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神隠しの起源

タイトル変更しました!多少は内容が分かりやすくなったかな?と思うのですが………。試行錯誤中。


「7つまでは神のうち、ですか」

「そうそう、そういえばそんなの聞いたことあるよね。どういう意味?」

主任母と別れ、部長と共にタクシーに乗って自宅まで戻ってきた高瀬は、自宅のベッドで眠りにつくと、すぐにまた行動を開始した。

毎度おなじみ”わらし”こと幼女(詐欺)の出番だ。

『7つまでは神のうち、か』と、タクシーの中でボソリと漏らしたのは部長だ。

仕事があるといっていたからには事務所にいるだろうと思ったのだが、高瀬の行動を予測済みだったのか、他の事務員も誰もいない事務所の中で、竜児は一人高瀬を待ち構えていたようだった。

「7つまでは神のうち、とは、古い日本での乳幼児の死亡率の高さを表したもので、昔の農村部では数えで7つ、実際の年齢では6歳になるまでに亡くなってしまう子供が非常に多かったのです。

その為、無事に7歳を迎えた時にはお祝いをする、というのが本来の起源」

「じゃあ……本来的には数えの7歳。6歳まで、って意味だってこと?」

「そうなりますね。現代の日本でも子供は6歳になれば小学校に入学を果たす時期です。一つの区切りだったのでしょう」

「……なるほど」

そう言われると確かにそうだ。

「それと後はもう一つ。数えで7つまでの子供は、まだ半分神の世界と繋がっていると考えられていたこと。

稚児行列などで6歳までの子供が化粧をして練り歩く姿を見たことがあるかと思いますが、あれは神の憑坐であるということを意味するもの。只人でないことを表しています」

「ほぇ~……」

知らんかった。

だが確かにテレビなどである時期になるとそういったニュースを見ることはある。

「僕はタカ子がその年齢の姿にしかなれないというのも、それが関係しているのだと睨んでいるのですが…」

「え?」

「…まぁ、今はそのことは置いておきましょう」

「う~ん」

ちらりと竜児がこぼした言葉は気になるが、確かに今はそれどころではない。

「それだけではなく、7歳以下の子供は「間引き」の対象となることも多く、貧乏な農村地では意図的に殺されることも少なくはなかった。近年では、農村や山間部で多く発生した「神隠し」とは、その「間引き」によっていなくなった子供を隠す為に村ぐるみで隠蔽して作られた話ではないかという研究がされています。室井家は豪農だったという話ですから、そういった件とはまた別の話かとは思いますが、7歳を前にして亡くなった子供を自家の「神」として扱い、祀りあげていた可能性はあります」

聞いているだけで憂鬱になるような話だが、それを聞いて、主任が一体何を懸念していたのかがなんとなくわかってきた気がする。

「祀るって、どういう方法でかな…」

「さぁ、わかりません。ですが一部では座敷わらしも元々は幼くして亡くなった子供を祀ったものと言われていますから、恐らくはその霊を成仏させることなく、何らかの方法で家の中に留めておくような呪いを施したものだと…」

つまり、魂の牢獄に閉じ込められたようなものか。

それも、永遠に歳を取ることもなく。

今少し考えてみただけでも、とてつもなく不愉快な話だ。

もし、あの”さっちゃん”がそういった方法によってこの世に留まらざるを得ない魂なのだとしたら…。

「……あれ?」

そこまで考えて、ふいにその矛盾に気づく。

「ちょっとまって。普通そういう場合って、家の中から霊が勝手に出歩くってことないよね・・・?」

「まぁそうでしょうね」

「ましてや、特定の個人に取り付くとか、聞いたことある……?」

「少なくも僕は聞き覚えがありません。タカ子のような特例を覗けば、ですが」

「いや私は座敷わらしじゃないから」

つまり、普通の幼女の霊ならともかく、家の中で祀られてしまっているとしたら、霊が勝手に移動することなどありえないということだ。

室井社長のそばにいるのならまだしも、さっちゃんはそこから更に部長の元へ、今度はまた別の場所へと自分の意志で移動しているように見られる。

明らかにおかしな話だ。

「どう思う……?」

「…どこかで何かが食い違っているのかもしれませんね。まだ調査の段階ですから何とも言えませんが」

真実を明らかにするには、手に入れた資料を元に仮説を組立て、それを一つずつ確認していくしか方法がない。

今の段階では、何一つ確定した事実はないのだ。

じれったくはあるが、仕方がない。

「そういえばケンちゃんはもう帰ったの?」

「明日、朝一で○○県に向かうと言っていたので、一旦家に返しました」

「え」

「”主任さん”からの依頼はすでに受理されていますからね。命に別状もないようですから、料金を踏み倒されることもないと安心していましたよ」

「安心すんのそこ!?」

人としていかがなものだろうか、ケンちゃんよ。

「大切なことでしょう。少なくとも賢治にとっては」

「まぁねぇ、ケンちゃんお金大好きだから…」

元々は借金が原因なのだが、その借金も現在はすべて完済されている。

そこまで執着する必要もないとは思うのだが…。

「聞いてなかったんですか?僕らでタカ子を養うと言ったでしょう」

「それ本気だったの!?」

「勿論」

げ。

取り敢えず今は聞かなかったことにしよう。

面倒なことになる予感しかしない。

竜児も今ここでそれ以上どうこうするつもりはなかったのだろう。

「ちなみに仕事があるからっていって先に帰ったのは嘘?」

「嘘ではありません。調べたいことがあったのは事実ですよ。

それにあれ以上僕らがあそこにいてもできることはないでしょうし」

「…確かにそうだけど」

何となくそうだろうな、とは思っていたので、それをどうこう言う気は高瀬にもない。

むしろ本来関係のない二人を病院までつき合わせたのは申し訳ないと思っている。

後でケンちゃんにもお礼を言わなきゃな、と頭の片隅で考えていた時。

「で、タカ子はこれからどうするつもりですか?」

「どうって……え?」

何をどうだって?

考え事をしていただけに、反応が遅れた。

「君はただ僕と世間話をしに来ただけだと?」

「いや…そういうわけではないけど、なんとなく気になっただけで…」

「時間を無駄にするのは好きではありません。

そうだ、せっかくタカ子が来ているんです。たまには僕の家までついてきますか?」

「家?……って、竜児の?」

「それ以外何がありますか」

「いやぁ…だって行くの初めてだし…」

「いつだって来て構いませんよ。…そのまま帰したくなくなる可能性はありますが」

「物騒な冗談だねぇ」

「そうですか?冗談だと思うならそうなさい」

………。

生身で竜児の家に行くのだけはよそうと、はっきり心に決めておく。

最も、生身ではなく霊体の方を監禁する気マンマンというあの霊能者のような例もあるので油断はできないが…。

流石に幼馴染相手にそこまでしないとは信じたい。

「一応さ、これからまた主任の病室をちょっと覗いてこようかと思ったんだけど…」

「病院をですか?」

「うん…。もしかしたらさっちゃんがそっちに行ってるかもって…」

ちなみに部長宅にはハムちゃんを置いてきた。

そちらにさっちゃんが戻ったら、ハムちゃんが連絡をしに来てくれる手はずになっている。

部長はハムちゃんを肩に乗せて渋い顔をしていたが、これで完璧だ。

「君は、病院に行くのは嫌がっていたのでは?」

「うん…まぁね」

確かに正直気は進まない。

なぜならあそこには大勢の霊がいるからだ。

とり憑かれるだとか、そんなことを気にしているのではない。

生身でだって霊は見えていたが、それを無視することには慣れている。

部長だってそれは同じだろう。

ハムちゃんのおかげで他の霊に憑依されることはないが…。

「同じ目線になって見るのとは、ちょっと別だよね」

霊同士として遭遇するそれらの嘆きはまた別格だ。

「……僕もついていきましょう」

「竜児が!?」

「なに、適当に言い訳をして見舞い客だと名乗ればいいだけです。

タカ子一人にするのは心配ですから」

「竜児……」

「それとも今から僕の家に来ますか?」

歓迎しますよ、と言われ、答えは一択だ。


「いくよ、病院!」


読了ありがとうございます!

シリアス展開で頭が(?)となるところもあるかと思いますが、もう少々お付き合いください。

ブクマ&評価、そして感想も勿論大歓迎ですので、よろしくお願いします。

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