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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
16/25

ep.15 デルタ9の少女達

ep.15


 第一次巨竜対戦の頃の話であるが、かつて己の友を守るために戦ったとある竜少女がいた。例えそれが自分の生を捧げることになったとしても戦った。その目から光が消えるまで戦い続けた。

 彼女は世界を守りたいなどと思っていなかったし、英雄になりたいというわけでもなかった。単純に目の前から大切なものが失われていくのが怖く、恐ろしかったのだ。そして、彼女は最後の最後で弾けてしまった。



 自分にはもったいない程の眩しい存在。ようやく手に入れた輝きを闇が覆い尽くし、引き離した。それが許せなかった。

 この苦しみから逃れられるのなら。

 この辛い日々を終わらせることができるのなら。

 この恨みを晴らすことができるのならば。


 私はどんなことでもしよう。悪魔に魂を売ろうが関係ない。


 あの娘達がいない世界などどうでもよかったのだ。




 そこからしばらく、彼女の記憶は存在しない。気がつけば静寂の支配する空の上でひとりぼっちになっていた。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



 ヒュゥン!!!


「うわっ!」

「きゃぁ!」



 空を舞う竜少女となったルンと相変わらずのお姫様抱っこで担がれる早苗。2人のすぐ頭上をとてつもない速さで何かが通り過ぎた。


「くそっ!私たちを狙ってどーすんだ!」


「ルンちゃん、もっと高度下げて!」


 早苗の言葉を聞いてルンはすぐさま急降下する。ほぼ垂直落下したことによって臓物が浮くような感覚が全身を襲い、それによって早苗が悲鳴をあげる。


「る、ルンちゃん!死ぬかと思ったよ。もう!」


「えっ、いやだって急だったし、仕方ないじゃん…」


 ポカポカと理不尽な拳を受けるルンであったが、泣き出しそうな顔で訴える早苗を見ると何故か罪悪感が出てきた。そもそもの原因は彼女ではないのだが。


「ところでさっきのは…銃弾?」


「うん…正確には砲弾、かな。かなり大きかった気がする」


「砲弾って…そんなんどこから…」


「多分あそこじゃないかな…」


 そう言いながら早苗が目を凝らしつつ指をさした。ルンもその方向に向かって目を向けると、遥か先の山肌付近。名も知らないただの山の中腹あたりから何度も光が上空に向かって上がっているのが見えた。しかしよく周りを見渡すと、そこからだけではなく至る所から同じような光の線が空の一点に向かって撃ち上げられているのに気がつく。

 ここからは見ると豆粒のような大きさの砲塔が狙う先は無論想像できた。


「ルンちゃん!上見て!」


 早苗のいわれるまま上を見ると、それは雲よりも高い場所より少しずつ姿を見せ始めていた。


「……巨竜だそれも特大に大きい」


 空に天井ができたかのようにあまりにも大きすぎる巨体を見せつけ、地上にいる者をその圧倒的な存在感で威圧する。ある者は呆然と頭上を見て立ち尽くし、ある者は恐怖で脚がすくんでその場にヘタリ込む。

 そして空の上にいる二人も例外ではない。鳥肌が立ち、冷や汗を流しながらもただ眺めることしかできない。

 生まれて初めて感じる感情である「死の恐怖」だった。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



 一方、同時刻の少し離れた名古屋上空では巨竜とは別の騒動が起きていた。

 巨竜発生により鳴り止まぬ緊急回線に訴えかける人々は口を揃えてこう言うのだ。


『島が飛んでいる』


 事実、それは正しくもあり間違ってもいる。正確には島のようなモノであったが。


 その全長は最大約700メートル。ピラミッドを逆さまにしたような逆正四角錐で、上面には小さめの都市のようなものが形成され、それらを囲うようにひとまわり大きめのリングが二本鋭角に交わっている。リングによって展開されるシールドが球状に覆い、内側を保護していた。


 現代の技術では到底実現不可能な空飛ぶ都市、その実態は巨竜を駆逐するためにあちら側から送られてきた都市型防衛施設であり、竜少女候補生の養成所も兼ねている。内部にはおおよそ数千人の人々が地上と同じように暮らしており、世界で唯一の竜少女をメインとして作られた対巨竜組織だ。

 機構も内部構造も何もかもが極秘にされており、世界中のどこの国もその内情を把握していないために完全に独立した組織であった。

 その組織の名は一般的にDGと呼ばれており、竜少女が由来の名前である。


 目撃者から島呼ばわりされた防衛施設はそのまま一直線に首都上空を目指して飛行する。どういう原理で浮いているのかも明かされていないがそこそこの速度は出るようで、1時間程で目的地へと到着した。

 目的とは無論、突如出現した巨竜のことだ。


 そして、肉眼でもハッキリと確認できる位置まで近づくと中から3つの光が飛び出し、高速で巨竜の元へと向かっていく。



「アイリさん、ドロシーさん、準備はよろしいですか?私達で協力してあの竜達を倒しますよ!」


「あぁ、大丈夫さレイカ!どっかのアホがヘマしなきゃ朝飯前よ!」


「今は夕方だし、そっちこそ呆気なく落ちて恥をかかないようにして欲しいわ?」


「2人とも本当に仲がよろしいのね。」


「「どこが!?」」



 話しつつもデルタを形成しながら飛ぶ竜少女達。


 彼女達こそ、竜少女の中でも最も能力が高いとされるデルタ9部隊の3人であった。

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