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二人そろって考え中。

「で、そっちは一体何のようだったんだ?」


「別にぃ?ただのお散歩!」


「…散歩ねぇ…」


ギクリ、とはしたものの、シラを切り通す。


「お前、ここがショッピングモール用の土地として切り崩されることを知ってるな?」


「まぁね、それくらいは……」


「前回俺に会った時には何も聞かなかった。なのに今お前はここにいる。…何故だろうな?」


「……なんでだろうね?」


わたしわかんない、と無意味にくるりと一回転する。


「お前……今回の関係者の中にいるな」


グサリ。


「どこだ?どこと繋がってる。地元の人間じゃない。うちの業界の人間でもないとすれば、後は……」


ゆっくりと思考を巡らせた男――ー龍一が、当然のようにその答えにたどり着く。


「今回の件で手を引いた地主の商談相手のうちのどれか、もしくは地元住民についた弁護士の関係者…どちらかだな」


正解:どっちもです!


いっそのことピンポンでも鳴らしてやろうかと思うくらいどストライクで当ててきた。


「なんのことだろうね~わかんな~い」


どうせ何を言ったところで無駄だと思い、白々しく空を見る高瀬。


「俺が地主に雇われた人間だってことも知ってるな?」


「まぁねぇ……」


「地元の連中の裁判、まともに受けてたてば、俺の雇い主は確実に負ける」


「だろうね」


「……まぁ、それは俺の知ったこっちゃないが。問題はその後だ」


「いいの?雇い主が裁判で負けても」


「端から勝てる勝負じゃない。俺が依頼を受けたのはこの山を崩すのに邪魔となった神を殺す事、それだけだ。後の問題はこっちには何の関係もない話だからな」


随分と冷たい言い方をする理由は、彼自身それが及ぼす影響力の強さを知っているからだろう。

彼はただ依頼を受けただけ。その咎を受けるのは、本来依頼をした人間だ。


「……気づいてるんでしょ?この土地がまずいこと。雇い主に警告してあげれば?」


「言ったところで聞きやしねぇよ。所詮目先の欲だけで動いてる奴らだからな」


「受けなきゃよかったじゃない、そんな依頼」


「言ったろ。こっちにも事情がある」


命懸けの事情だ。


「住民側についた弁護士は優秀だって話だし、土地の歴史も調べ抜いた上で勝負をかけると予想できる。

そうなりゃ、災害を未然に防ぐって意味でこの山が崩されることはまず防げるはずだ」


「……まぁね。ここを崩せばいつ災害が起こるかわからないっていう明確な事実があれば、たとえ地主がなんと言おうと地元の人間の生命を見殺しにするような真似はできないとは思うけど……」


もしそれで実際に災害が起きたとしたら責任問題になるからだ。

最も、そういった問題がある土地を金の力で強引に商業用地化し、後から問題になったケースがないわけではないが…。


「竜児がそれを許すはずない」


「りゅうじ?そりゃ、相手側の弁護士の名前だったな」


「あ」


意気込むあまり、つい心の声が口をついて出ていた。

ははん、と口元を歪ませる男。


「そうか、お前は弁護士側の関係者か」


「違いますよ~。し~らな~い」


「今更とぼけても手遅れだ。…必ず見つけ出してやるさ」


「見つかるといいデスネ~」


龍一は完全に高瀬を竜児の関係者だと決めつけたようだが、正直それはそれで安全パイ。

どうせいくら竜児をつついたところで、高瀬までたどり着けるはずがない。


何しろ高瀬と竜児との間には、表向きただの小学校の幼なじみという以外、何のつながりもないのだ。

高瀬が表立って竜児のもとを訪ねたことなど一度もなく、その逆もまたしかり。

竜児の事務所の人間とて、賢治の顔は知っていても、高瀬の顔を知る者はない。


それはいろいろ考えての竜児からの指示だったが、今回それが功を奏した。

やはり人の言うことは素直に聞いておくものだ。


「その話は済んだこととして、お前はこの土地をどうするつもりだ?言っておくが、俺にはどうすることもできんぞ」


「……だからねぇ、それを考え中だったわけよ」


どうしようかなぁ、と。


「早いうちになんとかしないと、来週には大雨警報が出ている」


「それ、元凶のあんたが言う?」


「俺が出る前から事態は最悪だ。もう手遅れだったんだよ」


前の地主が死んだ時点で、神はもうすでに怒り心頭だったらしい。

山からは徐々に生き物がいなくなり、木々は枯れ始めていた。


「激怒プンプンまるですか……」


「?わけのわからん言葉を使うな…。とにかく、手を打たないと誰かが手を下すまでもなくこの山は崩れ落ちるぞ。下の集落を全て巻き添えにしてな」


そりゃ、あかんね。


「ちなみにどうすればいいと思う?」


「俺に聞くのか?」


「だってあんた専門家でしょ?」


「……」


「いい知恵ないの?」


はよ考えろ、と難しい顔で考え込んだ龍一のすねを蹴り飛ばす。


「お前な……」


「ほら、早く」


「……」


多少の罪の意識はあるのか、それほど強くは出られないのだろう。

龍一はしばらく考え込んでいたが、ふと空を見上げ、怪訝そうにある場所を指さした。


「あれ……」


「え?」


「お前の鳥じゃないか」


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