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幼女は幼女でも…?

なんだろう、この違い。

強いて言うなら、「コンビニ弁当」と「高級仕出し弁当」か?


「ねぇねぇ、お嬢ちゃんや。君は一体どこの子だい」


同じ幼女としてサシで話そうではないか、と公園のブランコに座り、語りかけたみたのだが。


「………」


だんまりかい。


それともあれか。本物の幼女でなければだめか。だめなのか。

あの後、おんぶお化けと化していたこの子を部長から預かるだけ預かったはいいのだが、それ以来一言も話さないのだ。


「しかし本当にお嬢ちゃんは可愛いねぇ」


陶器のような真っ白な肌に、真っ黒なオカッパの髪。

古びてはいるものの、上等な着物は赤い花柄で、帯は金糸の刺繍が入っている。

売ったらいくらするだろう。いや、売らないけど。


ロリコンがヨダレをながしてハァハァしそうだ。


しかしそもそも、なぜこの子は部長についてきたのだろうか。

この子は間違いなく、あの社長の後ろについていた子のはずだが……。


               ※


「部長、なんで連れてきちゃったんですか、この子」


幼女誘拐ですか?


「はぁ?何言ってんの、及川くん」


「いい、相原」


私呆れました、と顔に書いてあるような高瀬に、何を言われても仕方ないと認めながらも仏頂面の部長。


「全面的に犯行を認めるって感じですね」


「……人聞きの悪い事を言うんじゃない。……気づいたらついて来ていたんだ」


「イケメンの言い訳か」


黙っていても女が付いてくると言いたいのか、え?


「そんな訳無いだろうがっ!……ハァ…。とにかく、俺にも想定外の事態だ」


「そりゃそうでしょ。むしろ想定できたら予知能力者です」


誰が商談に来て幼女を連れて帰る未来が予測できる?


「とにかく……なんとかできるか」


「…そりゃ…まぁ……多分?」


歯切れが悪くなるのも当然だ、生霊や動物霊と違って、相手は幼女の幽霊(?)


「部長……なんでもかんでも拾ってきちゃダメだって子供の頃親に言われませんでした?」


「犬猫と一緒にするんじゃない」


「その位の気軽さでいつも拾ってきといて何を言ってるんですか」


今回ばかりは反省してもらいたい。


「……」


「え、もしかしてまた何か取り憑かれてるの?こいつ」


「幼女誘拐です」


「は?」


「……」


「座敷わらしみたいな感じの幼女の幽霊に背後から抱きつかれてます」


たまたま新しいコーヒーを持ってきたマスターが、一瞬ぎょっとしたような表情で、部長を見る。


「悪い子ではなさそう…ですけど」


悪霊だったらアレク君がもっと吠えているはず。

今も警戒しているというよりはどうやら困惑している様子で足元をうろちょろしている。


くぅ~ん、くぅ~ん。


「……」


幼女、無言。ひたすら、無言。


「除霊できないのか?」


「…できなくもないとは思いますけど、本人は……嫌そうですね」


無言のままに今首を振った。

なんだ、話聞いてんじゃん。


「んじゃとりあえず預かりますよ。ちょっとこの席に座ってもらえます?」


「……大丈夫か?」


「多分」


部長がそう聞いたのは、問題の幼女が背中に張り付いているからだろう。

椅子に座った場合、潰れてしまうとでも思ったのか。


「嫌なら自分で降りますよ。……ほら」


案の定、会話を聞いていたらしい幼女がするっと背中から降りた。

ほっとした顔の部長が、そのまま椅子に腰掛ける。


幼女は無表情ながらアレク君に夢中だ。

じーっとみつめられて、犬ながら困り顔である。


「座敷わらし…って、ここにいんの?その子」


「いますよ。……あれ、ハムちゃん」


「ん?ハムスターがどうかしたの?」


「さすが幼女、厳つい土佐犬よりも小動物を選びましたね」


今度はポケットから出てテーブルの上をうろちょろしていたハム太郎を見つめている。


「お、掴んだ」


「え」


『きゅう!』

「こらこら、ダメですよ。小動物には優しくしないと……」


可愛い顔をしている割にハム太郎を握りつぶさんばかりの様子だ。

というよりは、力加減がわからないのかもしれない。

先ほどアレク君を凝視していたことといい、動物が珍しいのだろうか?


無表情な割に可愛いな。


「んじゃ、とりあえずハムちゃんには尊い犠牲になってもらうとして…」

『きゅ!?』


「おい、今明らかに嫌がってなかったか…?」


「だから尊い犠牲ですって」


「……なんだかわかんないけど、新しいコーヒー貰うぞ」


霊感のない主任にはわからない話だけに、手持ち無沙汰になったようだ。

部長に飲まれたコーヒーの代わりに、やってきた新しいコーヒーを手に取る。


「しかし、なんで部長についてきたんでしょうね。あっちの社長よりも部長の顔を気に入ったとか…?」


「顔…」


「あっちの社長…って、室井のことか」


複雑そうな表情の部長に代わって声を上げたのは主任だ。

まぁ、友達だと言っていたし、気になるのは当然か。


「そうですよ。部長についてきた霊は、元々あそこの社長にとり憑いてたはずなんです」


部長と二人、はっきりとこの目で見ている。


「その子供の霊って…座敷わらしみたいな姿してるって言ったよな…?」


「はい、そうですけど?」


「……悪い、ちょっと用事を思い出した」


「え、主任!?」


「金はもう払ってあるから安心していいよ。……ほれ、谷崎!」


そう言って主任が投げてよこしたのは車のキー。

え、これはまさか。


「部長と二人で帰れと!?」

「なんで不服そうな顔をするのが君の方なんだ……?」


もちろんその場合無条件で運転手は部長ですがなにか。

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