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パーティから追放された天才魔術師だけど時間を逆行する魔法を編み出したからこれから復讐しに行こうと思う。

作者: 川越マツリ

「おっと、ここにルーンを刻むのを忘れたら魔法が発動しないな」


 俺は魔法の羽根で魔法陣の中心に最後のルーンを刻み込んだ。


「ふふふ……ついに、ついに完成したぞ」


 5年。


 それがこの魔法陣を編み出すのにかかった時間だ。

 そしてそれは俺がパーティを追放されてから経過した時間でもある。


 俺の祖父は前魔王を倒したパーティにいた偉大な魔術師だ。

 その杖から放たれる古代魔法は魔物を焼き払い、切り刻み、押しつぶした。

 新たな魔王を討伐する勇者パーティに俺が呼ばれたのも必然だろう。


 だが、今回の魔王は対魔法装甲なるものを開発し全軍に配備していた。

 そのせいで5分かけて詠唱する古代魔法よりも、女戦士が棍棒で殴る方が強いのだ。


 俺はなんとかして自分の居場所を作ろうとした。

 ダンジョンでは魔法で明かりを灯し、カギの掛かった宝箱を開錠し、暑い日には風と冷気を生み出した。


 だがあの日、決定的なことが起きた。

 俺たちは四天王のアジトの1つに向かっていた。

 道中は森林に覆われバグモスキートという小さな虫が大量にいた。

 こいつらは戦闘力自体はたいしたことないのだが刺された跡がかゆくなるので非常に嫌われている。


 俺は喜び勇んで殺虫魔法を詠唱した。

 久々の出番に心躍らせた。


――だが、効かなかったのだ。


 魔王はバグモスキートにも対魔法装甲を配備していた。

 当然俺たちは全身を刺され引き返す羽目になった。


『お前、もういらないよ』


 それが、俺が勇者からかけられた最後の言葉だった。

 翌年勇者たちは魔王を倒し英雄として称えられた。


「これで見返してやる」


 それから俺は対魔法装甲に対処できる方法を研究し続けた。

 そして行き着いたのが時間を逆行する魔法――タイムリバースだ。


 まず敵に攻撃をさせる。

 そしてタイムリバースを行う。

 次に敵がどこを攻撃するかわかってれば俺の剣でも敵を仕留められる。


 否。敵だけではない。


「そう、俺は勇者に復讐してやるんだ」


 魔法を研究してる内に考えが変わったのだ。

 何もこの力を勇者のために使うことはない。


 剣を鞘から抜き机の上のロウソクに切りつける。

 灯芯が机の上に落ち、みるみる炎が広がってゆく。


「ふふふ、はーっはっはっは! あいつもこうやって切り捨ててやる」


 俺は魔法陣の上に立ち、詠唱を始めた。


「5年前だ……俺が追放されたあの時に戻る」


 魔法陣が妖しく光り、あたりに風が巻き起こる。

 机の炎は燃え盛り、周囲の本を焼き尽くす。


「ゆくぞ、タイムリバース!」


 揺れる視界の中、さきほどの炎が消えていくのが見える。

 いや、正確には戻っていくのが見える。


 俺が切り捨てた灯芯がもとに戻り、何ごともなかったかのようにロウソクが燃えている。


(成功だ、このまま5年前まで一気に行くぞ)


 そう思ったそのときだった。

 突如視界が真っ白になった。


「なぜだ!? 何かミスをしたというのか!?」


 轟音と共に俺の体は吹っ飛ばされ、そして意識をなくした。


 ……。


 ここは、どこだ。


 頭をふり、あたりを見回す。

 俺の研究室だ。地面には魔法陣が描かれている。


「そうだ、俺は時間を逆行して勇者に復讐を遂げるんだった」


 丹念に魔法陣を調べると1か所ルーンが刻まれていないところがあった。


「おっと、ここにルーンを刻むのを忘れたら魔法が発動しないな」


 俺は魔法の羽根で魔法陣の中心に最後のルーンを刻み込んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 文章も読みやすく 内容もシンプルにまとまっていて、とても面白かったです。 成る程、ループするということで、短編として簡潔に収まっているわけですね。 [一言] 連載さ…
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