ももまであり長い。
髪は腰ぐらいで白い布で束ねている。
神威は数秒硬直し、真顔のまま扉を閉めた
「キャー。」
悲鳴が扉越しに聞こえてくる。
『状況を把握しろ俺!この家には俺しか住んでな・・・。もしかして・・・。』
「その声、お前は奏か?」
「は、はい。」
扉を背に、小さな声で返事が返ってきた。
「着替えを見てしまった事はすまない。だが何故着替えている?」
「私も女の子なんですから当たり前です!」
「では何故義父の書斎で、しかも姿を現して着替えている?
幽霊なんだから姿を消したまま着替えれば良いだろう。」
「あ・・・。ごめんなさい。」
奏は今頃気付いたらしい。
「もう入っても良いですよ。」
そう聞いて扉を開ける。
すると奏は白い生地に桜の花びらの着物に着替えていた。
「まさか初めて見た姿が着替え中とは・・・奏はアニメか漫画のお色気担当か!」
と突っ込みを入れてみる。
「アニメ?漫画?何ですかそれ?」
突っ込みは疑問文で返された。
『まあ分からなくても仕方ないか。』
と今日の収集した情報を記録しつつ思う。
「それよりどうですかこの着物。似合いますか?」
「あぁ、馬子にも衣装だな。似合っているぞ。」
「それ褒めてないです!酷いです神威ー!」
「ゴメンて、正直似合ってると思うよ。」
「ありがとうございます。」
機嫌が直ったのか笑顔で言う奏。
『奏用の部屋を用意しないといけないかな。
今後の事を考えると、絶賛とり憑かれ中だしな。』
正確には紫の勾玉に憑いてるのだが。
「さて今日は寝るか・・・。」
と神威が言ったその時だった。
ズンッ!!
神威が居る書斎が揺れた。
「ッ!?」
「何ですかこの揺れは!?」
「・・・呼び出しだ。異世界から誰か俺を呼んでる。
もう少し経てばゲートが開くんだろうな。」
「は、初めてでドキドキですっ!」
奏が緊張して身構えているその時だった。
二人の前に闇のゲートが開いた。
「行くぞ奏。一応姿消しとけ。」
「はいっ!!」
奏はスーッと姿を消し、神威は机の上にある紫の勾玉を手に取り首にかける。
あれから勾玉の穴に紐を通し、首にかける様にした。
そして神威はゲートを潜る。
始めに目にしたものは、黒。
深い深い漆黒。
神威の前にいたのは大きな、龍だった。
「来てくれたか世界の脅威。」
そう言う黒龍。
「いきなりの御挨拶だな。」
そう返す神威。
『神威ー。大きいですっ!!真っ黒です!!怖いですよー!』
奏は黒龍を見てパニックになっていた。
『落ち着け!!頭に響くから!』
直接奏は神威に話し掛けている為、奏の大きな声は神威の頭に響いた。
「それで?俺に何の用だ?」
「助けて欲しいのだ。我と彼女を・・・。
そしてこの国の人間達を。」
「お前と・・・彼女?それと人間達?」
『訳ありでしょうか?』
奏も同じ事を考えていたらしい。
「そう、我と彼女・・・。まずは話そう。我と彼女の出会いから・・・。」
「長くてもそうしてくれ。何も把握出来なければ助けようにも動けないからな。」
そう言い近くにあった腰掛けるのに調度良い岩に腰掛けた。
此処は大きな洞窟の中だった。
そして黒龍は口を開き始める。
黒龍と白龍の出会いを・・・。
「この世界には神と崇められる龍が二匹居る。
東の黒龍である我。西の白龍である彼女。
二匹の神龍を崇拝する人間達は国を二つに分けていがみ合っていた。
それが三年前。そして我は二年前に人間の領域の浜辺・・・、
調度国境の境に人の姿をした一人の少女に出会ったのだ。」
「それが白龍だったと?」
「そうだ。」
神威が黒龍の話の一部を当てる。
「そして人の姿をして東の境で我が、西の境で彼女が立って少しばかり話した。
お互いに正体を隠していたが、他愛のない世間話しだ。
それでも彼女は笑って聞いて、ずっと一人だった我と話してくれた。
それが嬉しかった。だからまたこの場で会おうと約束をした。
そして二度目の再開を果たした。
同じ場所で会ったのだ。嬉しかった、楽しかった、・・・幸せだった。
そして我と彼女は何度も会っていつの日かお互い惹かれあった。
その感情は・・・恋。人間にもある感情が我等龍にもあるとは思わなかった。
心は人も龍も同じだとその時理解した。」
「それで何故俺を呼んだ?
その話しだと人間のいがみ合いしか悪い点はないが、お前と白龍が助けを必要とする部分がないぞ?」
「ここからが重要なのだ。互いに打ち解けた我等はお互いの正体も言い合い、お互いに惹かれ合った。
そしてある日我は彼女に気持ちを告白したのだ。そして我と彼女は結ばれた。
しかしその時海の沖合で東と西の漁師がいがみ合っていたのだが翼を使って会っていたのを見られていたのだ。
それが原因で互いの国王に知られ、我等はこの洞窟に封印された。
そして今両国の人間達は我等の密会を互いの神龍の責任にし、戦争にまで発展してしまった。
そして我と彼女は戦争時だけ封印を解かれ戦争の道具にされてしまっている。」
「なるほどな。だからお前と彼女、そして人間を助けろと・・・。
だが神と崇められる程強いのであれば封印が解かれた時に人間などその力で滅っして自由になれば良いだろう。」
あえて神威は意地悪な質問をする。
「人間と我等龍は長い間干渉ぜず生きてきた。だがその秩序を崩したのは我等龍だ。
それに人間は悪い者ばかりではない事を我等は知っている。
それに我等は人間が嫌いではないのだ。だからむやみに殺生はせぬ。命は色も音色も重さも関係ないと我は思うのだ。」
『もの凄く良い方ですね神威!そして恋話が聞けて私今ときめいてますー♪』
『良い奴なのは同意だが恋話でときめきはしてないぞ。しかし・・・命は色も音色も重さも関係ない、か。』
と呆れながらも黒蓮の言った言葉の重みを考えながら奏と会話する。
「闇の力を持っているのに意外な答えだな。人・・・いや龍は見かけによらない、か。」
「そなたとて闇の力を持っていて、世界の脅威と蔑まれようとも無駄な殺生はしておらぬだろう。心を持つ者が好きな証だ。」
「言ってろよ。俺は使命があるから命など奪ってないだけだ。」
「憎まれ口よのう、世界の脅威。そなた我と少し似ておる。そう・・・光の力を持った女を好いておる所・・・とかか?」
「ッ!?よく分かったな。流石同じ力を持つ者同士か?
それと、俺には神威って名前があるんだ。世界の脅威はやめろ。」
「了解だ神威。我の名は黒蓮。それで力を貸しては貰えるのか?」
「此処まで来たんだ。拒む理由はない。
それに呼ばれて事件の解決をするのも俺の使命だからな。」
「それは良かった。よろしく頼む、神威よ。」
そして黒蓮は人の姿になり手を差し出した。
その姿は黒い長髪。キリッとした顔。
そして服は全身真っ黒だ。
「人間ではこうやって頼み込むのだろう?
そして神威はその手を掴む。
「あぁ。よく知ってるじゃないか。」
握手をする。
「それで、何か策はあるのか?黒蓮。」
「あるにはある。だがまだ決意に欠けるのだ。」
「どんな策だ。教えてくれ。」
神威が黒龍に聞く。
「簡単だ。どちらか片方の国か神龍が滅ぶ事。
そうすれば片方は敗戦し国は一つになる。だが必ず犠牲が出る。」
「確かに簡単だ。しかし黒蓮。お前の望みはお前と白龍、そして人間を助けて欲しいんじゃなかったのか?」
「それはそうだが・・・今のところそれしか策がないのだ。」
悔しそうに言う黒蓮。
「確かに難しい問題だな。龍と国、両方救う策を考えなければ・・・。」
神威も考える。
「そういえば、次の戦争はいつだ?」
神威が黒蓮にそういえばという顔で聞く。
「・・・明日の朝だ。今は夕方だからもう時間がない。
それにだ、今までは我と彼女・・・白璃とは八百長で戦っているフリをしていたが、
そろそろ両国の王が気付き始める頃でもう真剣に戦うしかなさそうなのだ。」
「なんてこった。今晩には策を決めなければならないのか。」
神威は苦虫を噛み潰したような苦難な顔を見せる。
「あぁ、だから我とそなたで選択しなければならない。この戦争の終止符を打つ策を・・・。」
そうして神威と黒蓮は話し合いだした。
この戦争を止める最善の策を・・・。
「徹夜して考え抜いた策がこれとはな・・・。くそっ!」
神威が洞窟の壁を殴る。
「仕方ないのだ神威よ。これが一番犠牲が少なく効果的だ。」
「だけど!!それでも・・・納得仕切れねぇよ。」
神威は泣きそうなな顔で俯く。
「・・・ありがとう神威。我等の為にそこまで思ってくれて感謝する。
そしてすまない。最悪な役回りを押し付けて・・・。」
「そんなのは慣れてるから良いんだ!!だから・・・謝らないでくれ・・・。」
「ありがとう。神威に会えて良かった。・・・もう少しで時間だ。
手筈通り、奏とやらに白璃にこの事を伝えて貰いたい。」
「あぁ、わかった。おい奏、教えて貰った場所に行って白璃にこの事を伝えてくれ。」
「分かりましたー!元気いっぱい奏ちゃんがひとっ走り行って伝えて来るですよ!」
「・・・すまない奏。気を遣わせて・・・。」
奏がいつになく元気に姿を現し、
神威の願いに承諾するので一発で神威にばれる。
「何を言ってるんですか!私はいつでも元気ですよ?では行って来ます!!」
と言い姿を消して白璃の元に向かう奏であった。
「良い娘だな神威よ。」
「あぁ、良い奴過ぎて見ていて痛々しいよ。
本当は巻き込みたくはないんだがな・・・。
恩返しがしたいとかで成仏出来ずにいるのさ奏は。」
「そうか、我も・・・。」
言いかけてやめる黒蓮。
「どうした黒蓮?」
途切れた言葉を気にする神威。
「いや、何でもない。」
一方奏の方は。
『こんな作戦なんて悲しすぎるます。でもこの事を伝えなければもっと沢山の人達の命が・・・。』
泣きそうな顔で飛んで白璃の元に向かう奏。
そして奏は白璃の洞窟にたどり着いた。
そして中へ入り姿を現す。
「あの!すみません、白璃さんはいますか?」
「
お客様とは珍しいですね。私にご用件でしょうか?」
「黒蓮さんから伝言があります。」
「ッ!?お聞きしましきょう。」
「戦争についての策ですが、黒蓮さんと私の連れが一晩考え抜いた事をお伝えします・・・。」
そして奏は簡潔に、だが必死に伝わるように話した。
「そうですか。黒蓮と神威さんが考え抜いた作戦ですか。
・・・分かりました。その作戦お受けします。」
決意をした顔を見せ了承する白璃。
「でも!!それで良いのですか!!貴女と黒蓮さんは愛し合っているのに!」
「だからこそですよ、奏さん。黒蓮が決めた事です。
それを私は信じて受け入れる。私は黒蓮を愛していますから。」
そう言いながら人の姿になる白璃。
黒蓮と同じ長髪。だが髪の色は白銀。
そして体はスタイルが良く、服は白い
ワンピース。
そして白璃は手を差し出す。
「伝えに来てくれてありがとう奏さん。」
「・・・はい。どう致しまして白璃さん。」
握手をする二人。
それが最後の握手になるのだった。
そして戦争の時間がやってきた。
「さあ黒蓮様、今日もよろしくお願いしま・・・!?誰ですかその少年は?」
「この少年は我の協力者だ。気にするな。」
そう黒蓮は言い放ち、封印を解きに来た人を目で威圧する。
「は、はい!?それではこちらの準備は出来て居ますので十分後に国境にいらしてください。」
人は封印を解きながら早口で言い、立ち去った。
「そろそろ行こうか神威よ。」
「あぁ、行こう。全てを終わらせに。」
そして二人共外へ出る。黒蓮は龍の姿で、神威は闇の力で背中に翼を作り飛ぶ。
そして白璃と奏も国境へと飛ぶ。
そして黒蓮と神威、白璃と奏が国境の境で向かい合う。
そして沈黙が約一分流れる。
そして・・・戦争の開始が両国の王から放たれる。
「進軍開始!!」
東の王が言う。
「攻撃せよ!!」
西の王が言葉を放つ。
戦争の・・・始まり。
それと同時に黒蓮と白璃が、
神威と奏が闘い合う。
黒蓮と白璃は同時に距離を取り、
ブレスを放とうとする。
神威と奏は地上すれすれに下降し、神威は闇の力で右手に剣を模った闇の塊を造る。
左手には拳銃を模った闇の塊を造る。
奏は突如空中から札を無数に出現させ右手に小太刀を模る。左手には一枚の札を持つ。
そして体の表面に神威は闇の力、奏は霊気を纏う。
黒蓮と白璃はブレスを放つ。
神威と奏は剣で衝突する。
ブレスはお互いに衝突し消滅する。
神威と奏もお互いに衝突したまま睨み合う。
そしてブレス、神威と奏の衝突でソニックブームが生まれる。
そのおかげで兵達は走っていた所をバランスを崩し転ぶ。
神威と奏は表面に張った力でソニックブームをまぬがれる。
そして神威と奏は斬撃で両国の兵が互いに近い所を移動しながら戦う。
そのせいで兵は自分の国側へ驚いて逃げだす。
黒蓮と白璃はブレスを放ちソニックブームを何度も起こす。
神威は拳銃で奏を撃つ。奏は左手を突き出し霊気弾でそれを撃ち落とす。
たまに流れ弾を起こし、兵を下がらせる。
そう黒蓮と白璃、神威と奏は兵を戦わせない為に本気で真剣な八百長をしているのだ。
これが黒蓮と神威が考えた策の一部であり、
黒蓮の人を傷付けない様にする、救うという願いの一部。
「全軍下がれ!でないと巻き込まれるぞ!!」
神威が東の軍に言い放つ。
「皆さんさがって下さい。ここに居ると怪我をします。」
そして両国の兵達はソニックブームが和らぐ程の距離まで離れる。
『此処までは作戦通り。次で黒蓮の最後の策に!!』
神威は悲しみを込めた顔をしながら次の策に移る決意をする。
「黒蓮!!」
神威は空に居る黒蓮に合図を送る。
「ッ!?白璃さん!」
奏でも白璃に言う。
神威は黒蓮のもとに、奏は白璃のもとに上昇する。
神威は剣と拳銃を消し、両手に闇の力の弾球を造る。
奏も小太刀を消し、両手で霊気玉を造りだす。
それと同時に黒蓮と白璃は今までにない程のブレスをたくわえる。
そして・・・両方共たくわえた力を撃つ!!
力が飛んでいる最中に黒蓮と神威の力が一つになり闇のブレス球となる。
白璃と奏も力が一つになり光の霊気ブレス球になる。
その強大な力がぶつかる!!
もの凄い轟音とソニックブームがおこる。
その力は全く同じで力が相殺する時、
黒蓮と白璃が衝突し、つかみ合う。
それが数秒続く。その間に奏は姿を消し神威の隣に移動する。
その時二人がとても哀しくも嬉しい表情をしていた様に神威は見えた。
そして神威は両手に巨大にした剣を宿し・・・黒蓮と白璃の所へ飛び、黒蓮と白璃の間に入り、
神威は黒蓮と白璃を横向きにした剣で・・・刺した。
伝わってくる・・・二人を刺した感触が。
剣から血が垂れる。神威は悲しみを含んだ顔を内に隠す。
「グオオオオオ!!」
「キシャアアアア!!」
と恐竜めいた叫び声が物凄く近くで聞こえる。
そして黒蓮と白璃は大量の血を吐く。そして神威は返り血を浴びる。
頭から全身真っ赤になる。
そして神威は策通りに力いっぱい演技する。
「あははははは!!やった!やったぞ!
この世界に神は二匹もいらない!!
だから俺が代わりに神になってやる!!
さあ二匹の龍共、今すぐ死ぬ程やわではないだろう?
最後に遺言でも聞いてやる。さあ言え!」
「ぐはっ!?まさか味方にやられるとは・・・な。
遺言・・・か、我が国の人間よ・・・もう西の国と戦争はやめて・・・仲良くするのだ。
もう命を奪い合うのは・・・やめよ。」
黒蓮の想いのこもった遺言だった。
「そう・・・ね。西の国の人々・・・。
もう哀しい・・・闘いはやめて・・・。
東の国の人々と・・・仲良くして、素敵な恋をしてね。
私と・・・黒蓮の様に。」
二人の言葉を聞いた人々は黒蓮と白璃の関係に一番驚いた。
「西と東の者で恋を、した!?」
「西の者と仲良くだと!?」
「神龍様達は愛し合っていたというのか!?」
などと声が微かに聞こえる。
ニヤリと神威は笑い、
「そこまでだ龍共。さあ!!さよならだ・・・消えろっ!!」
さよなら、の部分だけ二人だけに聞こえる様に言う神威だった。
黒蓮と神威が選んだ・・・そして白璃が納得した策。
人々を戦争で一人すら闘わせずに神龍をこの世界から消す事。
そうすれば神龍を崇拝する者はいなくなり、国を二つにする理由もなくなる。
自分達が消える事を覚悟し、人々を幸せにしようと考え出した、
そしてその覚悟を受け止めた神威は消す側に回った。
そして神威はその罪を背負う。
神威は二人を突き刺した剣を、体ごと一回転させる。
それで黒蓮と白璃は体を二つに分断されて、
黒蓮は黒いもやの様なものとなり白璃は白いシルエットの様なものになる。
二人は宝玉となる。
神威はそのまま消えると思っていたが、宝玉になった事に驚いた。
そして神威はその瞬間決意する!!
『会いたくても会えなかった二人、ここから先は俺が二人を会わせる!!』
神威は・・・その宝玉を二つ手にし、自分の胸に押し込んだ!
2つの宝玉は神威の中へと吸収される。
「ッ!?ぐああああ。・・・ぶは。」
そして埋め込み終えた神威は・・・吐血する。
苦痛が全身を巡る。だが神威は演技を続ける。
「ククク、あははははは!!手に入れた、神龍の力を二ついっぺんに!!
世界の脅威である俺は更に強くなった!!」
そう叫び、取り込んだ宝玉の力を早速使う。
右手に闇の力。闇の剣を出す。今までのエネルギーまんまの剣とは違い、ちゃんと形がある。
剣の先端と手元に二つの穴があり、剣格は赤。そして剣首はまがまがしい目がある。
左手に光の力。光の刀を出す。真っすぐな刀。
刃は銀色で剣格はなく、剣格には黄色い翼の模様があり剣柄には黄色い羽根の模様がある。
そして神威の翼は龍の翼になる。右翼は漆黒の龍翼。左翼は真っ白な龍翼に。
それと同時に神威の黒い瞳。右は赤に、左は青に変わる。
そして髪は灰色に変わる。
そして剣と刀を海に向かって振るう。
すると斬撃閃が飛び海水が広範囲に降ってくる。
巨大な力だ。
「そんな、世界の脅威だったなんて・・・。」
「この国はおしまいだー!!」
などと人々がパニックになっていた。
そんな人々に神威は言う。
「人間共よ。先程も言った通り俺は世界の脅威だ。
だが今俺は神龍の力を得て強くなった!!だからここに宣言する!!
俺はこれから龍の継承者と名乗る事を!!」
この瞬間、神威はドラゴン・サクセサー(龍の継承者)となる。
「今はとても気分が良い。だから人間共よ、お前達にチャンスをやる。
先程の神龍達の遺言をまっとうしろ。せめてもの俺の力となった神龍の慈悲だと思え!!」
神威は演じきる。最悪の役者を。
「さてこの世界にもう用はない。せいぜい仲良くすることだな人間共よ。」
そして神威は剣と刀を消し、闇のゲートを開き自分の世界へ帰るのだった。
そして神威はすぐさま一階の洗面所へ向かう。
そしてまた吐血。
「ぶはっ。ぐあああ。」
苦しむ神威。
「大丈夫ですか神威!?」
姿を現し心配する奏。
「うああああ、闇よ!!俺の痛覚を食え!」
そう神威が言うと闇が神威を覆い、数秒で闇は神威の中に消えた。
「はあ、はあ、はあ・・・。」
口から血が垂れながら神威は息を調える。
数分経って洗面所から抜け出し、リビングのソファーに倒れ込む。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
あわあわする奏。
「これを大丈夫に見えるか?体が重い・・・まだ黒蓮と白璃の宝玉が馴染んでないんだ。」
「・・・二人共悲しい結末になってしまいましたね。それで馴染んでないとは?」
奏が哀しい顔をしながら問う。
「いきなり強大な力を二つとも体の中に無理矢理入れて、
しかも素は闇の力を扱う俺が光の力まで埋め込んで体の中で闇と光が反発しあわない方がおかしいだろう?」
「なるほど!それで二つの力が暴れて今も体の中がボロボロだということですか?」
「あぁ、そういう事だ。・・・でも二人のせいじゃない、俺自身の選択だ。」
腕を顔に当て、仰向けで肯定する。
「でも何故二人の宝玉を体の中に?本当に力が欲しかったんですか?
命が関わる程の激痛と血を吐いて・・・。」
「二人を殺したのは俺だ。
だから・・・だからこそ二人を離れ離れにしたくなかった。
だから俺はその罪を背負う意味でも二人を俺の中で一緒にさせたかった。
だから俺は行動に移したんだ。」
わかったか?としたような顔をしながら起き上がる。
「そうだったんですか。すみません、悪い方に考えて。」
「良いんだ。そういう演技をしたんだからな。・・・悪い疲れた、俺は寝る。」
「はい、おやすみなさい神威。」
当たりは真っ黒。そしてそこにとある人物がいた。
「ほう、アダムは龍の力を手に入れたのですか。私が見込んだ男だけはありますね。
アダムを手に入れれば・・・。私も行動に移しますか。」
そしてこの黒いシルエットをした人物は・・・手を前に突き出し黒い何かを出す。
そして・・・生まれる。
真っ黒い・・・そう、全てが黒い少年が生まれた。
「ッ!?なんだ!!何かが・・・どこかで急に現れた?」
うなされた様な起きかたをした神威。
「・・ム、ア・・、アダム!!」
「***か!?何が起きたんだ!?」
「どうやら私の中の闇の意思がどこかの世界に人を作ったみたいなんです。」
「なん・・・だって!?何故生まれた?それでその生まれた人っていうのは危険なのか?」
「生まれた原因は多分君ですアダム。龍の力を手に入れて私の中の闇の意思が焦ったんだと思います。
そして当然危険性はあります。
闇の意思から生まれた人は闇の力を持ってるに違いありません。」
***は切羽詰まった声で語りかけてくる。
「そうか、俺が原因か。わかった気をつける。だから今まで通りに俺に任せてくれ。」
「わかりました、ありがとうアダム。」
そして***の声は聞こえなくなる。
疲労が溜まった神威はまた深い眠りに落ちる。
神威が眠り、神威の二つ名である世界の脅威という称号は龍の継承者と変わり全世界の人々の頭に上書きされた。
そしてイヴも***の闇の意思から生まれた人と・・・アダムの光の力を感じとっていた。
「!?この感じは光と闇が1つの体に・・・誰?
そして・・・もう一つは知らない闇。
この何もかもが真っ黒な感じの・・・人かな?」
怯えるイヴ。
「真っ黒い人はとりあえず置いといて、光と闇の人の所に・・・!!」
光のゲートを作り、イヴはアダムのいる近くへと行く。
「ここが両方の力を持った人のいる街?星が綺麗。」
夜空を見上げて歓喜をあげる。
「うん、決めた!
帰ってお義父さんとお義母さんにここに引っ越すように話そっ♪」