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第363幕 現れる援軍

 相手が俺一人だということで消耗させる為に次々と攻撃を仕掛けてきたイギランス軍は、背後から強襲されたことによりその対応に追われていた。俺から見て前方で激しく戦い合ってるおかげで、かなりの人数が向こうに割かれている。

 ……それでも今まで俺が散々大暴れしながら数を減らし続けたおかげでこっち側にも大分兵士がいるが、少なくても前のように絶望的な状況ではなくなった。イギランス軍の兵士のせいで誰が戦ってるか姿は見えないが、それはすぐに明らかになるだろう。今は……!


「こっちを片付けるのが先か」

「ちっ、撃てぇぇぇぇぇぇ!!」


 しびれを切らしたイギランス軍はとうとうロケットランチャーを持ち出して、俺の方に照準を合わせていた。

 随分甘く見られたものだ。たかだかそれくらいの攻撃、『神』『防』の起動式(マジックコード)で組んだ魔方陣で防げる。


 凄まじい爆音が響き渡るが、こちらの魔方陣は揺らぎもしない。このまま上手く敵兵の注意を引きながら足止めをしようとしたのだが……そう上手くはいかないようだ。


 シアロルで見かけた最新式のゴーレム。あれがイギランス軍の(こちらから見て)後方で立ち上がってきた。やはり彼らも所有していたか……。


 しかしこのままでは、かなり不味い。俺が知る中で、あのゴーレムとまともに戦えるような軍隊の想像がつかないからだ。銀狼騎士団の上位陣ならあるいは……そう思うが、彼らはシアロル軍と交戦しているか、グランセストの国境と首都を守っているかのどちらかだ。少なくともここに割けるような戦力は存在しない。


 ならば……俺がなんとかするしかないだろう。元々魔力の消費は気にしてなかったし、味方であろう者たちに当たらなければそれでいい。


「消えろ――っ!」


 二度めの『神焔の剣』を発動させる。ただ、前よりも範囲を狭め、その分威力の底上げをした仕様だ。使う魔力を少なく出来ない『神』の文字の制約だが、こうすれば向こう側で戦っている味方に当たる可能性は幾らか下がるはずだ。


 大体ゴーレムがいるよりも少し後方辺りに出現させた神焔の剣はその周辺の兵士とゴーレムを焼き払って、そこの一面を焼野原へと変えていく。これで動揺でもしてくれれば更に良かったのだが、一度受けていたことがあってか、イギランス兵は苦々しい顔をしているだけで行動には一切の乱れがなかった。


 その後は『神防』の魔方陣で守りを固めながら、時折こちら側の兵士を倒す為に範囲系の魔方陣を使っていると、イギランス兵が徐々に下がりながらばらばらに移動しようとしている。あれだけ多くいた兵士たちは大半が左右に避けて逃げるように撤退していった。

 そうしてようやく姿を見せたのは――ジパーニグ・アリッカル……そしてグランセスト。それぞれの国の兵士たちの姿だった。


「……これは?」

「グレリア!」


 その異色とも言える軍勢をかき分けるように現れたのは――銀狼騎士団のシグゼスだった。


「シグゼス!? どうしてここに?」

「ははは、驚いたようだな。実は――」


 そこからシグゼスはどうしてこうなっているのか説明してくれた。シアロルの帝都に侵攻する寸前まで行った事がそれぞれの国にも伝わったようで……ここで勝利国の一員に加わろうとしたジパーニグとアリッカルの二国がグランセストに伝令を出して、援軍を出すということに合意したそうだ。そして肝心の軍をまとめる司令官の役目はグランセスト側から選んでもらうことで、シアロルで戦う他の兵士たちに敵意が向かないようにしたのだとか。


 よくもまあそこまで準備してきたもんだ。あの二国がそんな決断をしたな、とも思うが、ヘンリーの事だ。このまま敗戦国の仲間入りをするくらいなら、少しでも手助けをして魔人たちの心境を良くしよう……そういう目論見もあったのだろうな。最終戦に参加した程度でそんな風に都合よく事が運ぶとは思えないが、それでもこれだけの数を捻りだすのに、説得や根回し……色々と手を尽くしてくれたのだろう。


「なるほど。おかげで助かった」

「いやいや、最古の英雄殿の手助けになれれば、彼らも本望だろう」


 シグゼスが後ろの方をちらっと見ると、そこにはイギランス軍を撃退した三国の兵士たちの姿があった。


「そうか?」

「ああ。かの有名な英雄の死地を救った軍勢。このことが魔人に知られれば、ヒュルマ――人の扱いも少しは変わるだろう。貴様は自分が考えている以上に影響力の大きい男だからな」

「そうか……それなら俺が一人で戦いを挑んだ甲斐があったというものだな」

「はははっ、たった一人で何万の軍勢に戦いを挑んで生き残れたのは貴様だけだろう。全く、本当に強い男だな。敵わないものだ」


 豪快に笑っているシグゼスはそれだけ伝えるとさっさと軍の中に戻っていった。

 一人で戦うという俺の覚悟が魔人と人の関係の改善に少しでも繋がったのなら、良かった。


 さあ、それじゃあこの軍勢と一緒に帝都に向かおう。戦いはまだ続く。彼らの力が必要不可欠だからな。

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