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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
4/25

ep.3 嫌われ者


 昼休み。今朝コンビニで買った特保コーラと新作の菓子パン「カロリー気にしちゃイヤッパン」を食べていた。


「いやぁ、まさかパンに一目惚れするなんてね思ってもみなかったな。それにしてもこのパンのネーミングセンスは崩壊してるな…」


 昨日の結論から言うと、私の誕生日の『0701』で箱の鍵は開けることができた。が、中に入っていたのは封筒といくつかの書類のみで、封筒の中身は空。書類は全て英語で書かれており、解読しようとしたが私には不可能(そんな英語力ないし)。特にこれといって目に入るものは一つもないとあう結末に終わった。


「はぁ…結局新しい情報は手に入らずか…」


 実際のところ、かなり際どいところまで足を突っ込んできた私だがそれでも母に関する情報は、しがない高校生が手に入れられる情報など雀の涙だった。


 私が初めてあの部屋に入ったのは父死んでからしばらく経ったある日のことだ。

 今までなにも知らされてこなかった私は、竜少女がなんなのか、母はどうして帰らなくなったのか、ただただそれが知りたかった。そうして母の部屋で見つけたのが机の上にポツンと置いてあった古ぼけた日記だ。私はそれを読んで竜少女の真相についてある程度知ることができた。

 いかに竜少女が闇深い存在であるかも含めて…だが。



「ねぇ、ちょっと伊藤さん。今、よろしいかしら?」


「ん?あぁ、なにか御用?」


 私が過去の回想に浸りながらぼーっとしているところに唐突に話しかけてきたのはクラス委員でもありこの学校の生徒会長でもある桜木富子だ。無駄にでかい胸と無駄に長い長髪がトレードマークの桜木さんは、なにやら不満そうな顔で私を指差して指摘する。


「あなたのその角、人前では隠していただけないかしら。視界に入ると不愉快だと他の生徒から苦情も来ているのよ」


「あぁ、はいはい。じゃあタオル被るよ…これでいいでしょ」


「えぇ、あなたも大変でしょうけど私はみんなの意見を尊重する立場である以上こういう処置をせざるをえないのですわ。あなたもそれは理解していただけるのかしら?」


「わかった、わかったって。こんなんで生徒会長さんを恨んだりしないから」


「わかればよろしいのよ」


 そう言ってくるりとターンをしながら桜木さんは去っていく。


「ったく、めんどくさいなぁ…お嬢様は」


 対巨竜兵器を国から唯一認可を受けて開発、製造をおこなっている大企業桜木コーポレーション。打倒巨竜を掲げているだけあって社内も桜木家も竜に対するヘイトは他の家庭の比ではない。もはや竜とつくものは全て害悪だとか言いかねないレベルでやばい連中だ。そんな中で育った一人娘がまともであるはずもなく、こうして毎日のようになにかと絡んでくる。

 生徒会長がこんなことをしているようじゃこの学校もたかが知れるような気もするが、世間ではこれが常識なのである。竜は人類の敵、それはいつになっても揺るがない教えだ。


 かつて世界を巨竜から守ったとされる英雄「竜少女」。当時は世界中から賞賛されていた存在であったが、それはもう遠い過去の話である。

 人々はようやく取り戻した平和な世界を復興させようとしたが、被害状況は想像以上に深刻であり、大地は汚染され、森林は焼け野原に。川も湖も枯れ、自分達の生活していた街は跡形もなく消し飛んだ。到底傷ついた国家がそれらを完全に修復することはできず、多くの国々が合併することになった。それでも、一度ついた深い傷は簡単に癒えることはなく、人々は苦しい生活を余儀なくされ続けた。

 やがて、苦難に耐えられなくなった者たちはその苦しみから逃れようと不平不満を他人へと向けるようになる。

 大きく膨れ上がったそれはやがて争いを生み、世界は混沌と化す。


 そしてその矛先は、竜少女達にも向いてしまった。


「竜少女は巨竜たちと裏で繋がっているんじゃないか?あの力の源は一体どこから…」


「竜少女がいたから巨竜が現れるようになった。元々は竜少女のせいなんじゃないのか?」


「竜少女はいずれ巨竜になって襲ってくる」


 などの根も蓋もない噂が世界中に広がり、近年の竜少女達は次第に追い詰められるようになる。

 望まない形で竜少女となって命懸けで巨竜と戦い、多くの犠牲を出しながらもなんとか勝利した彼女らに対し、なんて仕打ちなんだろうか…バカバカしいにも程がある。竜少女達がいなければ今頃お前は死んでいたろうに。


「あのー、すみません。」


「何?」


「ひ、ひぃ!ごめんなさい。迷惑でしたか?」


「あ、ごめん、ちょっとイライラしてて…」


 咄嗟に謝るが、その子は小動物のように怯えた表情でこちらを見ていた。やってしまった、と私は頭を抱えつつも平常心を保ちつつ声をかけ直す。

 感情が表に出ちゃうのは私の悪い癖だな…


「本当にごめんね。ところで、何か私に用があったみたいだけど…」


「え、あ、あのっ用ってわけじゃないっていうかその…えと…」


 かなり動揺させてしまったのか…マジで申し訳ないな…


「うん、別にゆっくりでいいから落ち着いてね」


「あ…はい。ごめんなさい。その、伊藤さんって…」


「うん。」


「伊藤さんって竜少女なんですか?」


「え!今更!?」


 私はあまりの意外な質問にまたしても強く聞き返してしまった。

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