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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
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ep.7 折れた角


 夜。私はまたベッドで横になって考え事をしていた。話題はもちろんヨミさん…いや、早苗ちゃんのことだ。


 彼女には確かに私と同じように竜の角が生えていた。それはあまりにも短くて帽子を被っていたらまず分からないだろう。だから早苗ちゃんは気づかれないようにあんな不自然な帽子を被っていたわけだが…

 しかし、その角にはとても違和感があった。そう、まるで枝を折ったかのように途中で途切れていた。その証拠に、角の先は私のように尖っているわけではなく角ばっており、断面はギザギザとしている。

 私が思うに、あれはどう考えても正常な角ではない。とは言っても角なんて自分の以外見たことないから確証は持てないが、あの状態と早苗ちゃんの言葉からして多分間違いないだろう。


 彼女曰く、両親は極端な反竜少女家だそうだ。


 竜少女を嫌う家庭に生まれてしまった角の生えた女の子。


 私はどうも嫌な予感がしてならない。先程から心がその事でずっとざわついている。


 両親が極端な竜少女嫌いで、その子供に角が生えていて、その子の角は折られた形跡がある。すなわちここから考えつくのは…



ーー早苗ちゃんは親に角を折られたのではないか?

 

 

 私は知っている。角には神経も通っており、私達にとって角は手足同然である事。もちろん触れられればそれを感じるし、傷つけられれば痛みを得る。そんな角を折るなんて……早苗ちゃんの親は……


 いや、これ以上の深入りはやめておこう。今にも飛び出して確認しにいってしまいそうだ。『よそはよそ、うちはうち』という言葉があるように、私がどうこうしていい問題ではない。現に彼女の角が折れた理由は不明であるし、今までのは憶測に過ぎない。早苗ちゃんが私に打ち明けてくれた思いを壊したくはないし、彼女がそれを望んでいるとは限らないから…

 だから私が彼女に思うのはただ一つだけ。


 辛いなら辛いって言って欲しい。


 早苗ちゃんは自分の角について語っている時、とても辛そうな顔をしていた。わたしと同じ角を持っている彼女だけれど、おそらく私よりもっと辛い経験をしているはずだ。

 私はそんな早苗ちゃんを放っておきたくない。できれば助けてあげたい。


 それを最後に私は夢の世界へと落ちていった。



【翌日】


 私が学校へ行く支度をしている時にドアホンがなった。

 またどっかの記者がこんな朝っぱらからきやがったと思い玄関のドアを乱暴に開けると目の前に立っていたのはなんと早苗ちゃんだった。


「えっ、早苗ちゃん…どうしたの?」


 昨日と同じように学校の制服を着て私の家に訪ねてきた彼女だが、昨日とはまるで別人のようになっていた。

 私がドアを強引に開けたにもかかわらず胸を張り、落ち着いた様子の早苗ちゃん。その頭にはあの不恰好な帽子はなく、短い角が露出していた。


「私、今日からルンちゃんと行こうかなぁって思ったんです!それと、私…角は隠さないで生きていくことにしました。これからもよろしくお願いします!!へへっ。」


「う、うん。」


 私はその時、初めて早苗ちゃんの笑顔を見たのだった。





 しばらく経ってから、早苗ちゃんは親についても打ち明けてくれた。やはり、彼女の角は父親によって折られており、しかもその父はDV気味であったことも話してくれた。母親は夫の暴力に耐えきれず家を出ていってしまい、残された早苗ちゃんは一人で父と暮らしていたのだと言う。そしてつい最近のことだが、ついに父親さえも家に帰らなくなったらしい。それを聞いた私は居ても立っても居られなくなって、彼女をウチに招待して一時的ではあるが同居することにしたのだ。もちろんずっとというわけにはいかないけど、早苗ちゃんが安心して毎日を過ごせるに越したことはないし、私ももう彼女を放っておくなんて考えられない。


 早苗ちゃんにも角が生えていたという事実は学校中に広まった。相変わらずクラスの人からの視線は痛いけれども、そんなのはどうでもいい。私達はお互いが大切な存在であり、他人がどう言おうが関係ない。

 昔は憎くもあったこの角だけど、今はとても感謝している。だって、こんなにも素敵な親友に会えたのだから…

 私と早苗ちゃんとの楽しい日常生活はまだ始まったばかりだ。



 そして、毎朝学校へ行く前に私達の日課が一つある。


 お互い揃って玄関の外から


「いってきます。」


と言い、そして鍵をかけたあとお互いに向かって


「いってらっしゃい。」


と言うのだ。

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