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誕生

  俺が生まれた場所は、薄暗い洞穴であった。

 洞穴はゴブリンの住処だった、もちろん、そこで生まれた俺もゴブリンだ。

  何故だか、俺には生まれた時から知識が備わっていた、そのため自分がゴブリンである事も、普通のゴブリンに人間の様な知性がない事も分かったのだ。


 俺の様な特殊な個体の事をユニークモンスターというらしい、ユニークモンスターは体の大きいものや、特殊な能力を持つもの等、様々にいるらしい。


 今のところ、俺には知識と知性以外、普通のゴブリンとさして変わらない非力な存在だ。


 今は、他のゴブリン達と、狩に来ている。


 洞穴の外は巨大なジャングルだ、動物や魔物がうろうろしている、ゴブリンの狙いは動物が基本だ弱い魔物もたまには狙うが、ゴブリン自体、最弱に近い魔物であるため、魔物を狩る様な事はあまりしない。


『ゴフ』

 1匹のゴブリンが鳴き声をあげる、視線を向ければ鹿がいた。


 俺は、ジャングルで拾った錆びた剣を握りしめた。


 鹿に気づかれぬ様、静かに鹿の周りを囲っていく。

 知性がなくとも、本能のなせるわざか狩りの行動は、思いの外、洗練されている。


『ゴフ!』

 叫び声とともに、1匹のゴブリンが鹿の後方から襲いかかる。


 鹿は真っ直ぐ逃げ出す。

 草むらに身を隠していた俺は、向かってくる鹿の足を剣で薙ぎ払う。


 悲痛な声ともに、鹿ぎ倒れ落ちる。

 錆びた剣と、ゴブリンの非力な力では、鹿を斬り殺す事はできない、足を潰すのが一番だ。


 鹿にトドメを刺すと、鹿を運んで洞穴に帰る。


 洞窟に戻り鹿を群れのボスに収める、自分の取り分をもらうと

 洞窟の隅に確保した自分のスペースで食事をとる。


 群れで生活するにはメリットとデメリットがある。

 下の立場の者は自分が手に入れた獲物の一部しか得られず、かといって獲物を取れない時には飢えるしかない。


 正に弱肉強食の世界と言える。

 まあ、シンプルでそこまで嫌いじゃないかもしれない、上の立場に立ちたければ戦い勝ち取ればよいだけなのだから。


 俺は関わるつもりはないが、無駄な争いは避けるに限る、上にたてばそれだけ争いに巻き込まれる確率があがるからな。


 〈俺は元々平和主義だからな〉


 ん??

 自分の思考に疑問が浮かぶ、まるで遠い昔の記憶を思いだしたかのようだ。

 ズキリと頭が痛む


 何か大切なものを忘れているような気がするが、今は考えるのをやめておこう。


 とりあえず、生き残ること、そして力をつける事が先決だ。

 群れで生活するメリットとして、外敵から身を守りやすいのがある。

 最弱のゴブリンといえど集団になれば、それなりのものだ。

 安全な住処、狩の仲間は今の自分には必要なものだ。


 いずれ群れからは出ていくつもりだが今はまだ、ここにいるのが最善であろう。



 しばらくは淡々とした日々が続いた、狩をするのは慣れてきて一人でもこなせる様になってきた。

 成果は順調と言える。

 力もついたし、群れをでた後の住処の候補も見つけておいた。


 そろそろ群れを出ようかと考えていたある日、人間の集団を見つけた

 遠くから様子を伺っていると、他の群れのゴブリンが襲いかかっていった。


 人間達は慣れたもので、綺麗な連携を見せてゴブリン達を撃退していく。

 他の群れのゴブリンとはいえ、自分と同じゴブリンが簡単に倒されていく姿は見ていてあまり気分のいいものではなかった。


 一人ならなんとかいけるか、不意をついて二人が限界かな?

 人間と自分の戦力を比較する、今の段階で人間の集団と戦うのは無理だなと思う。


 いや、そもそも積極的に戦う必要もないだろう、勝ってもあまりメリットはないし恨みを買う恐れもある。


「誰とも戦わなければ、誰にも負ける事はない」

 師の教えを思い出す!

 ??師の教えだと?

 自分の思考に疑問が浮かぶ、生まれてから時折、あるはずのない情報が頭に浮かぶ時がある。

 少しの不安がよぎる。


 しかし、考えていてもしかたないので人間に見つからないうちにその場を去る事にした。


 それから数日のうちに俺は群れを離れることにした。

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