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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
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ep.8 呼び出し


 2人でいつも通り登校して、教室に着いた私達はその異様な光景に違和感しか感じなかった。


「なんかいつもよりみんな静かだね…」


「うん…」


 いつもなら私達が視界に入っただけでガヤガヤしていたクラスメイトだが、今日は全員御通夜のように黙っている。それでも静かというだけで視線は常にこちらに向けられている状態だ。

 気にしていても仕方がないので私達は自分達の席につくことにした。


 しばらくして予鈴がなったが、いつまでたっても先生が来ない。とうとう不安になってきて私は隣の席の女の子に聞こうとしたが、視線を向けた瞬間にまるで幽霊でも見たかのような怯えた顔を向けられたので遠慮しておいた。

 教室は先生が来ないことから次第に生徒同士でお喋りが始まって騒がしくなったが、彼らは私達に聞かれまいと全員が耳打ちで話しているという異様な光景であった。



 ガラガラガラガラ。


 ただ、そんな状態も担任の先生がドアを開ける音で中断される。教室内は一気に静寂へと変化した。


「伊藤と夜見、いるか?」


 先生は無機質に、やや低めの声でそう言った。その目は今がいかに深刻かが分かるような色をしていた。


「はい…」

「いますけど…」


 私と早苗ちゃんは同時に立ち上がってお互いを見合った。早苗ちゃんはとても困惑した様子で再び先生の方を見直す。


「悪いがちょっと来てくれ。他のみんなはしばらく自習な。」


 その言葉を聞くなり待ってましたと言わんばかりに教室は生徒の声で埋め尽くされる。私達はそんな中をおそるおそる通って先生の元まで歩いた。

 二人が来たのを確認した先生は、一度頷いてから「行くぞ。」と言い、振り返って歩き出す。

 その背中はとても冷たい感じがしたのは早苗ちゃんも同じだろう。



 しばらく私達は無言で歩き続け、着いたのは校長室だった。本来滅多に生徒が立ち入ることがないこの部屋に連れて来られたということは相当深刻な事なのだろう。私は嫌な汗が首筋に垂れるのを感じた。


 先生がノックをしてドアを開け、私達に入るよう促した。中に入るとエアコンが効いているのか、とても涼しく快適なのだが、今の私達にとってはやや肌寒い。校長室に入るなんて初めてで、他の部屋にはない豪華な絵や置物もあったがそんな物を見て関心している余裕などなく、ただ頭を真っ白にして部屋の中を進む。

 校長室は私の教室の半分くらいの大きさで、ドアと正反対の壁には窓があり朝の眩しい日光が入り込んでいて部屋の中は照明がいらないほど明るい。そんな白い光を遮るように、髪が薄く頭皮が丸見えの丸い頭にメタボリックな体型、タバコくさそうな灰色のスーツのいかにも校長らしい人物が社長机をまたいだ先に座っていた。

 校長は私達が入って来たのを確認すると崩していた姿勢を正してゴホンと一度咳き込んだ。


「まぁ君たち、とりあえず座りたまえ。」


「…はい。」

「失礼します…」


 座れと言われたが、用意されていた椅子は3つあった。とりあえず私は1番真ん中に座って、その右隣りに早苗ちゃんが座る。


「赤石先生、あとの1人は…」


 ガラガラピシャーン!!


 校長の言葉を遮るようにして乱暴に開けられたドア。音の大きさに驚いて体がビクッとなって後ろを振り向くと髪はボサボサで色あせた金髪、制服は乱れ両手をポケットに入れてズカズカと入り込んで来た目つきの悪い女の人がこちらに向かって歩いて来る。その表情は赤子でも分かるような不満爆発顔であり、イライラゲージMAXだ。


 だが、私は…いや、私達が最も彼女の容姿で驚いたのは頭についている角だった。

 それも、私達のと比べると圧倒的太さで短く、まるで犬耳の様になっている。

 そんな私達が呆気にとられて彼女を見ていると…


「あ?おい、お前ら。何見てんだゴラァ?」


「あ…うん。ごめん。」

「ひぃっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


「小林、おふざけが過ぎるぞ。とりあえず座れ。」


「チッ…」


 担任の赤石先生に言われてイラついたのか、小林という女子生徒は3つのうち誰も座ってない椅子を蹴っ飛ばした。

 だが、自分が座る椅子がないと気付いてぶつぶつ文句を言いながら蹴った椅子を元に戻して座った。


 うん、頭悪いな…


 私がそんな目で見ていると気付いたらしく、後で殺してやるぞと言わんばかりの視線…いや、死線で睨んでくる。


 めんどくさいなぁ…


「よし、ようやく全員揃ったようだな。それでは話を進めよう。」


 校長がまたゴホンと咳き込んだ後、話し始める。私達はそれを合図に視線を校長にむけた。果たして、何を言われるのだろう…まぁ、隣の不良はともかくとして私や早苗ちゃんは指導を受けるような悪事を働いた覚えはないし、十中八九ポイントなのは集められた3人全員に共通することだ。

 そう、私達は全員角が生えている。すなわちそれは話の中心には竜少女関連であるのだ。


 世間で差別とも言えなくもない扱いを受けている私達や竜少女達。そんな厄介ごとを抱えている学校側も恐らく大変なのだろう。だからせいぜい今から忠告されるのは


『登下校および校内では原則角を隠しなさい。』


とかだ。

 そんな考えにたどり着いた私は安堵の表情を浮かべていた。


「私はこの学校の校長、相澤だ。それで、君たちは夜見早苗、伊藤ルン、小林伊月で間違いないな?」


 私を含め、3人は無言で頷く。


「それでは、単刀直入に言おう。」


 校長のその言葉と同時にドアから黒いスーツに黒のサングラスをかけた通称黒服が何人も入り込んで来た。


 私達がそれを見て驚いている暇もなく、校長は話を継続させる。



「君たちは今日をもって、この学校を退学となる。」

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