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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
13/25

ep.12 親友のため


 痛い…ものすごく痛い。やっぱり勢いで飛び降りたりせずに少しでも衝撃を和らげるようにバルコニーにぶら下がってから降りるべきだったか…


 早苗からの救助要請を聞いた私は元いた2階の教室からパルクールのごとく飛び降りて着地と同時に前回りをして足腰への負担を軽くした…つもりだったのだが結局のところ痛いだけだった。むしろ余計な動作をしたことによって身体中にある擦り傷を更に悪化させてしまったようでさっきと同様うずくまっている。


 痛い…けど行かなきゃ。早苗が私の助けを求めてるのだから!


 痛い足に鞭を打って立ち上がり、ヨタヨタとふらつきながらも歩みを進める。すでに制服はあちらこちらで血が滲んでおり、それらが傷口と擦れてんとても痛い。

 ある程度痛みに慣れてきたところでふと思うことがある。


 早苗って今どこにいるん?


 …………私としたことがなんとまぁ馬鹿だったのか、早苗の居場所すら聞かずに飛び降りて無様に傷を増やすなんて。冷静になって考えればなおさら馬鹿だった。でもしょうがないじゃない!早苗がたすけてっていってるんだもの、行くしかないでしょ?


 自分の中で言い訳をしつつ、早苗に返信する。

 するとすぐさま早苗から返ってきた。


『昇降口の近くの女子トイレです。今、外にり』


 返信が来たのは嬉しいのだけど、うーん…外にり?なんだろうか、間違えて送信してしまったのかと思って待ってみたり、返信したりしたがそれ以降早苗から送られてくることはなかった。

 とにかく居場所は分かったので早速向かうことにする。

 私は不自然な歩き方だが自分の今出せる最高の速さで倉庫に向かった。




〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



 突然の大きな音がしたと思ったら、さっきまで私たちのいた校長室の床が落ちていて天井までなくなっていました。

 なんとか私は落ちずには済んだのですが、ルンちゃんはどうやら落ちてしまったようでとても心配です。

 そのあと、スタンガンによって体を一切動かすことの出来なかった私は、黒服の人の肩に担がれてそのまま運ばれていました。このまま何処かへ連れて行かれるのかと思っていたのですが、昇降口辺りで黒服の人は仲間らしき人と合流するとなにやら2人で話し合った後、何故か私をその場に置いてどこかへ行ってしまいました。

 しばらくしてようやく歩けるくらいには体が回復してきたので、とりあえず校舎に戻ってルナちゃんに会いに行こうとした時、校舎の中から何人もの悲鳴と同時にお大勢の生徒が一目散に校門に向かって逃げているのが見えました。

 驚いた私はしばらくその場に呆然と立って、恐怖から逃れようと必死に走る彼らを見ていることしかできませんでしたが、その彼らを追いかける存在に気付いた時、私もすぐに彼らと同じようにすくむ足で走りだしていました。


 私が見たのは竜。鋭い爪と牙を持ち全身は硬い鱗で覆われ背中には大きな翼、さらに先に針のような棘がある長い尻尾。体長は10メートル以上もあり、大きさで例えればバスを2台縦に重ねたような巨体が逃げる生徒達を低空で飛びながら追いかけ回していたのです。

 逃げ遅れた人が呆気なくその竜の口によって噛み砕かれていく光景は肉食動物が草食動物を追いかけ、捕まえ、食らいつく。まさに弱肉強食という自然界の掟を表していました。

 校門の近くはすでに何体もの竜が集まって、逃げようとする生徒を捕食するための絶好の餌場となっていたので、竜達に見つからないように校舎の中に戻ってひとまず最寄りの女子トイレの個室に篭りました。


 ブルブルと小刻みに震える足を使って便座に座り込むと突然目から涙が止まらなくなって、とても怖くなりました。それは、生まれて初めて感じた「死」への恐怖でした。


 ふと、自身のポケットに重みがあるのを感じた私はその正体を知ってとてつもない安心感を得ました。取り憑かれたようにそれを取り出してルナちゃんに連絡を取ろうとしたその時です。


 女子トイレの窓の外から聞こえるおおよそ人のものとは言えない荒い鼻息が近づいてきていました。


 すぐに息を殺して壁にへばりつき、その存在に耳をすませました。大きな足音や動物のような呼吸音から恐らく先程見たような竜でしょう。

 私はまたしても全身が震えだし、力が抜けてその場に座り込んでしまいました。すると、右手に握りしめている携帯電話の存在感がやけに大きく感じます。


 そうだ…これで助けを呼べば……


 ですが、警察に連絡しようにも電話で話せば声によって竜にばれてしまいます。それに警察が来たとして竜相手にどう対応するのでしょうか。

 

 そこで考えた挙句思い浮かんだのはルンちゃんでした。もちろん今思えばこれは1番してはいけないことでした。

 仮にルンちゃんが助けに来たとして、普通の女の子が竜の相手に何ができたでしょうか。いや、むしろルンちゃんが竜に襲われていたかもしれません。それなのに私はルンちゃんに助けを求めてしまいました。それほどに私はただ怖かったのです。それほどに私はルンちゃんに会いたかったのです。むしろ、ルンちゃんに会えずに死ぬことが1番怖いことだったのかもしれません。


 恥ずかしながら私はそこまでルンちゃんに依存していたのかと後々自覚させられました。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



 うちの学校は古いせいか、昇降口前には女子トイレしか存在しない。代わりに2階と4階には男子トイレしかないのだが、すなわちこれらの階に教室がある女子生徒はわざわざ3階かここのトイレまで行かなければならずとても面倒くさい。高校入試などで試験を受けている受験生はこの構造に毎年混乱されられるのだ。古いのだから改装くらいしたいいかと思うが、うちは公立なのでそう簡単ではないらしい。

 で、痛い足を引きずりながら早苗がいるというトイレに来たのだが


 トイレはどこいった…


 そう、あるはずのトイレがないのだ。もちろんそこだけ空間が消えたわけではなく、ボロボロに壊されていて跡形もない状態なのだ。

 トイレの入り口から向かって突き当たりの壁が円を描くように穴が空いていて、まるで何か大きなものが通ったかのように手洗い場付近まで破片が散らばっている。そして、その先にはまたしても大きな穴。その穴は隣の教室の壁を貫通して、窓も大きく破壊されていることからそのまま何かは外に出ていったように思えた。

 私はとにかく早苗が近くにいないか探したのだが、トイレにも教室にも彼女の姿はなかった。


 外へ逃げたのか…?とりあえずケータイで連絡を…


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 突然の悲鳴がすぐ近くで聞こえる。その声の主はやはり早苗であった。

 私は飛び込むように窓から外へ出て、声の元へと走る。割れたガラスによって手や足を切ってしまったようだがそんなのはどうでもいい、今は早苗だ。

 声は体育館の方からしたので恐らく中にいるのだろう。外から周り、体育館特有の重い金属製のドアを開けて中に入る。すると、そこには目を疑う光景が広がっていた。




 そして、気が付いた時には私はどこか知らない空の上にいた。



どうでもいいですけど、新潟仕込みの塩煎餅めっちゃうまい。

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