魔女
魔女はこちらを興味深そうな目で眺めている。
薄く口元が笑みを浮かべている。
お前はなんなんだい?と聞かれたが、それは俺のセリフだ、お前こそ何なんだ。
そう思った。
「おやおやこれは、試しに念話送ってみれば、予想以上に意思の疎通が可能とは、お前はこの念話が言葉として認識できているのか」
魔女の口から笑みが消え、目が少し鋭くなる。
念話だとこれは、念話なのか?お前の言葉は確かに聞こえているぞ
俺はまた心でそう思う。
「やはりそうか、言葉を解するか、けれど僅かな違和感は言語が違うか、この念話は私の意志を相手に直接送る、そして相手の意志も私にはわかるのだよ」
どういうことだ、心が読めるということか。
「そこまで万能ではないから安心しな、私に伝える意志がない事は読み取る事ができない、嘘をつかれたら何となく分かるが隠されている事はわかりはしない」
なるほどな、けれど嘘が分かるなら、聞き方を工夫すれば隠し事を暴くのはできるのでは。
「なかなか鋭いな、そこはまあ多少気を使うよ、それに何かお前には隠さなきゃいけない事でもあるのかい」
そう言われれば、隠さなきゃいけない事などないなと思う。
「なら良いではないか、てばはじめの質問に答えてくれ、お前は何なんだい?」
「俺はゴブリンだ」
いつの間にか俺は話す様に言葉を心に思い浮かべる様になっていた。
「ゴブリンだと、そんなものは見たら分かる、私は魔女だよ」
「魔女かそれは見たら分かるな」
「そういう事だ見ても分からない事を聞いている、お前はなぜゴブリンなのに言語を解す、なぜ一匹でここにいる、なぜ岩を切れる、ゴブリンなのに」
一匹かそう言われれば、そうだな一人ではないのだ。
何となく悲しくなった。
「むっお前いま何を思った、何か私は失言したのか、いま悲しみを感じたろう、明確に伝える意志がないと分からないのだ」
なるほど、そういうものか
「いや一人じゃなくて一匹なんだなと思ってな今の俺は」
俺は正直に答える。
「どういうことだ、お前は人間なのか? どうみてもゴブリンだが、何か呪いでもかけられたのか、人間を魔物に変える呪いか伝説には存在するが」
「いや、ゴブリンだよ、人間の記憶があるだけだ、いやある気がするだけかもしれない、そういうユニークスキルかもな」
俺は自嘲気味に答える。
正直前世の記憶等、ただの幻なんかじゃないかと、たまに思ってしまう。
「ユニークモンスターか、なるほどな、それは確かだろう、けれど人間の記憶があるか、そんなモンスターがいたとは興味深い、もう少し話してくれないか、なあに、それなりに礼はさせてもらう、深い森の魔女ラナータの名に誓おう、この名はお前も知っておろう」
ラナータと名乗った魔女は高らかにそう宣言した。
「深い森の魔女ラナータ知らないな」
「知らないだと、お前人間の記憶があるんではないのか、何だか恥をかいたようではないな、まあよい、とりあえず私は名のしれた魔女よ俗人が望むような事など、たやすく叶えてみせれる」
ラナータは少し憤慨している。
俺の望みはなんだろうか、自分でも分からない。
だがまあ、いいだろう話した所で俺に損はない、退屈していた所だし、誰かに話しを聞いてもらえれのは嬉しいかもしれない。
「分かった、俺も俺の事をあまり分かってないが、できるだけ話してみよう」
「よし、存分に話してみよ」
目をワクワクさせてラナータがいう。