やらかした!
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それって結局初めから一択だったとかいいません?
「では行きますか…」
ってちょっと!?
「……おや」
「主任!?」
主任の指が、竜児のスーツの裾を掴んでいる。
「起きたんですか!?」
「タカ子、君の姿は見えないはず……」
こんな時にもあくまで冷静な竜児は、主任に抱きつこうと飛び出した高瀬を冷静に静止したが…。
「残念ながら、見えてるよ…」
「「え?」」
今回ばかりは竜児も同じく声を揃えた。
「タカ子…ってのは及川くんの事だろ?それが及川くんか、なるほどね」
いつの間にかベッドから起き上がった主任が、はっきりと高瀬を視界に捉えて含み笑う。
「み、見えるんですか主任」
「それが突然ね…」
そういえば部長が、主任の頭にハムちゃんが乗ったらさっちゃんが見えるようになったって…。
――ハムちゃん…君、やらかしたか?
「おやおや、これは想定外ですね…」
「想定外……確かにその通りだけど!?」
心の中で「きゅ?」と首をかしげるハムスターに向かって「オーマイゴッド!」と頭をかかえる高瀬。
その間、高瀬の姿を頭の先からつま先までまじまじと見ていた主任が口を開く。
「及川くんのその姿は何?」
「え~っと…。幽体離脱?」
他になんと説明すればいいか正直わからん。
「…谷崎は知ってるんだな、それ」
「まぁ…」
知ってるというか、バレましたがなにか。
流石にごまかしようもなく素直に答える高瀬に、「そうか」と頷く主任。
「なるほどね。通りでで及川くんのことを妙に子供扱いしてたわけだ」
「いやそれは多分元から…」
否定しようとして、いや待てよ?と思いとどまる。
それ、否定したところで自分の心が傷つくだけじゃないか?
――よし、やめよう。そういうことにしておこう。
「んで、なんで君たちはここにいるのかな?不法侵入?」
「笑顔で言わないでくださいよ、主任…」
「だって今面会時間じゃないでしょ」
「その通りではあるんですけど…」
後ろめたさに、もごもごと口ごもる高瀬。
「不法侵入ではありませんよ。きちんと許可はとってあります」
しれっと言い放つ竜児に、一応「そうだそうだ~」と追従してみるが。
「本当?なら後で確認をとろうかな…」
「やめてください。むしろ口裏合わせ希望で」
「あ、そういうことね。了解了解」
「軽っ」
なら最初から変なことを言い出さないで欲しい。
「ま、冗談はここまでにして一体何の用かな?」
「さっちゃんを探してたんですけど…」
「人の携帯に勝手に出といて?」
――――それは竜児のせいです。
「っていうかいつから意識が戻ってたんですか」
まったく、妙な汗が出たじゃないか。
人が悪いとにらめば、少し首をかしげた主任が時計を指差す。
「5分くらい前からかな?」
「電話中にはもう気がついてたってことですか…」
だったら早く言ってくれよ。
「ちょっと様子を見ようかなと思ってね。
…で、帰る算段をつけてるみたいだから、いい頃合かと思って。
まぁそこの弁護士さんは随分早く気づいてたみたいだけどね」
「え」
そうなの!?と振り返れば、平然とした顔の竜児。
「……知りませんよ?」
「絶対知ってたな」
ズバリ断言してじろりと竜児を見据える。
何が目的だ、コイツは。
「様子を見ていたというからには全てご存知でしょう?あなたのお友達とやらが一体何の要件で電話をかけて来たのか、そちらをお聞きしても?」
「……さぁ、わからないな。そもそも人の電話に勝手に出たのは君だろ?」
「そうですね。ですが随分とたくさんの着信が入っていたようで」
「なんの用だろうねぇ…。一応あいつの望みは叶えてやったはずだけど」
それは部長に紹介したことを意味しているのだろう。
「思うような結果を得られなかったことで焦っているのでは?冥婚の件についての返事はしていないのでしょう」
「それがさ、実はもう承諾済みなんだよね」
「……はい?」
「だからさ、もう承諾しちゃったの。だからあいつは俺に用なんてないはずだけど…」
当たり前のようにさらっと言われて驚いた。
「聞いてませんよ!?」
「うん。そういえば言ってなかったね?ごめん?」
「だから軽いっ!」
というか、それどころではない。
「まずいじゃないですかそれ!なんで先に言わないんですか!?」
「聞かれなかったし?」
「屁理屈言わない!」
「あ~あ、及川くんに怒られちゃおしまいだなぁ」
あははと笑うが、この事態を本当に分かっているのだろうか?
「では、なぜ今日わざわざその<終わった>はずの問題を賢治に依頼したので?」
納得のいく答えをいただけますか。
顔色一つ変えない竜児に、主任がふっと笑顔を崩した。
「知りたかったから。それだけじゃ不満かな」
「では知った上でどうするつもりですか」
カードは既に配り終わった状態で、ジョーカーは行方知れず。
「既に勝敗の決まったゲームに参加するのは得意とするところではありませんが」
「そういわずに付き合ってよ。俺の気が済むまでさ。……幸希の件を、最後まできちんと調べて欲しい」
「あなた自身にはなんの得にもならなくてもいいということですか」
「勿論」
その顔には清々しいほどなんの迷いもない。
難しい顔になる高瀬だったが、そんな彼女を見下ろし、主任が言う。
「しかし、及川くんは面白いね。そんな姿になってもあまり普段と変わらないというか…。寧ろ今のほうが及川くんらしい」
「それ普段から幼稚だってことですよね」
天誅!
助けを求める相手に対してあまりに失礼と、ベッドまで飛び上がって主任の腹に拳を叩き込む。
「ゲホゲホ…おいおい、俺は病人だよ?」
「死ななきゃ問題ないらしいです。可愛い幼女の一撃くらい甘んじて受けてください」
「可愛い幼女……」
えらい眉根を寄せられましたが、文句は言わせません。
誰がなんと言おうとも可愛い幼女です!
「でも不思議だねぇ。幽霊なのに実体があるみたいだ。むしろ幽霊らしいところが少なすぎじゃない?」
そう言われると確かに弱いが。
「少なくとも影はありませんよ。あと霊感がなければ見えません。今の主任はイレギュラーです」
むしろハムちゃんのせいですと責任転嫁しておきたい。
「へぇ…。それも及川くんの力かな。これで俺も谷崎のやつと同じモノが見れるってわけだ」
「主任、嬉しそうですね…?」
そんなに部長と同じ目線に立てるのが嬉しいのだろうか。
「ふふふ、満更ではないと思ってるよ」
そういう主任には悪いが、なにしろハムちゃんの影響による一時的なものなので、どこまで続くかは誰にもわからない。
「竜児……」
「ひとまず、様子を見るしかありませんね。僕らがすることには変わりはありませんし」
確かにそれはその通りだが。
果たしてそれで済ませていい問題だろうか。
一応話がついたと見て、にやにやとした表情を崩さぬまま、主任の口からとんだ下世話なセリフが飛び出す。
「二人はこれから不純異性交遊?霊体でそんなことするなんてなかなか乙だね~。それとも元に戻ってからかな?声をかけるなんて無粋だった?」
「ええ、まったくもって」
「いやいやいや、ないから。それはないから!」
また最初に戻られたのではたまったもんじゃない!
「ほら、帰るよ竜児!ハウス!」
「では君も一緒に…」
「ハウス!!」
――――――行かないよ!?私は行きません!
とりあえずこの事態に収拾を付けてください!