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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
18/25

ep.17 まもるもの

○ロ注意です!


 右へ左へ、上へ下へ。幾度と繰り返す方向転換によってルンは平衡感覚を失いつつあった。

 上からは空一面にその巨体を見せつける巨竜の息吹が、下からはそれらを倒さんとする砲弾がぶつかり合い、空と地の間に大規模な戦線を作り出していた。その地獄のような場所でルンは早苗を抱えながら逃げまわっていた。



「る….ルンちゃん…私、もうダメかも…」


「早苗!諦めないで。こっちだって今必死なんだから!」


「でも、もう…無理だよ…」


「ダメよ!絶対にダメよ?」


「ルンちゃん…ごめん…」


「さなえぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ルンが必死の思いで叫ぶも、早苗が耐えきれることはなかった。早苗の方も決して妥協したのではなく、最後の最後まで死ぬ気で頑張った。だか、ダメだったのだ。

 早苗の口から液体が吹き出し、宙を舞っていく。

 彼女の物だったものが彼女の中から出て行く。

 たまらずルンは叫んだ。




「早苗……臭いよ…」


「ルンちゃん…そういうのはあまり言って欲しくは…オエッ」



 フレンチトースト、牛乳、バナナ。早苗の食べた朝ごはんだったモノは還元されて大空を羽ばたいた。見た目は全く還元されてはいないのだが。

 ルンは早苗が我慢できないのを分かっていたのか、あらかじめ早苗の顔を下の方に向けておいたのだ。形的にはうつ伏せ状態のお姫様だっこである。

 そのせいで早苗の吐き気が促進されたとと言えなくはない。


「まぁもう出しちゃったんだから諦めなさい。幸いここは空の上だし誰も見てないわよ。」


「うん…そうだね。ありがとう、ルンちゃん」


「下の人は悲惨だけどね。」


「うわぁぁぁぁぁん!!」


 さりげなく早苗をいじるのが少し楽しくなってきたルンである。だが、未だ変わらず上下からの戦火は降り注いでいた。


「それにしても大きいわね…あんなものをこんなチンケな砲弾で倒せるのかしら。」


「対巨竜兵器なんだから、効くように設計されてるんじゃないかな?」


「それにしてはあいつピンピンしてるけど?」


「うーん、確かに。でもルンちゃ…」


「ん?どうした、早苗?」


「ルンちゃん!こっちに竜達がきてる!」


「え!?」


 慌てて後ろを振り返ると、早苗が目を細めながら見つめる先。少なくとも一般自動車サイズ、学校を襲った竜のひとまわり小さい竜が数匹の群れをなしてこちらにまっすぐ向かってきていた。飛ぶ速度も速いのか、ぐんぐんと距離を縮めてきている。


「まずいわね。私もまだ慣れたてだからあいつら相手に飛び回るのはきついわ。」


「うわっ、どんどん近づいてる!どうするの?ルンちゃん!」


「早苗、ちょっとフワッとするかもだけどまぁ頑張ってね?」


「えっルンちゃんちょっとま」


 ルンはそう言いながら早苗にニコッと笑顔を見せる。そして早苗もその笑顔の意味を数秒遅れて理解したが、その頃にはすでに彼女の内臓は無重力状態にあった。

 フリーフォールなんて甘いものではない。地上2千メートルからの垂直降下だ。早苗は元から絶叫マシンの類いは苦手だったが、その数十倍の恐怖に耐えきれず失神してしまった。

 そんなに急速に高度を下げなくてもよかったのではと思えるが、ルンの判断は正しかった。ルンの後方にいた小さめの竜が一斉に炎の息吹を吐いていたからだ。その速度は竜の飛行速度を軽く上回り、あっという間にルンのいた場所まで到達していた。ルンがあのタイミングで高度を下げなければ今頃二人は火だるまになっていたことだろう。

 ちなみに、ルンはそのことを予感していたわけではなく、半ば早苗いじりの最中だったのだがその遊び心が功を成した。


「あ、危なかった…早苗に助けられたわね。」


 深く深呼吸をして心を落ち着かせる。死と隣り合わせの戦線で遊ぶなんぞあの世行きであることを自覚しながらもう一度考える。すでに高度は高層ビル程度の高さであるが、竜達も負けじと空から降りてきている。このままでは追いつかれて焼肉にされかねないし、かと言ってまた上を目指したところで状況は変わらない。


 ルンはしばらく考えたが、結局「今の私って下からパンツ丸見えじゃないの!」と気付いて慌てて股を抑える始末だ。


「マズイわ、私ってテンパるとこんなにダメだったかしら?」


 普段からテンパる程のプレッシャーを受けない生活をしているためにルンには耐性がない。そしていざそういう状況になるとパニックになってしまうものだ。


「下に降りる?いや、下はすでに竜達でいっぱいだろうしダメだ。近くのビルにこもる?あいつらは壁破壊して入ってくるんだぞ?芋ったところで時間の問題だわ。じゃあどうすれば…」


 焦りながらふと、自分が抱えている気絶中の早苗の顔を見る。すると、頭の中のモヤモヤが一気に晴れた。迷いなど最初からなかったようにルンは即座に動き出していた。



 そうだ。私は何があっても早苗を守らなきゃダメなんだ。隠れたり、逃げたりしたところで奴らは追ってくる。 私は大丈夫かもしれないが早苗は今は普通の角が生えた女子高生だ。あいつらの攻撃にを受けたらひとたまりもないだろう。

 だから私が守らなきゃ、早苗は私の…



 

 そして、ルンは高度をさらに下げ一面に広がる樹海へと向かった。

なんとか毎日更新していきたいのですが、なかなか進まないのが辛いです。

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