意思の疎通
目が覚める
まどろみのなか、少しのダルさと心地よい眠気を感じる。
もう少しだけ寝ていたい。
ふいにハッとする。
あの少年はどうなった?!
起き上がり少年の寝ていた場所に視線を送ると、起きて座っている少年と目がある。
少しだけ驚いた。
さて、どうしたものか、一夜明けてみても何の当ても思い付かない。
それは多分目の前の少年も同じだろうが。
まあ、いい、とりあえずは飯だ飯を食べて寝る、それが今までの生活の全てだったし、これからも一先ずはそうするしかないだろう。
後は少年しだいだろう。
ここにいるなら、ある程度の安全と食事は提供できるだろう。
出ていくというなら、危険だとは思うが、止めるようなことはしない。
少年の事情などわかるはずもないのだし。
干し肉と果物を取り出し、少年に半分渡す。
干し肉を手に取り少年は不思議そうな顔をした。
なんだこれはと言う顔にも見えるし、何でこんなものがある?とも見えた。
俺は少年と少し離れて座ると先に食べてみせる。
個人的には、そこそこ美味しいと思っている。
人間の味覚とゴブリンの味覚は違うかも知れないが。
少年も続けて食べる。
美味しいかと聞きたくなって声をだすが、グァガゴみたいな感じのうめき声がでただけだった。
少年がビクリと体を揺らす。
俺は焦ってしまい、すまないと言おうとして、また変なうめき声をだしてしまった。
怖がられただろうか、焦り共に少年の表情を眺める。
俺の予想に反して、少年は笑い声を上げた。
そして俺には分からない言葉を話した。
何を言ってるのかは分からないが悪い感情は感じなかった。
ほっとした、ゴブリンに生まれてから一番焦ったかもしれない、笑えることだが。
少年が朝飯を食べ終わる。
さて、水でも汲みにゆくとするか。
おれは木を削ったバケツを取り出すと、立ち上がる。
少年も来るだろうか、川の水を汲むついでに水浴びするのも悪くないだろうし。
ただなんと伝えようか悩む。
身振り手振りで川に水を汲みに行くのを伝えてみる。
少年は不思議そうな顔をして眺めているだけだった。
俺もだんだん必死になって色々ためしたが上手く伝わらない。
不意に俺は閃く。
棒を取り出すと、簡単な絵を描いて説明した。
少年は絵を描き出した俺に驚いていたが、何とか理解してくれたようだ。
手をパーの形に広げて声をだしている。
よく分からないが多分OKみたいな意味だろう。
簡単なハンドサインみたい感じか。
少しだけ意思の疎通が図れた事に感動を覚える。
パーがOKならNOはなんだろうか、○✕みたいなサインだけでもお互いに分かればだいぶやりやすくなりそうだ。
後でなんとかして確認してみよう。
何だかワクワクしてる自分に気づく。
俺と少年は川に向かうことにした。