消しゴム
消しゴム。それは、文字を消す為の道具。
消しゴム。それは、消す度に削れて消えていく運命。
消しゴム。
そう名づけられた私は、産まれてもうすぐ二ヶ月になろうとしている。
私の主人は、佐藤勝輝小学校四年生の一〇歳。
どこにでも居そうな小学生で、元気過ぎるくらいよく動く。
そのせいか、授業中はよく私を使う。
否、弄る。
今日も、然りだ。
一時間目、国語。
私を何気に見た主人は、何を考えてか鉛筆の芯を突き刺す。
痛いんです、止めてください。
二時間目、算数。
本日二度目の突き刺しをくらう。
だから、痛いんですって。
三時間目、音楽。
何故か、丸くなった私の頭を眺めている。
恥かしいので、あまり見ないで下さい。
四時間目、体育。
主人は体育館へ行ったので、私は暫しの休憩。
この一時が、私の安堵の時間。お茶にしたいくらいですね。
給食時間。
何時私を取り出すのか、ヒヤヒヤしながら、主人が食べる音を聞いております。
お願いですから、このままにしておいて下さい。
お昼休み。
主人、私を取り出すと、机の端っこに置いてしまいました。何をするかと思いきや、指で弾かれまして、主人のお友達の消しゴムさんにぶつけられました。
主人のお友達の消しゴムさんと、二個で痛いと泣いてしまいました。
五時間目、社会。
主人、余程暇だったのでしょう。私からカバーを外すと、私の端を両手で持って…。
千切らないで下さい! 千切ったら貴方、余計小さくなるじゃありませんか。痛いんですよ! 痛いから。
あ、あ、あ、あー!!! 千切った。半分になったじゃないですか! 半分にしたら、使い辛いとか貴方言っていたでしょう! どうするんですか! って、削りだした…。
ああああ、丸く削ってどうするんですか! 小さいボールみたいにして、駄目でしょう私はそんな使い方じゃないんですよ。
あ、飛ばした…。酷い…。
確かに、私は消えゆく運命ですけど、態々削らないで下さい。お願いですよぅ…。