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高瀬にゃんこはお仕事中。

記念すべき50話目( ^ω^ )

今後の更新の指標にしたいので、ブクマ&評価よろしくお願いします。

特に評価ポイントが切望( ;´・ω・`)

「…と、いうわけで非常に大変な目にあったんですよ部長!」


バンバン、っと机を二度叩きながらの高瀬の主張に、部長の返答はため息一つ。


「…そうか」


「そうかじゃなくて!もっと労ってください!そして約束のケーキも奢ってください」


昨日の今日、もちろん忘れてはいない。


「奢るのは構わんが、それどころじゃないだろう。なにしろ今日も相原は不在だし、君も色々大変なんじゃないか?」


「だからこそ余計に糖分が必要なんです!」


今日も痛い女子の視線とか、冷たい上司とかのストレス発散に、是非!


「ついでに中塚女史にも迷惑をかけているので一緒にお願いします。必要経費は主任に請求して構わないということなので、いっそこれも必要経費扱いでいいと思います」


精神的なストレスに対する慰謝料だと思って欲しい。


「……必要経費の意味を取り違えるんじゃない。君達に奢るくらいは俺が出す」


「わーい」


主任をかばったというよりはただ呆れられただけのような気もするが、上手く要望通りのものを引き出せたのでとりあえず満足する。


「それで、その後主任からはなにか連絡ありました?」


「今日の検査で何も問題が出なければ午後には退院になるという話だが…」


なるほど。


「んじゃあ、元気そうでしたし、きっと退院できると思いますよ」


「本人も退院次第こちらに来るとは言っていたがな…」


苦渋、といった様子の表情を浮かべる部長。


「心配そうですね、部長」


「…いくらなんでもあんな姿を見せられて心配しないはずがないだろう。目の前で倒れたんだぞ」


「まぁそうですけど…」


「おまけに詳しい事情は君達から聞かされただけで、俺はまだ何もあいつからは聞いていないんだ」


ムッとしたようなその言い方に、あぁそうかと気づく。


「部長、もしかして嫉妬してます……ってあいた!」


暴力反対!その無駄に長い指は攻撃するためのものではありません。


「軽く小突いただけだろう…。嫉妬なんてものじゃない。ただ面白くないと思うだけだ」


「またまた~」


照れなくてもいいのに。


「嫉妬って感情にもいろいろありますよね~。まぁお気に入りのおもちゃを誰かに取られたレベルから、好きな人が別な人の相手ばかりしてるとか。ちなみにですけど部長。もし私がある日突然全然違う相手に超絶媚びをうって懐いたらどうします?」


「……どうする、とは?」


「だから悔しいとか面白くないとか嫉妬したとか!」


「――むしろ新しい飼い主を見つけたかと相手を気の毒に思う」


「ひどい!」


でもちょっとまて。

部長の感覚では私は今部長に飼われているわけか。


――よし、ならば正々堂々餌を請求しよう。


「部長、お昼おごってください」


「・・・なぜそうなった?」


「飼い猫の餌です」


「………」


自分で言ったセリフが帰ってきただけだ。反論出来まいて。


「……飼い猫なら躾をしても構わないんだな?」


「残念ながら既に成猫なので手遅れです」


高瀬にゃんこに芸は仕込めませんのであしからず。


「君なら野良でも十分生きていけるだろう」


「できれば楽してぬくぬく生きたいんです!」


飼い猫の快適さをしってから野良に戻るのは不可能だ。


「君ならあの幼馴染たちがいくらでも養ってくれると思うが?」


「あれは飼い殺し。わたしが望むのはのびのび飼い猫ライフです」


「………」


「部長、呆れるか憐れむかどっちかにしてください」


表情が複雑すぎます。


「……まぁいい。とにかく、午後にはもう一度相原から連絡があるはずだ。

昼食を外で取るつもりなら、君たちだけで行ってきなさい」


そういって財布から取り出したのは5千円札。

わーいと受け取って、透かし彫りされたおばさんの顔を眺める。

名前を忘れた。新渡戸稲造の方が親近感があったのに残念だ。


「全額使えという意味じゃない。ちゃんと領収書は残しておくように」


「ちぇ」


「……」


            ※

お昼すぎ。

できる飼いにゃん子な高瀬ちゃんは、ちゃんとお弁当を買ってきました。

仕事に忙殺されてろくに昼食も取れずにいるだろう部長宛に。


「……君にしては気がきくな?」


「当たり前です…と言いたいところですが中塚女史の提案です」


「だと思った。中塚君らしい気配りだな」


栄養面を考え、コンビニではなく会社から少し離れた場所にある人気のお惣菜屋さんでわざわざ買ってきたのだ。

そこはもう中塚女史を崇め敬って欲しい。


「それはわかったが、なぜ君たちふたりはわざわざここまでケーキを持ち込んできたんだ?」


そう。


部長と私、そしてビジネス笑顔の中塚女史の真ん中にあるのは、弁当が一つと丸一本のロールケーキ。

きちんと給湯室から果物ナイフと紙皿も借りてきた。


「私の分までお気遣いくださったそうで申し訳ありません部長、せっかくなのでご一緒にと思いまして…」


部長が自主的に気を使ったわけではないのは百も承知だろうが、さすがは中塚女史だ。

中塚女史が綺麗な手つきでケーキを等分に切り分けていく。


「部長はどうぞ、先に食事をお召し上がりください。ケーキはこちらにとっておきますので。

……昨日から、まともなお食事も取れないのでしょう?」


「…あぁ、正直言えば助かった」


言いながら、ようやく仕事の手を止めた部長が目の前に置かれた弁当の包に手を伸ばす。

ちゃんと一緒にお茶も入れてきた。(中塚女史が)


「部長、お昼ご飯食べてなかったんですか?」


「いろいろ忙しくてな…。相原の穴は大きい」


「いつもお一人で全て任されていらっしゃいますからね、主任は…」


「おぉ~。さすが主任…」


涼しい顔してやることはしっかりやってたんだなと今更ながらに感心する。

まぁ、その主任がダウンということでその全てのしわ寄せが部長にいっているわけか。


ご愁傷様です。


そりゃあ、ちゃんとした説明の一つも求めたくなるだろう。

中塚女子と二人、ロールケーキにフォークを突き刺したところで、同じく弁当をつつき始めた部長からため息混じりの声がかかった。


「先ほど、相原から電話があった」


「主任が戻ってこられるのですか?」


フォークを止め、部長に確認をする中塚女史。

そのまま気にせず口いっぱいにケーキを頬張る高瀬にちらりと視線を送りながら、部長が続ける。


「後数時間後には一旦社に戻ってくるそうだ。……及川くん、君にも用があると話していた」


「主任が?」


「あぁ。……はしたないぞ、君」


「おしぼりで無理やり口を拭くのはやめてくださいっ」


いくらなんでもハンカチくらいは持ってますから、弁当のおてふきはやめてっ!

「あらあら、お二人共仲がよろくて…」


ほほほ、と笑う中塚女史。


「それから、例の件にも動きがあった」


「……例の件、といいますと?」


「相原が持ってきたあの取引だ」


ということは、問題の室井社長との件か。


「なぜだからわからないが、上が乗り気でな…。一応まだ止めてはいるんだが時間の問題だ」


受けざるをえなくなるかもしれない。


「え」

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