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竜少女〜Dragon Girls〜  作者: ピルルピピ
第1部
10/25

ep.9 理不尽


「君たちは今日をもって、この学校を退学となる。」


 告げられたのはその一言だけだが、私達を絶望の底に突き落とすには十分過ぎた。


「そんなっ!」

「えっ…」

「……」


 それぞれが別々の反応をする中、後ろのドアから入ってきた黒服達は座っている私達のそばまで歩いてきて肩を抑えてきた。


「校長!そんな理不尽な事は納得いきません。それにこの人たちは…」


 校長はため息をついた後、私の言葉を遮るように話し始める。


「君たち、昨日の夜の事件は知っているかね?」


「昨日の事件?」


 なんだろう、昨日の夜は早苗ちゃんと一緒にゲームしていたからニュースとかは見ていない。隣に座る小林さんも同じく知らないようだ。


「そうか、知らないようなら教えてあげよう。先日、DGの養成施設から候補生が数人逃亡したのだ。」


「竜少女が!?」


「うむ。」


 なんてことだ、昨日の夜にそんなことがあったなんて…


 DGとはドラゴンガールズの略称であり、どこの国にも属さない独自の機関のことだ。その役割はその名の通り竜少女関連全般であり、基本的に現存の竜少女は全員DGに所属する決まりとなっている。そして、DG養成施設とはその竜少女を育成するための施設である。

 主に竜少女としての経験が浅いものや、竜少女ではないが角が生えていることが原因で普通の生活を送ることができなくなってしまった人など様々な人々が施設に入っている。

 ただし、独自の機関だけあってDGには多くの厳しい規則があるのだ。

 例えば今回の逃亡事件なんかもそうで、一度DGに所属した者は無断で施設内から出ることはできない。よって、昨晩DGの養成施設から抜け出した数人は規則違反として捕縛対象となってしまう。


「しかも、脱走したグループは捕まえようとした警備員2人に重傷を負わせた挙句、施設内のホバーを強奪した後に操作を誤って地面に激突。近くにいた一般民を数名巻き込んで全員死亡したとのことだ。」


 ……ひどいな、ここまでひどい事件は今までになかったんじゃないか?

 施設からの脱走による規則違反、警備員に与えた暴行、そしホバー(宙に浮く車)の盗難、最終的には住民を巻き込んで死亡…おそらく今頃メディアはこの事件につきっきりだろうな。

 

 校長は変わらず困惑の表情を浮かべる私達の様子を見てそれだけではない、と話を続ける。


「これらの事件によって、反竜少女派の人たちが朝から各地で抗議が始まっている。それにネットは炎上。DGや竜少女を非難する声が多数あがっている状態だ。我が校にも朝から苦情の電話が鳴り止まなくてね…」


「何故、学校に苦情の電話がきてるのですか?竜少女とは一切関係ないですよね?」


 ようやく平然を保てるようになったのか、私の左隣にいる早苗ちゃんが尋ねる。


 だが、またしても校長はため息をついてから無表情で返答する。


「君らだよ…」


「え?」


「原因は君らなんだ。」


「私…たち?」


「そう、竜少女のはしくれともあろう君たちがこの学校に通っていることに関して親達から問いかけや苦情の電話なのだよ。」

 

「え…えぇ!?ちょっと待ってください。確かに私達には角が生えていますが、決して竜少女などでは…」


「だが、世間ではそんな屁理屈は聞かないのだ。しょうがないさ、みんな自分の子が大事なんだ。少しでも不安要素は排除しておきたいん…」


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 窓ガラスを割らんとするような大声。校長を除く全員が一斉に耳を塞いで耐えるしかないそんな声を出したのは私の隣に座っていた小林という不良だった。彼女が勢いよく立ち上がったせいで椅子は後ろへ吹っ飛んだのち、黒服の脛に直撃する。

 弁慶の泣き所をおさえて悶絶している黒服を気にも留めないで彼女は校長に詰め寄った。


「おい、校長てめぇぶっ殺してやる!」


「小林やめろ!!」


 彼女の振り上げた腕を黒服と担任の赤石先生の3人がかりで止め、床に抑えつける。 だが、それだけではおさまらない怒りによって暴れに暴れ、黒服のひとりの鼻を肘で破壊する。


「おい!落ち着け小林。」


「落ち着けるかぁ!!このクソ野郎は私たちを売ったんだろ?そんなやつに黙ってはいわかりましたって納得できるかぁ!!」


「チッ拉致があかねぇ。おい、黙らせるぞ。」


 そう言いながら私の後ろにいた黒服は内側胸ポケットからスタンガンを取り出し、未だ獣のごとく喚き叫ぶ小林に食らわせた。


「あっ…がっ……くそぅ…お前ら全員………」


 痙攣して全身を硬直させながらそのまま彼女は静かになった。黒服達はため息をつきながら汗をぬぐい、赤石先生はそんな黒服に謝罪をしている。だが、私たち2人はその光景をただ唖然と見るしかなかった。


 これは何か悪い夢なのではないか?こんなこと現実にあっていいことじゃない。

 そんな微かな希望は校長の一言により崩れ去る。


「それでは、お願いします。この3人を連れて行ってください。」


 刹那、校長の背後の窓に見える外の景色は真っ白な閃光に覆われた。

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