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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
7/25

ep.6 訪問者


 土曜日はなんて素晴らしいんだろう。一日中ゲームをしようが、徹夜でアニメを見ようが明日もまだ休みという余裕感、最高だ。

 こんな日は朝からPCを起動して…


 ピンポーン


 ………誰だよ…


 私の家に訪問してくる人は大抵まともではない。身寄りも友人もいない私を訪ねてくるなんて訪問販売とか宗教勧誘とか、あとは…竜少女関連のやつらだ。

 だけど一応無視するわけにもいかないのでドアホンで応答する。


「はい、どちら様ですか?」


『あ、どうも。こちら昇竜ニュースの相川というものです。この度は竜少女についてお聞きしたいことがありまして…』


「帰ってください。」


『いや、あのーお話だけでも…』


「お帰りください。あなたに話すことは1ミリもありません。」


 イライラした私はこれでもかと言わんばかりに通話終了ボタンを連打した。


 あーもう、さっさと帰れってーの。本当にしつこいわね、なんでそこまでして私に竜少女のことを聞きたがるのかしら。そんなに知りたいならいっそDGの本部へ問い合わせればいいのに!


 そう、前々からこの家にはさっきみたいなやつらが度々訪問してくるのだ。『竜少女の真実を知りたいんです。』とか『竜少女のお子さんということで何か思うことはありますか?』とか『断固、竜少女を許すな!』とか『宅配便です。ハンコをお願いします。』だとかもううんざりだ。そうやって竜少女をネタとして記事を書こうとする人は大嫌いだし、私はそんな人達に何も話す気はない。

 たしかに私は竜少女の母親を持ち、そこら辺の家庭と比べて竜少女について詳しいのは事実だけど、それに寄ってたかって付け入るのはお門違い。

 それに、あのヨミさんだってもしかしたらそのために私にあんなことを聞いてきたに違いない。あー、もう私ったらなんでペラペラとあの子に話しちゃったんだろう。



 やめよ…今更後悔しても仕方ないし、諦めてゲームしよっと…



『ただ今緊急メンテナンス中です。』



…もう…なんでもいいや……おやすみ。





 ピンポーン。


 んあ?


 ピンポーン。


 ったく、うるさい。寝かせろ。


 ピンポーン。


 だぁぁぁ!うるさいなぁ!



 寝起きのだるい体を起こして玄関まで走る。その勢いのままドアを開けて…


「あーもうだから、話すことは何もないっていってるでしょ!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


 私の怒声に驚いてその場で尻餅をついて今にも泣きそうになっているのは記者でも悪徳勧誘でもなく、ヨミさんだった。


「な、なんであなたがここにいるのよ…」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


「……」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


「うん、こちらこそなんか…ごめん。」





 ひとまず壊れたラジカセのようにごめんなさいを連呼するヨミさんを家の中に案内して、お茶を出してあげた。しばらくすると大人しくなったけど、ヨミさんはずっと下を向いたままだった。


「えっと…今日はどうしてウチに?」


「……」


 ヨミさんは喋らない、それどころかまるで石像のように固まっているかのようだ。


「……ね?一体どうしたの?何か悩み事があるの?」


 下から覗きこむように優しく問いかけると、ヨミさんはコクンと一度だけ頷いた。どうやらとても言いづらい悩み事があるらしい。


「じゃあさ…ゆっくりでいいから話してみてよ。さっきのお詫びと言っちゃなんだけど、今はヨミさんの力になりたいからさ…」


「あ…ありがとう伊藤さん…」


 そのまま彼女は覚悟を決めたかのように私の方を向いた。そして、今まで我慢していたのを吐き出すように私に向かって声を出す。


「伊藤…いや、ルンちゃんって呼ばせてもらってもいいかな…?」


「え、ま、まぁいいけど…うん。」


「ありがとう。じゃあルンちゃん、実は…お願いがあるの。」


「うん…」


「今から私の秘密を教えるから、その…誰にも言わないでね…?」


 か細い声で更に上目遣いをしながらヨミさんはそう言ってきた。なんだろう…私が男だったらこれはキュンってなりそうだったけどあいにく私は女なのでそんなことはない。


「分かったよ。どんなことだったとしても他言はしないよ。」


「じゃあ、これ…見て…」


 そう言いながらヨミさんは頭にかぶっている大きめの帽子をゆっくりと脱ぎ始める。彼女の頭が露わになり、そして私は違和感に気づいた。


 えっ、うそ…でしょ!?



 今でも恥ずかしそうに下を向いている彼女。


 そう、夜見早苗の頭には角が生えていた。ただ、彼女の角はルンのと比べると明らかに短い。



 まるでその角は、根元付近で折れてしまったかのようだった。

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