ラッパーが異世界に召喚されたら、呪文で無双した
一発ネタみたいなもんです
HEY!YO!
今時こんなワックでフェイクなだせえ呼びかけもねえが。
俺は途方にくれていた。
知らない景色。
知らない動物。
横を振り向くと、裸にしか見えない格好の女がいた。
「なんだ、おまえ、プッシーか?」
女は困惑気にすると、なにかをブツブツと独り言
すると
『聞こえますかー?』
「ワッダ!?」いきなり頭に響く声に驚き絶叫。
おお、この叫びはCrunkの大御所みたいでハイプだ。
『あーあー。おちついて聞いてください。あなたは異世界から、この世界に召喚されました』
「随分イルな話だな」
『動じませんね。頼もしいですわ』
「ラッパーはジュースが必要だからな」
よう、体の中が盛り上がってきたぜ
「で、ショーティ俺はなにをすれば良いんだ」
『はい。この世界では魔物が溢れています。駆逐を手伝ってください』
「オーケー、魔物とかいうワックな連中にバストしてやるぜ」
『ありがとうございます。すばらしいですわ。ほとんどの召喚した方は泣き出すか喚きだすのです。100体魔物を倒したら、元の世界に帰って頂いて結構です。それと武器ですが』
「武器?俺にはもうドープなラップがあるぜ」
『ラップ?すみません、精神会話は意思との疎通。すべての言語は理解できるはずなのですが、あなたのおっしゃることは先ほどから難解な言葉が多いです。ラップとはなんですか?』
「ラップとはなにか!?ブラザー!素晴らしい問いかけだ!ラップとはな!魔法だ!全てを変えることができる魔法なんだ!」
このゲトーでノトーリアスな俺を救ってくれたのがラップだった。
口下手で、人を傷つけることでしか、自分を守れなかった俺だが、見様見真似で始めたラップが、人生を変えてくれた。
今では、インディーズながらもギャングスタラップをやりながら、多少は食えるまでになった。もちろんそれだけじゃ食えねえ。バイトはしている。それでもライブをすれば、そこそこハコは埋まる程度には。
『魔法!素晴らしいですわ!あなたの世界には魔法がもうありですのね!どうりで!その筋肉で勘違いしそうになりましたが、その帽子や眼鏡は魔法使いっぽいですわ!それでは簡単なはずです!この世界では魔法は詠唱をすれば効果が現れます!呪文に必要なのは、詠唱と想像。決められた詠唱を唱えながら、起こそうと思う現象を思い浮かべるのです。例えば…』
女は手を突き出す
『炎の聖霊よ、わが呼びかけに応じ、力をかしたまえ。我の手よりいでたれ!炎!!!』
叫ぶと火球が飛び出る
「グレイツ!最高にイルだぜ!しかし、なんだそのライムは!?」
『ライム?』
「いいだろう!みてろ!俺が異ノーマルでイルでドープなラップを見せつけてやろう!あの先に見えるのが魔物とかいうワックだろ!いくぞ!」
『ま、待ってください!!!訓練が終わっていません!せめて呪文の試し打ちぐらいは!』
「ラップに試しなんてねーんだよ!全てが全力だ!」
そして
「いくぞ!いー!くー!ぞー!」叫びながら
「おれのラップをよく聞け、そこのけ雑魚共!おれの叫びは!大地を揺らす!」
そして、本当に、大地が揺れた。
「なんだ!このイルでロックな世界は!地面もヘッズか!いいだろう!よく聞け!大地よ!ゆらげ!世界をゆるがせ!おれのラップは超絶スキル!目の前の魔物は!レストインピース!」
大地が揺れ、目の前の翼の生えたライオンみたいな奴が、地割れに飲み込まれる
『す、すごい!なにこの人!詠唱しながら即座に魔術発動してる!天才!?キマイラが一撃で!?』
「フリースタイルが得意な俺を呼んだのは正解だぜ!!!いくぞ!魔物を死滅させるまでイルなラップを聞かせてやるぜ!!!」
しかし
『わ!あの地割れで魔物が大量に死んでる!?え?もう100匹退治?』
「なに?」
すると
いつものライブハウスの便所。
俺はそこで突っ立ていた。
「夢か?」立ちションしながら寝てたか?
「いや、いい夢だ。今日のライブは最高にイルになるぜ」
俺はこぶしを握りトイレから出た。
このあと、このラッパーさんは、魔物が増えるたびに頻繁に異世界に召喚されることになりました。