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なぜわかった!?

お気に召しましたらブクマ&評価宜しくお願いします!!


さすがバブリー部長は、帰りもしっかりタクシーを呼んでくれた。

おかげで今日は元気いっぱいで眠りにつくことができた。


「元気100倍、ってね~」


本体に生気がみなぎる分、当然ながら霊体の活きも非常にいい。


う~ん、といつもの幼女姿で背伸びをしながら、ついでにおいちに、さんし、とラジオ体操を始める。

さて、今日はどこに行こうか。


「寺尾のおじいちゃんの所はまだ進展はないし…」


例のひき逃げの事件、あれは驚く程のスピードで解決されていた。

帰ってきた高瀬がテレビをつけると丁度その報道を行っていたのだが、あの男の言うとおり、犯人はすぐに自首してきたらしい。

なんでも、「夢で被害者の霊が永遠追いかけてくる」と訴え、このままでは呪い殺されると自首してきたそうだ。

誰の仕業かは言わずともわかるが、まぁいい仕事と褒めてあげよう。

今後会うことがなければ一番だが…それは恐らく難しい。


「諦め悪そうだったもんね…」


部長にいった言葉ではないが、ストーカーは厄介だ。

だが、そのせいで自分が逃げ隠れしなければいけないというのも癪に障る。

結論として、高瀬の日常は何も変わらず、そういうことだ。


今日は可愛いお供もいる。

頭の上にちょこんと乗っかったハムスターだ。


「ハム太郎~」


頭から肩へと降りてきたハムスターにほおずりしながら、高瀬はルンルンと夜の散策を開始した。

そこで、まさかの出会いをするとも思わずに。


       ※


高瀬が向かったのは、繁華街から少し外れにある小さな公園だった。

誰がいるわけでもないが、ほとんど人目に付くこともないため選んだのがここだ。

今日は誰かと待ち合わせをするより、引き受けた3匹の為にここにきた。


早速ハム太郎は楽しげに駆け回り、少し先に歩いて行ってはきょろっとまた高瀬を振り返る。


「…すっかり懐かれたなぁ…」


逆に手放す時が寂しくなりそうだ。


「お前達も。そぉれ~っ」


しっかり持ち込んでいた羽飾りを取り出した途端、勢いよく飛び出していく2羽の鳥。

本来鳥は夜に行動することはあまりないが、霊体となったこの2匹にはもはや関係ない。

既に死んでいる以上、外敵を恐る必要もないのだから。


「お~。なかなかに圧巻…」


暗闇の中を飛ぶ、2羽の鳥。


「もしかしてこのまま成仏できるかな…?」


楽しげな2羽を見ていると、いけるような気もする。

幸い、人間に対しての憎しみもそれほどないようで、あっさり浄化できそうだ。

少し様子を見ていよう、と上を向いていた高瀬は、それ故に気づくのが遅れた。


「…誰かいるのか」


「…!」


見えるはずのない自分が誰かに声をかけられたということと、その声に聞き覚えがあったこと、その二つに驚き、高瀬は飛び上がった。


こ、これは…。


「子供…?まさかこんな時間に……」


訝しげなその声は、間違いない。


「君!こんなところで何をしている?親はどうしたんだ?」


部長―――――!!!!!!!!


ぎゃぁぁぁぁぁあぁと、心の中で一週叫びまわった高瀬は、しかしそれを表面には出さず、ゆっくりと振り向いた。


さぁ、今から私は女優になる。

むしろ今から幼女になる。


「…おじちゃん、だぁれ…?」


可愛らしく小首をかしげ、影のないことを見せつけるように街灯の下を歩く。


「…!君は…」


完璧だ。

目論見通り、影がないことに気づいた部長は高瀬を幽霊と思い込んだのだろう。

急に及び腰になると、じりじりと後退りを始めた。


「遊んでくれるの………?」


ふふふ、やったね!と内心で喝采を上げながら、高瀬は演技を続ける。

このまま行けば、憑依体質の部長は間違いなく逃亡するとみた。

わざとらしく小首をかしげ、無邪気な様子を見せながら、近づいていく高瀬。


そこへ現れたのは一匹のハムスター。


―――げ。ちょっとまってハム太郎。


とことことやってくると、まだその存在に気づいていない部長の足をよっこらせとばかりに登り始める。

思わず身振り手振りで「ダメダメ!戻って戻って!」と指示するが、お気に入りの登場にテンションが上がったらしいハム太郎は嬉しそうに背中へと駆け上がっていく。


「…なんだ?」


「…ちょ…戻りなさいって…」


思わず声が出た。


どうやら気づかれてしまった模様。

背中を伝い、するすると部長のポケットの中に頭を突っ込んだハム太郎は、尻を半分ほど出した状態でくるりと一回転し、頭を高瀬のほうに向けると、「何か?」とばかりに小首をかしげる。


「これは…リチャード」


「個体差分かるの!?」


「…何?」


はっ。しまった。


しっかりハム太郎を個体認識している部長に驚きのあまり、つい。

そこで追い打ちをかけるように、頭上をくるくる回っていた2匹の鳥に気がつく部長。


「あれは………」


まさか、と。


頭上を見上げ、訝しげに眉根を寄せる部長に、高瀬は知らんぷりでそっぽを向く。

私は関係ありませんよ~とアピールしたいところだが、状況証拠が揃いすぎた。


案の定、何かを悟ったらしい部長が、気づけばじっとこちらを見つめている。


「…及川君…か?」


「いいえ違います」


「及川君だな」



――――――ばれてーら。




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