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少年

小さな呻き声と共に少年が目を覚ます。


俺はと言うと少年が目を覚ますのを少し離れた場所で座って待っていた。

あれこれ考えてみたが、結局いい案も浮かばないので腹をくくる事にした、まあ何とかなるでしょう、たぶん


少年の視線が俺を捉える、驚いて身を起こし後退ろうとするが身体が痛むのか顔をしかめ、途中で動きをとめる。


俺は両手を上げ敵意が無いことをしめすが、やはりあまり意味をなさない。

果物を放り投げる、少年は驚きながらも果物を受け止める。

俺はもう一つ果物を手に取るとかじり付く、食ってみろと伝えたつもりだ、ゴブリンの声帯では言葉を話す事はできない。


少年が何か話しかけてくるが知らない言葉だった、俺が生まれてから思考する時に使う言葉、記憶の中で話す言葉と少年の話す言葉は違うようだ。

困ったなと思うが、それほど落胆はしなかった。

何となくそんな様な気がしていたからだ。


俺は答える代わりに果物を最後まで食べきる。

「ガァ」

と鳴いてみる、それくらいしか伝える術をもたないからだ。

 

少年は恐る恐るであるが果物を口に運んだ、恐らく相当お腹がすいていたのだろう迷いながらも空腹には勝てなかった様だ。

果物を食べている少年の顔が少しだけ喜色を帯びる。


あっという間に少年は果物を食べ尽くしてしまう。

少し残念そうな表情をする少年に、失礼だか少し笑みを浮かべてしまう、まあゴブリンの笑みが少年に分かるかは不明ではあるが。

それから、果物をもう一つ二つ少年になげてわたす。


嬉しそうな顔をする少年、少しだけ柔いだ少年の表情を見て心が癒やされた様な気がした。


さて、どうしたものか。

俺は思案する、この目の前で果物を美味しそうに食べている少年、何処から来て何でこんな所で倒れていたのか。


ゴブリンとして生まれてから、こんなに悩んだのは初めてかもしれない、ゴブリンとしての生はいかにして安全と食糧を確保するかという厳しくもあるが単純な生き方だった。


少年が現れた事によって状況が変化した、その変化はいい事なのか悪い事なのかが俺には分からなかった、ただ自分自身がこの状況を許容したいと思ってる事だけは確かだった。


他者との関わりを求めているのかもしれない、それもゴブリンではなく人間との、前世の微かな記憶がそうさせるのだろうか。


どうしたものか、再度思う。

少年が果物を食べ終わる、視線が交わる。

ハッと少年の顔が強張る、怯えが見えた。


俺はできるだけ、穏やかな表情と視線を心がける、優しさが伝わるように、人間だった頃なら上手く表情を作れた気がする。


ただ今はゴブリン、あまり効果は期待できない気もするが。


少しだか少年の顔が緩んだ気がした。


また、少し暖かい気持ちが胸に広がる。


少年のまぶたが眠たそうに落ちかける、まだ疲れが残っているのだろう。

 

俺は手でポンポンと床を叩き、寝れば良いとつたえてみる。

俺も眠たくなってきている。 

自分も横になる、少年が怖がらないように背を向けて寝ることにした。

とても、危険な行為かもしれない、少年が俺を襲うかもしれない。

ただ危険は不思議と感じなかったし、もし襲われても、それでもいいかなと思いもした。


なぜだろう、少年との出会いが俺に人間だった頃の感覚を急速にもどしているのかもしれない。


いつの間にか俺は眠りに落ちていく。


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