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ドラゴン・サクセサー  作者: 雨宮優希
7/21

哀しき魂達

ー第7話ー


あの事件から6年たった春。


神威は14歳となり、中学にも通っている。


制服は男子が学ラン、女子がセーラー服。


髪はあの事件の後すぐに切った。


今ではショートカットだ。顔ぶれも少し大人びてきて、今ではイケメンだ。


今も一人であの大きな家に住んでいる。


一人では大きすぎる家。そんな家に住んでいる・・・。


そんな大きな家で神威がする事と言ったらあの事件と同じ様な日課だ。


朝早く起きて剣術や体術、後は闇の力の稽古。


それから学校に行きノートパソコンを私物で持ち込み、

タイピングの速度を早めたりハッキングの模擬練習など。


帰ってからは十年前のテロリストを探してパソコンに張り付いている。


今では犯罪の時効が無くなった為、この神威としての命尽きるまで探してやるつもりだ。


警視庁や国会議員達のパソコンにハッキングして情報収集している。


最近は海外の重要施設や大手会社まで手を出しはじめていた。


それでもなかなか見つからない。


深夜までそれを繰り返している。


睡眠時間は今の同学年の中ではトップクラス級に少ないだろう。


学校では友達と言える人物や近所付き合いもしていない。

そもそも学校ではイジメられている。


成るべく目立たず生活している。


その為近所では今も『神家の死神』とまで呼ばれている程だ。


ただ一人だけ信じれる人物は居る。勝と親しい警察だ。


十年前の事件以来、葬式や遺産の相続等でお世話になった。


当時は8歳だった為、施設行きという話も出たが警察の方の配慮でなんとか免れた。


神威がこの家に居たがったからだ。


たまにテロリストの情報について電話で会話もしている。彼だけは信じられる。


それだけが今の神威の一つだけの希望でもある。


そして今は深夜4時。


「また何も得られなかったな。学校もあるし少しだけ寝るとしよう。」

そんな独り言を言いつつ寝室へ向かう。



起きるのはいつも朝六時だ。


学校は走れば20分程で着く。それまでの空いた時間は稽古に使う。


そして朝になり稽古を終えて学校へ。


学校は目立たず過ごしている。人とは関わりたくなかった。


ちょっとした地味さも出すため地味そうな伊達眼鏡を使用し、

髪も毛嫌いされそうにくしゃくしゃにわざとしている。


アダムとしての使命と神威としての事件解決への決意の為にも友達など作ったりしたら遊びとかに誘われるに違いない。


そんなのはただの時間の無駄遣いでしかないのだ。


でも授業は真面目に受ける。


というか聞き流しながら黒板に書かれた事をノートに写して真面目に受けている振りをしている。


『つまらな過ぎる。こんなレベルの内容はとうの昔に本を呼んで理解済みだ。』


などと思い心の中でため息をつく。


ふと、この6年の事を思い出す。


沢山の世界の闇の者達と戦ってきた。


ある時は砂漠の世界で人々を襲う闇のゴーレム。


海が九割で大陸が一割の世界。そこの海の主が闇に寄生されたリヴァイアサンなど。


基本は星の欠けらから呼ばれるのだが、稀に特定の強い力を持った者から呼ばれる事もある。


そんな事を考えていたら急に眠気がやってくる。


それと同時に頭に声が聞こえて来る。

「・けて。助・て・・・。助けて!!」


最後の強い想いがこもった声が聞こえた途端体から意識だけが飛ぶ感覚がした。


そして目が覚めた時そこは学校ではなかった。


地面は畳。壁は木造で、扉は襖だ。しかし全体的に古びていた。

「ここは何処だ?まるで昔の屋敷のようだ。」


それに今までは星の精神体や力ある者に呼ばれても、移動は自分が作る闇のゲートで世界移動していた。

少しずつ状況が変わってきているのかもしれない。


今回は眠気とともに意識を失ってここに来た。


『物凄い力を持った者から呼ばれたのか?』

と自問自答する神威。


すると突然、

「・・えますか?聞こ・・すか?」


「誰だ!?」


「私はこの屋敷に住む姫様の側近でございます。突然強引にお呼びして申し訳ございません。」


「姿を見せれないのか?」


「申し訳ございません、私は・・・い え 。この屋敷全体に居る人々は死んでいるのです。

今は霊体となって遠くから貴方に話かけています。」


「・・・つまり俗に言う幽霊と言うやつか?君以外にも幽霊は居るのか?」


「そうでございます。

この屋敷には召し使いや私以外の姫と旦那様の側近など数十人者霊体があの世に逝けずにそこらじゅうをうろついています。」


「なるほど、でその成仏出来ていない君達を救えと?」


「大まかにはそうでございます。ですが簡単にはいきません。

私達が何故成仏出来ないのかと言うと、この屋敷の主。

つまりは旦那様の怒りと悲しみや憎しみが私達をつなぎ止めているのです。」


「個人個人成仏させようとしても駄目なのか。つまりその旦那様ってのを倒さないといけないんだな?」


「はい。しかしもう一つ問題があります。旦那様が怒りになった原因を突き止め、

自ら成仏するようにしないといけません。」


「なるほどな。負の感情を癒し、戒めを解かないと全員成仏出来ないのか。

何かその旦那様のお怒りの原因は心当たりないのか?」


「あります、この屋敷のしきたりと関係があるかと・・・。

そして旦那様の負の感情を癒せるのは姫様だけです。

姫様を探して下さ!?いけません誰かがそこに向かっています!!

これを使ってお逃げください!!

そしてそのカケラを集め姫様を#%*&」


最後はノイズと共にいきなり目の前に紫色の何かのカケラが宙に現れ落ちた。


慌ててそれを拾い身構える。確かに何かが来る感覚がする。


それは光でも闇でもない。


何とも言えない生ぬるい感覚。


拾ったカケラも震えていた。


そしたら壁から微かに透けた男が現れた。手には刀を持っている。

「うぅ~、あ~。」

と唸りながら近づいてくる。


『どうする?闇の力で倒すか?だが彼はここの主に縛られているだけ・・・。

彼女の言葉を信じてみるか!』

と神威は先ほどの女の言葉を信じカケラを見つめる。


考えている間に男は刀を振り上げ襲い 掛かってきた。


刀を避ける為右に跳ぶ。


神威は実は困っていた。なんせ・・・カケラの使い方が分からないのだ。

「どうすれば良いんだよ!!」


闇の力や体術、剣術は熟知しているが、こんな異質の物は扱った事がない。


とりあえず男の刀を避けて考えては見たものの、答えは出ない。

「あーもう、こうなったらやけだ!!」


闇の力を出すようにカケラを持っている左手に闇を集中させようと意識したら・・・

「ッ!?」


持っていたカケラが刃に変わった。


形は刀だがサイズはナイフの様に小さい。


「これでいける!!ッハ!」

刀を避け、男の懐にすぐさま入り込み斬る。


「ああああーー!?」

と男が絶叫しスーッと消える。


「やったか・・・。」

気を抜いたらナイフはカケラに戻ってしまった。

「聞こえますか!?」


「君か!?さっきのが霊か、初めて見たよ。」


「はい。先ほどの男は旦那様の護衛の一人です。」


「しかしこのカケラの使い方ぐらい教えてくれ。危うくやられかけた。

・・・いやこっちは生身で相手は霊体だからやられないのか。」


「すみませんでした。ですが使い方は人によるのです。

それと貴方は今生身ではありません。透けてはいませんが今は霊魂体。

つまり生きた霊体です。霊体に攻撃されれば霊魂体は傷つき最悪死に到ります。」


「なんだと!?・・・それを早く言ってくれ。」


「申し訳ございません。まさかこちらに来てそうそう霊体と遭遇されるとは思いもよらなかったものですから・・・。」


「ハァ・・・何とかなったからもう良いよ。

それでこのカケラについて聞きたいんだが・・・。

俺は闇の力をカケラに集中させようとしたら刀風のナイフになった。

だがこれは闇の力じゃない。何なんだ?」


「それは霊力です。貴方は今霊魂体なので闇の力とやらは使えないはずです。

そのカケラは霊力により反応し、持ち主に最も扱いやすい武器や防具になります。

この屋敷に散らばっているカケラを全て集めれば真の力を発揮出来るでしょう。」


「なるほど、つまり姫とこの紫色のカケラを全部見つけて旦那様を癒せという事でいいのか?」


「その通りでございます。」


「じゃあ後二つ質問。その旦那様を怒らせたしきたりとはなんだ?」


「それはこの集落に代々の伝統のしきたりです。

この屋敷の主は二人の姫を向かい入れる事が出来るのでございます。

そして子孫繁栄とし、子を身篭った姫を主の真の姫とするのです。

そして子を身篭れなかったもう一人の姫は偽りの姫とさげすまれ、

集落に病などの不幸が訪れぬよう偽りの姫を人柱とし、

亡き者とするしきたりなのです。」


「なんて酷いしきたりなんだ・・・。それで何故この屋敷の主は怒った?」


「実は旦那様が真に愛されたのは私がお使えした偽りの姫様なのです。

ですがしきたりにより姫様は亡き者とされました。

主はそのしきたりを見届ける義務があり、

愛した姫様が亡くなる瞬間をご覧になられたのです。」


「・・・そういう事か。だが屋敷の主ならしきたりとやらをなくす事だって出来たんじゃないのか?」


「はい。旦那様はしきたりを辞めさせようとしました。

ですが不幸を恐れた集落の農民の者や屋敷の者達に猛反対され、

最後は姫様が亡くなる瞬間を地に押さえつけられたまま見届ける形となりました・・・。

それで御乱心に成られた旦那様は復讐とばかりに集落の者達を一人残らず斬って廻ったのです。

そして最後は自ら切腹しこの霊体がうごめく集落となりました。」


「ッ!?くそっ!!なんて話だよ全く!分かったこの件引き受けよう。必ず全員成仏させる!!」


「ありがとうございます!!」


「後もう一つの質問。俺は神威と言う名前だ。君の名前は?」

「私の名前はかなでです。よろ しくお願いいたします、神威様。」


「様はいらない。神威と呼んでくれ。俺も奏と呼ぶから。」


「分かりました神威。それでは姫様の事、お願いします。

何かあればお呼びください。いつでもお答えします。」


「了解。何かあれば声かけるよ。」

そして神威は目の前の襖に手をかけ姫とカケラを探しだし始めた。


次の部屋はやけに着物が飾られており、小物が多い。


『察するに、始めの部屋はどちらかの姫の部屋でここは側近の部屋か?とりあえずカケラがないか調べるか。』

と思い小物入れ等を調べた。


「ん、なんだこの本は。」

一冊の本が出てきた。古く所々穴も空いていた。


「えーと、本日の姫様・は御機嫌が・く・達も嬉しい。お腹・・旦那様のお・様を身篭・れ・のです・・。

これで偽りの・・では・・なったの・す・・。

虫食い穴だらけだな、つまり始めの部屋は真の姫の部屋か。

鏡やら化粧道具もちらほらあったしな。」

いきなり当たりは流石にないかと思った。


他には目立った物はない。


「他を当たるか。」

神威は次の襖を開けた。


そうしたら中庭の廊下にでた。


『ここは屋敷の中央付近なのか?中庭らしき手入れの行き届いた風景だ。』

神威は悩んでいた。何処から屋敷を探索しようかと。


「ゲームだとこういう時は何かしらのガイドかヒントがあるものだが流石に・・・。」

最後まで言いそうになったら持っていたカケラがか細い紫色の光を出し始めた。


「・・・ヒントみっけ。」

カケラの光は出てきた襖から見て右を指していた。


そのカケラの光をたどって行く神威。


木造の廊下を進む。廊下の端までたどり着いた。


割と広くて気がつかなかったが、中庭だけにこの廊下は長方形で反対側の廊下を進んでも神威が出てきた襖に戻れるようだ。


光が指す方はこの右端の扉だ。


神威は扉を開けようとした、

が触ろうとしたら何かの力に指を弾かれた。


「何!?」

何かが来る感覚!


『霊か!?』

方角は・・・前!

神威は後ろに飛びのきカケラに力を加え短いナイフを構える。


服はボロボロで手は黒ずんでる。土汚れのようだ。


「怖い・・・、こわ・い。怖い者はコロズ!!」

そう言いながら襲い掛かって来た。


始めの幽霊とは違い。隙だらけだ。


「これなら余裕!!」

振り下ろされたクワを避け、男の手をまず斬る。


クワに手が残り、男とクワが離れる。


最後に男の懐に入り横に一閃。


「あぁーー!!」

胴体と下半身が離れながら消えていく。


「ふー、この調子で出て来られたら厄介だな。」

と呆れながら先ほどの扉を触った。


今度はすんなり開いた。


そしてまたカケラの光を辿り、神威は歩む。


扉の先は一本道だった。少し進んだら壁に大きな鏡があった。

「B級ホラー映画なら鏡から幽霊がでたりするものだが、

当事者となってみれば出てほしくないな。」

と言いつつ通り過ぎる。


すると広い場所にでた。


光は更に奥の方を指していた。


広い方を見るとタンスやツボ、祭に使いそうな法具や鈴が置いてあった。


神威はそれを見て嫌な気分になった、

『まさかここ一帯は・・・予想が当たらなければ良いが・・・。』


そう思いつつ光の指す方へ進む。


そうしたら道は行き止まり。横を見ると始めの部屋と同じ大きさの襖があった。

『ここに入れ・・・か。』

襖を開ける、するとまたもや着物や小物入れなどが多く置かれていた。


「何か嫌な予感がするな・・・。」

光は更に奥の部屋を指していた。


奥を目指す。


奥の襖を開けようとすると、カケラが脈打ち始めた。

「ここに何かあるのか?」


そして襖を開け中に入る。


そこには巫女装束や法具、そしてお面など置いてあった。


「予想的中かよ。クソッ!!」

そして現れる。・・・しきたりを進行する面を被った巫女の幽霊が真正面の壁気味に現れる。


「しきたりは絶対だ。不幸を招いてはならん!!ああーーー!!」

最後の絶叫は頭に響いた。


「声でかいんだよこの野郎!!」

カケラをナイフにする。


そして巫女は襲ってくる。


巫女は無数の法具を神威に向けて投げてくる。


神威はそれを避ける。


投げた法具は巫女に戻ってくる。

「遠距離系か。そうなったら!」

巫女は更に法具を投げてくる。


神威はその法具を・・・ナイフで壊す!


無数の法具はどんどん減っていく。


神威は持ち前の運動能力をもって凄いスピードで壊していく。

「ラストー!!」

最後の法具を壊した。


武器を無くした巫女は神威を見ず神威が来た方の部屋を見ていた。


廊下側からカタカタ音がする。


『無くした武器を俺が来た部屋から調達する気か!?』


「させるかよ!」

巫女を斬るため神威は巫女目掛けて走り斬る。


が巫女は神威の斬撃をさけ部屋の角と角の端へと逃げる。

「くっ!でも終わらせる。」


空を斬った腕の反動を生かし、


巫女と向き合うように宙で動き、

地に足を着いた途端神威が・・・消えた。


神威が消えた瞬間巫女が絶叫する。

「キャーああああ。」

そして巫女が透けると同時に神威が巫女の前に現れた。


かつて勝が見せた光景のようだ。


そして巫女の中から神威が持ってるカケラと同じような物が現れ、落ちた。

「これは、このカケラと同じもの?」


拾い上げカケラとカケラを見比べていたら、

カケラ両方が脈打ち紫色の光を放ち・・・一つになった。

「な!?一つになった。でもまだ形はいびつだな。」


そう、まだカケラはちゃんとした物としての形をしていなかった。

『まだまだカケラはありそうだな。だがカケラの光を辿れば見つかる訳か。』


そしてまたカケラが光を出し始める。


とりあえず神威は光の方を歩む。


光の指す方は先ほどの広い場所。

「今度はこっちか。」


素直に神威は従う。


タンスや着物を置いている道を進んで奥へと進む。


結構長い廊下だが何も起こらなかった。


すると先ほどの巫女の部屋の襖よりは、

小さいが、小さな襖があった。


躊躇なく開ける。


するとそこには数人が生活していたような痕跡があった。


半開きの押し入れには布団が山ずみ。


鏡が幾つもある。後化粧品等。


光はまだ奥に進めと言わんばかりに扉がある。

『あの扉の向こう、何かある。』


恐る恐る扉を開けた。すると、

「なんだこれは!?」


神威の目の前には大きな開けた外だったがその光景は・・・、

モノクロの当時のしきたりだった。


しかし偽りの姫と主は居なかった。


つまり演舞の練習なのだろう。


見ていて素晴らしい演舞だと思うが何故か寒気や吐き気がする。


そしてぼやけながら目の前の光景が終わる。


するとカケラが脈打つ。


それと同時に手打ちの小太鼓や錫杖、笛や扇子を持ったしきたりの子役と思われる女が四人出てきた。


この四人も面を被っている。

「今度は多勢かよ。」


カケラに力を集中させる。

するとカケラは長めの刀風のナイフになった。


『カケラが集まれば長くなるのか。全部集まれば刀にでもなるかな?』

とニヤつきながら構える。


今までの霊とは違い、いきなりは襲って来ない。


四人とも様子を伺う様に神威を中心に時計回りに回る。


『今までとは違うタイプか、迂闊に動けないな。』

数分そのままだったが、しびれを切らしたのか扇子を持った霊が襲い掛かる。


「と!」

扇子の先は刃の様になっていて、神威に切りかかる。


当然神威は避けるが避けた方に笛を持った霊が神威を襲う。


笛から尖ったやじりのような物が出てきて神威を刺そうとする。


神威は今度小太鼓の霊の方へ逃げる。


小太鼓の女は小太鼓の中に手を入れ、

中から鋏を出し神威の方へ走り出す。


それを見越していた神威は錫杖の女の方へ避ける。


錫杖の女は錫杖の頭を掴んで引く。


するとそこから細い刀が出てきた。


刀を構えて錫杖女は切り掛かる。


神威はそれも避ける為、斜め上へ跳ぶ。


すると四人の霊はそれぞれの攻撃で味方を刺し、斬った。


すると四人ともが自分の武器が味方に刺さったまま抜けずそのまま硬直する。


この時を狙っていた神威は着地し、四人まとめて斬る。


そして霊達は味方を刺したままの状態でスーッと消えた。


そして四人が居た中央に紫のカケラが転がる。

「うまくいくかヒヤヒヤしたが、結果オーライだな。」


そう言いつつカケラを拾い上げ一つにする。


そうするとカケラは塊と言えるサイズになった。

「それなりの形にはなったが、後何個だ?おい奏!いるんだろ!」


「はい神威、なんでしょう?」


「後カケラは何個あるんだ?」


「後二つかと思われます。」


「二つか。」

少なそうで多いな、と思う神威だった。

「とりあえず先にカケラを探しだし、のちに姫を探す。それで良いか?」


「はい。やり方は神威、貴方にお任せします。」


「了解!!」

そしてまた塊は光を放ち始めた。


光は来た場所を指していたのでとりあえず戻る。


そして巫女と子役の分岐まで来た。


光は鏡の始めてここに来た方へ指す。


その光に従う。そして鏡がを通る。


すると何か・・・が来る。


「しきたり・・・しきたりいいいーー!!」


「何!?」

倒した・・・巫女が鏡からまた現れた。


「そうか、旦那様とやらが霊を全員縛ってるから、

消える事も成仏する事も出来ないのか・・・。

ここは狭い・・・元来た中庭へ!」

走って中庭へ行く。巫女の霊も追ってくる。


『よし此処なら!』

中庭にきて塊に力を。


そして塊は小太刀になる。

「刀らしくなってきたな。」


「しきたりを邪魔する者は生かしておかぬー!」


「そう言って主を押さえつけて、姫を亡き者にしたのかよ。

それは・・・ただの人殺しだろうが!!」

巫女は先ほどの倍近くの法具を宙に浮かせ攻撃してくる。


「学習力ないぜお前!」

素早く上半身だけ動かし法具を立っている場所で叩き落とす。


次第に巫女の法具は減っていく。


個々に攻撃するのは諦めたのか法具を集め、


自分の上で輪にして勢いよく回転させ始めた。

「何をするのか分からないけどその行動、賢くないぜ!」

と神威は法具の中心に飛び、体を回転させ法具を全て壊した。


そして巫女目掛けて小太刀を構え落ちながら振り下ろす。

「ああああぁぁぁー。」


巫女は縦半分に割れ、消えて行った。

「たく、相変わらず頭に響く悲鳴だ。」


小太刀を塊に戻し、頭を抑える。


そして塊の光を追って歩む。


光の指す方は巫女や子役達の区域の真正面。


まだ行った事ない場所だ。


そちら側に歩んでく。


そしていくら歩いただろう・・・。


かなり入り組んだ屋敷だ。


どんどん歩いて進んでいたと思う。


進めば進むほどつきあたりばかりにあう。


もう方向感覚が分からなくなってきた。


そして今はずっと一本道だ。


そして奥に大きな鉄の扉が現れた。


その奥から凄まじい邪悪な者を感じる。

『確実に何か居る!!』


そして光もまたそこを指していた。

『行くしかないか!』


かなり重い鉄の扉。


開けて目に飛び込んで来たのはとても広い部屋。


そして両脇にろうそくが奥まで並べられており、

中に入るとそのろうそく全部に青い火がつきだした。


そしてその奥に大きな椅子があり、

そこに鎧を着た武者のようなものが刀を地面について座っていた。


そして椅子の奥に大きな布が天井からその下に広がって付いてをり、

それを見る限りお金持ちのお嬢様のベットのようだ。


光が指しているのは椅子。

『このパターンはあの鎧武者、動んだろうなぁ。』

と嫌々ながら椅子の前まで歩いて行った。


そして予想通り・・・鎧武者は立ち上がった。

「やっぱりかよ!!」


塊を小太刀に。そして鎧武者も刀を抜いた。


その刀からは邪悪な霊気のようなものが漂っていた。


お互い刀を構える。


そして始めに動いたのは鎧武者。


縦に振られた斬撃を受け止める。


そうすると神威の中に人々の負の感情が流れ込んできた。


怖い、痛い、助けて等と。


そしてこの鎧武者の感情も流れてきた。

『姫を追い込んだしきたりと人々を我は憎み呪う!』


「ッ!お前この屋敷の主か!」

受け止めた刀を薙ぎ払い後ろに跳ぶ。


「もうこんな事はやめろ!お前も姫も、

そして集落の人々も十分苦しんだ!もう良いじゃないか!!」


「ダメだ・・・ダメなのだ・・・私ではあああ!」

主は頭を抱え、苦しそうにもがく。


『なんだ?何かがおかしい。何故主は苦しむ?試してみるか・・・。』

そして神威は塊を小太刀から盾にして、主の斬撃を全て受け始めた。


流れこんでくるのは農民や巫女や子役、そして主の負の感情。


どれも似た思い、でも全て違う感情。

『くそ、斬撃が重い。後何発受けられるか分からないぞ。』

そして神威が思った後の三発目の斬撃を受けた時だった。


『憎い・・・憎い!!私と旦那様を引き裂くしきたりが、人々が!!全て呪ってやる!!』


「聞こえた!やはり貴方は縛る側じゃなく縛られている側だったんだな。

そして貴方を操って人々を斬って此処に縛っているのは貴方が愛した姫!!」


もう斬撃を受けるのをやめ、神威は盾から小太刀に変えて反撃に出る。


この主は斬撃の振りが大きい分隙が多い。


だから攻撃を避けて斬り刻む!!


そして鎧が砕け、面が割れ、篭手が外れる。


相手の防具は全て壊した。

「これで終わりだ。」


そして神威は立っていた場所から消え、

「ぐああああー。」


主が足を地につけるのと同時に神威は主の後ろに現れる。


そして主は消えて、刀だけが地に突き刺さって残った。


塊は残った刀に光を当てていた。


『刀を斬れって事か。』

塊を小太刀にまた変え、刀を斬る。


すると刀はカケラに変わった。


そして神威は塊とカケラを一つにした。


そしてまた塊は光を指し始めた。そこは椅子の奥のベット。


回り込みベットに向かう。


そこにあったのは・・・

着物を着た骸骨がそこには眠ってた。


首が離れた骸骨が。

「これは・・・主が愛した姫か。」


姫の組まれた手の中にカケラがあった。


神威は躊躇なく手を退けカケラを手にする。


そして塊とカケラは一つとなりそれは形になった。


「紫の勾玉か。これがカケラの正体・・・。

おい奏、姫を見つけてカケラを全部集めたぞ。

後は姫を負の感情から救えば良いんだな?」


「はい。どうやら私の見込み違いでした。

カケラを一つにし、姫を見つけて旦那様を鎮めれば終わると思いましたが・・・。

どうか姫様をお救いください。お願いいたします!!」


「最後までやってやるさ、任せろ!」


「ありがとうございます!」

だが此処で行き止まりだ。後は何処に行けば・・・。


『ん?』

ヒューッと音がする。


『風の音か?何処から?』

風の音を耳を澄ませて追うと、

姫のベットの下からだった。


ベッドを押してみる。するとベッドの下から隠し階段が現れた。


この下から邪悪な気がなだれ込んでくる。

『ここだな!』


そして地下に入り込む。

かなり深そうだ。


そうしたら・・・主がまた襲ってきた。


勾玉に力を!!勾玉は刀になった。


刀を持たない主は先ほどの強さはない。


そして真の力を取り戻した紫の勾玉は、

その一振りで主を消し去った。


『強い!?』

正直驚いた。あの主を一撃で仕留めた。


『後はどうやって姫を清めるかが問題だ。』

考えながら石階段を走りながら駆け降りる。


そうしたらまた主が現れた。

「またあんたか!俺を先に行かせてくれ。」


「ダメだ・・・この先には我が愛した姫が居る。」


「なら押し通る!!」

一閃!主を倒し更に駆け降りる。


そして何度も何度も主は現れた。


姫を守る、姫を誰にも触れさせない等熱意のこもった言葉を幾つもさらけ出す。


もう主は神威が斬った場所を再生しきってなくても現れる。


何度も何度も・・・愛した姫の為に。


その想いを受け止めながら神威は最深部へ到達した。


そしてそこで待ち受けていたのは。


主が愛した偽りの姫。


首が胴体と離れており、顔は苦痛で歪んでいた。


そして姫が動き出す。


「私は呪う・・・あのお方と私を引き裂く全てを!

しきたりを、人々を、この集落を憎む!!」


そう言い姫の後ろに無数の腕が現れる。


そして腕を飛ばして襲い掛かかってくる。

「もうやめろ!こんな事をしても誰も報われない!」


勾玉を刀にし、飛んでくる腕を斬る。


神威の言葉などお構いなしとばかりにどんどん腕を飛ばしてくる。


「くそ!こんなに多くちゃ伝えるものも伝えられない。」


そうだ。主の想いも奏の想いも伝えなくてはならない。


だがそれを姫の背後にある無数の腕が阻む。

『仕方ない!!全て斬り刻む!!』


飛ばしてくる腕をどんどん斬る。


その行動を何十分しただろう。


だが姫の腕はもう数える程しかない。


そして残った腕をいっぺんに飛ばしてきた。


その腕を凄まじいスピードで斬り落とす。

「話を聞け姫、貴方は自分が思うほど不幸なんかじゃ・・・!?」


話している途中で、腕がなくなった姫は自分自信の顔を飛ばしてきた。


飛んでいる途中で口を開き噛み付こうとしている事がわかったので刀で顔を受け止める。


姫の歯は鋭く尖っていた。噛み付かれたらひとたまりもない。

「そのまま話を聞け!!」


姫は刀に噛み付いたまま離さない。


それを好機と思い、神威は姫の頭を抑えつけ強制的に話に持ち込む。


「あんたは今でも十分愛されてる。

ここの主に、そして側近の奏に!!

何故生きた霊魂体である俺が此処に居るかわかるか?

それは奏に呼ばれたからだ。凄い心のこもった願いで強制的に呼ばれたんだ。

この世界の恐怖と呼ばれる俺がだ。

そして姫をどうか救ってくれって切羽詰まった声で言われたよ。

あぁコイツ本心で姫の事思って言ってるんだって本気で思った。

そして今度はここの主だ。

一度俺に敗れたのにすぐ俺に何度も何度襲い掛かってくるんだ。

その理由が愛した姫を守る、姫には誰にも触れさせないって言うんだ。

再生しきってないのに武器も持たずにあんたの為に挑んでくるあんたの旦那様はとても凄いと心の底から思うぜ!!

そして最後は俺だ。

そんな二人を見て俺はあんたを救いたいと想った。

二人の為に・・・そしてあんたの為に・・・俺の心がそう言ってる。

だからあんたはもう呪わなくて良いんだ。

憎まなくて良いんだ。もうあんたの旦那様と奏と一緒に休んで良いんだよ・・・。」


そう神威は姫に言うと姫の顔は歪んだ顔から元の人らしい顔に戻っていった。


そして泣きながら刀を噛むのをやめ体の方へと顔が戻っていく。


そしてスッと横から再生した主が姫に寄り添う様に現れる。

「ありがとう少年。旦那様の想い、奏の想い。

そしてそなたの想い伝わりました。

私はなんとお詫びしたらよいものやら・・・。」


「詫びならいらないさ。俺が好きでしたんだ。

気にすることない。後、俺の名前は神威って言うんだ。」


「・・・ありがとう神威。私達を救ってくれて。」


「あぁ、本当にありがとう神威。姫と我を止めてくれて感謝する。」


「だから礼も詫びもいらないって。それよりさっさと逝く所に逝きなよ。じゃないと集落の人々も逝けないじゃないか。」


「そうですね。では失礼してそろそろ逝きます。

本当にありがとう神威。」


「あぁ。それと後一言。お幸せに!!」

コクりと頷く主と姫。姫の首は繋がり、二人とも小さな光となって天に登って行った・・・。


するとズンッと大きな揺れがした。


「なんだ!?」


「大変です神威。この集落をつなぎ止めていた姫様が居なくなってしまった為、

集落自体が崩壊を始めました!!」

「なんだと!?早く集落の外に出ないと!!案内頼む奏!」


「わかりました!」

そして屋敷の外に向かう神威達。


地下を抜け出し、始めに来た真の姫の部屋の襖の向かい側に扉が有りそこから集落へと出られると奏は言う。


その指示通りに従う神威。


崩壊は着実と進み屋敷の地面や壁に亀裂がどんどん入り始める。


向かう方ですでに壊れて通れない所は迂回して進む。


「やっと屋敷の外か!!」

屋敷の外に出ると屋敷自体がでかい事を再度認識する。


だが今は一秒でも集落を出ないといけない。


屋敷の門は片方が壊れていたのでそのまま走って進む。


屋敷は集落の高い場所に建っていたため坂を走りながら下る。


そして集落や屋敷からは小さな光が天へと無数の数が登っていた。


皆ちゃんと逝けたんだなと思う神威。


そしてやっと民家が並ぶ場所まできたが、

ズンッとまた大きな揺れが起き、目の前の地面が大きく裂ける。


裂けた穴を見ると穴の底は暗闇で底が見えない。

「くそ!迂回するしかないな。」


迂回して裂け目が小さな所を跳び、先に進む。


「あそこです神威!!あの空間が裂けている所に入れば元の神威がいた世界に戻れます。」

後五百メートルといった所に空間が裂け、渦を巻いた場所があった。


「よし、ラストスパートだ!!」

全速力で走る。するとまた揺れが起き、空間の手前が大きく裂ける。


「くそ!!このまま跳んで入るしかないか!」

失敗すれば奈落の底。


だが神威は躊躇なく裂け目の端で大きく跳んだ。

そして・・・。


目が覚めた時には顔に机が迫っていた。


『あぶね!?』

と思い顔を上げる。


色々な意味で危なかった。


ぎりぎり空間の裂け目に入り、学校に戻って来れたが眠気の襲った瞬間に戻ったらしく危うく顔面を机で打つ所だった。


『危なかったですね。』


『あぁそうだな、いろんな意味で・・・てなんで居るんだよ奏!!成仏しなかったのか!』


『それが私もしようとは想ったのですが出来なくて・・・。

どうやら原因が一つあるみたいです。』


『なんだよそれって。』

授業中なので頭の中で会話する。


『どうやら神威に恩返しをしたくなったみたいです。』


『ハァ?そんなの良いから成仏しろよ。

やっと奏の姫も成仏したのにまた離れ離れじゃないか。』


『それはそうなのですが・・・恩返しした後でも十分大丈夫かと想ってしまいまして。』


『・・・マジか。』

そして授業は終わり帰り支度を澄ませ帰ることにする神威。


「て事は俺は奏にとり憑かれたってことか?」


「いえ、正確には紫の勾玉に憑依してます。」

あの世界から何故か持ち帰れた紫の勾玉。


これは今後何かの役に立つのだろうかと思う神威だった。

「成る程、なら少し安心した。」


「あー、今自分に憑依されてなくて良かったと思いましたね!!失礼ですーー!」


「勘が鋭いな奏。」


「えぇ、姫様にも良く褒められたのです。」

えっへんとばかりに言う奏である。


それに親しくなったのか、会話も少し丁寧語ではなくなった。

「それはそうと神威。聞きたい事があるのですが。」


「なんだよ、改まって。」


「始めにあの世界へ聞いたとき闇の力がどうとか言ってましたが何の事なんですか?」


「あぁ、あれか。じゃあ教えてやるよ。

ゆっくりと、長くなるから覚悟しとけよ!」

そう、心の底から信じても良いと思った。


それが例え幽霊でも。


信じて呼ばれ、信じて道案内を頼み元の世界に戻れた。


それは心と心が通じないと為せない事だと思ったからだ。


そして神威は新たに信じれる相手を見つけた。


新たな希望を・・・見つけたのだ。

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