気になるアイツ
「……よくやった!あんたらはエラい!」
恩義を感じてのことか、こちらもまた良くなついた2羽の鳥の頭をわしゃわしゃと撫でながら、高瀬は盛大に彼らをほめたたえた。
事の起こりは数時間前。
中塚女子に連れられ、2件目へ行った。
おすすめだという店へ移動する途中、見覚えのある背中を見つけた。
例のストーカー陰陽師だ。
…まぁ、この場合出会ったのは本当に偶然だし、誰のせいでもないが…。
――問題は、その後である。
「…どうしよ…。あれ、ほっといたら死ぬよね…。ってかもう死兆星一歩手前…」
死兆星、とは見たら必ず死ぬというアレな星座だが、高瀬の見る限り、今のあの男の状態はそれに近い。
なんであんなものを背中に貼り付けているのかは知らないが、とんだ失敗をしたものだ。
それなりに実力はありそうだったのに、どうしたのか。
「手を出しちゃダメなものくらい、わかるでしょうに…」
なんで、手を出しちゃったかなぁ。
”神様”になんて――――――。
見たところ状況は最悪だ。
高瀬にしても何ができるのかは微妙だが、放っておくのも目覚めが悪い。
そう思ったが、既にほろ酔い気味の中塚女子を一人にしてあの男を追う訳にもいかず、後ろ髪引かれながら店に入った高瀬。
上機嫌の中塚女子をなんとかタクシーに乗せ、ようやく一人になったところで、あることに気づく。
アクセサリーの中に居たはずの2羽が、いつの間にかいなくなっているのだ。
まさかもう成仏してしまったのだろうか。
そう思っていると、彼らはすぐに戻ってきた。
ついてこい、と言わんばかりに高瀬の頭上でその羽ばたかせて。
「…もしかして、あいつを追ってくれたの?」
バサバサバサ
「よくやった…!あんたらはエラい!」
無言の羽ばたきを肯定と捉えて、高瀬は彼らを称えた。
上空から高瀬の手元まで降りてくる2羽を、思い切りなでくり倒す。
「行き先はわかってるんだよね?」
バサバサバサ
「ふむふむ」
バサバサ
「じゃあ、一回帰って用意するから…先に1羽そっちについててくれないかな?…あ、くれぐれも近づきすぎないように!」
がってん承知の助、というわけではなかろうが、高瀬の発言をうけ、鷹が先に飛び立った。
代わりに雉が、再び高瀬のアクセサリーの中へ戻る。
「よしよし、んじゃあ…用意しますかね…」
とりあえず、家に帰らねば。
このままの姿でアイツの前に姿を現すなど、自殺行為だ。
―――――あ、いいこと思いついた。
頭にぴん、と閃くアイディア。
そのまま近くを走っていたタクシーを止め、帰路についた高瀬。
用意はバッチリ……とは言っても、風呂に入ってベッドに入っただけだが。
少なくとも、気合は十分だ。
「待ってろよ…!エセ陰陽師…!!」