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旧 月光のサルヴァトーレ  作者: 天宮 悠
3章:平和を望む破壊者
100/106

04

「リーシャさん!?」

 そう叫ぶと、レオンは迫る女を気にもとめずに横で倒れたリーシャの身を起こした。

 腕にずしりと彼女の重みを感じる。もはや自身を支える力すらもなく、脱力した彼女は微かに呼吸をするだけ。

 まるで水でも浴びせられたかのように全身は汗で濡れそぼり、呻き声を漏らしはするがそれもほとんど無意識でのものなのだろう、レオンの呼びかけにリーシャが応える様子はない。

「手負いで私に挑もうなどと、舐められたものだな」

 はっとして、レオンは腕にリーシャを抱いたまま顔を女に向ける。

 突然のことで意識から完全に抜け落ちていた。まだ女という脅威は去ったわけではないのだ。貴重な戦力のリーシャを失い、果たしてレオンの力でどれだけ凌ぎきれるだろうか。

 レオンは視線だけを背後に回し退路を確認。見通しもそれどほど悪くなく、遮蔽物の少ない道をリーシャを背負いながら逃げるのはほぼ不可能に近い。加え、左右は崖と人も立ち入れぬ樹海。とすれば後は、眼前の脅威を払い前に進む他ない。

「僕は……僕は!」

 そっとリーシャを、なるべく汚れの少ない地面に横たわせる。代わりにレオンが握ったのは、拳銃のグリップだ。

 自らを奮い立たせるように声を出し、弾丸を装填する。逃げる訳にはいかない。戦えるのは自分だけ。仲間に支えられてばかりでは、何も変わらない。強くなるためには、自分から前に進まなければいけないのだから。

「僕はみんなを守りたい……だから!」

 レオン一人で世界を変えられる。そんなことは思っていない。だが、もしレオンの行いが一人でも多くの命を救えるなら。いや――そうでなくては困るのだ。レオンがレーベン帝国皇帝を前に誓ったのは、この戦争を収めること、そしてたとえ一時の間でも仲間と呼んでくれた『彼女』を連れ戻すこと。

 もはや抵抗するだけの力すらも失われつつあるレーベン帝国にとって、レオンは唯一の希望と言ってもいい。だというのに、レオンは自分の無力さに嘆くばかり。もう、そんな甘えが許される局面はとうに過ぎているというのに。

 だから――ここから先はもう、レオンはただの新兵ではなく、仲間と帝国の希望を背負う一人の兵士として。

「死ねないんだ……こんなところで。死なせたくないんだ……誰も!」

 その時だった。胸の内で何かが弾けるように破裂して。

 血が沸騰したように熱い。呼吸は乱れ、筋肉が強張り、頭を手でかき回されているかのような激しい頭痛がレオンを襲う。

 これは前にも感じた感覚。ゆえに、レオンはその破壊衝動を全身全霊を込めて否定する。

「っく――こんな、時に」

 この力に頼れば、女を屠ることも容易いだろう。だが、これはそれだけで済んでくれるほど便利な力ではないのだ。一度枷が外れてしまえば、傍にいるリーシャに危害が及んでしまうことは明白。

 レオンが望むのは力だ。だがそれは、この力ではない。これだけは、絶対に使うことはが許されるものではないのだから。

 だがレオンの意思など知った事かと少しずつ力は意識を侵食し、蒼海の輝きを放つ瞳は血で染まったように深い真紅の色に塗りつぶされていく。

 ――そして、それに狼狽したのはレオンだけではなく、女も同様だった。

 それは過去に見た絶望の色。血肉と死体だけが転がる戦場で見た死を撒き散らすだけの悪鬼。

「なっ!? 馬鹿な、そんな、お前は……こんな早期に、ありえん、こんなことがあってたまるか。だとしたらあいつらは何のために命を賭してまで――」

 しかし女はレオンとは違った。その顔に浮かんだ絶望は一転して激しい怒りに変貌を遂げ、それまでの仮面を被っているかのように感情の読めぬ表情が嘘のように、憎悪と怒りのみに支配された瞳でレオンを見据える。

「だがまあいい……ならばまた殺してやるだけのこと。一片も残さず消え去るがいいさ」

 警戒し距離を取る女が振り上げたのは紺と赤の双刃。それの柄の連結部同士を繋ぎ合わせ、二振りの剣は上下に刃が伸びる両刃剣へと姿を変える。

 おそらくあれは、銃が兵士の主力になってから廃れてしまった対魔物戦を想定した傭兵や一部の騎士が用いた可変式の武器の一つ。

 だが、あの双刃に秘められた力はそれだけではなかった。両刃剣と化した剣は刃の部分が僅かに女の側へ傾くと、それぞれの切っ先を結ぶように一本の光る糸で繋がった。派手すぎるほどの外観だが、あの形状は弓に酷似していて。それが正答だと言わんばかりに女は腰の矢筒から石杭を一本取り出すと、光る弦にそれをつがえた。

 瞬間、石杭は燃え盛る炎に包まれ、火焔の渦が螺旋を描く巨大な矢へと姿を変える。

 矢の大きさは、女の身長を優に超えている。神代には悪しき竜を狩る神の矢が存在していたと言われているが、もしそれが実在するならばあのような代物だったのだろうか。

「お前のような存在は世界には不要なんだよ。だからここで――死ね」

 炎の矢はレオンの距離からでも肌が焼かれるような強烈な熱気を伴い橙色の輝きを放つ。あれが女の手から離れれば、おそらくはレオンごと周囲を消し炭にしてくれることだろう。

 だが、自分だけは死にはしない。そう、レオンの中の何かがそう確信めいた言葉を訴えてくる。あの女の思惑が果たされることはない。あの程度で殺され殺されることなどはないと。覚醒者の力がそうさせるのか、もはや意識の消えかかったレオンにそれを考えるだけの余裕はない。

 ならばこそ、ここでレオンが覚醒するわけにはいかないのだ。

 この距離ではリーシャまで矢の炎に焼かれてしまう。そしてレオンは際限なく破壊の限りを尽くす覚醒者へと変貌し、目の前の女を、そしてありとあらゆる者の死によって世の平穏をもたらすことだろう。

 だから――

「うる、さい……僕は、僕だ!」

 その行動は、半ば自棄だった。

 レオンは右手に握った拳銃、その銃口を自らの太腿に向け引き金を引いた。

 それで覚醒者の力が止まる保証などはない。むしろ、生命の危機から逆に覚醒を促す結果になるかもしれない。だがどうせ遅かれ早かれそうなってしまうのなら、自分の内で暴れ狂う力へのせめてもの抵抗として。

 それだけでは最善の策とはいい難く、状況を好転させるほどの行動にはなり得なかった。

 だから、きっとこれはレオンの運が良かっただけ。あるいは、一時の間でもそう呼び合った友に助けられたと言うべきだろうか。

「僕は、絶対に覚醒者、なんかには……リーシャさん、トーリャさ……僕、は」

 失血と蝕まれる精神によって薄れ行く意識の中、レオンは掠れた声で呟く。それを聞く者はただ一人、敵として相見えた女だけ。

 だが彼女だったからこそ。レオンの何気ない呟き。そこに意味を見出したのだろう。





「……どうしたものか」

 右の手は炎の螺旋を描く矢をつがえ、その鏃はいまだに灰の髪を持つ少年に狙いを定めている。

 八十の時を経て、自分でも気づかない内にかつての刀剣の如き鋭さが失われなまくらにでも成り果てたのかと落胆のため息すらついてしまうほどに、先程まで内を焦がしていた炎は、しかし少年の一言で冷水をかけられたかのように鎮火していた。

 トーリャ。懐かしい名前に、つい過去の記憶が脳裏に浮かぶ。かつて肩を並べて戦場を歩いた友であり、あの五人の中で最も強かった黒髪の魔法使い。それゆえ彼の決戦において、当時まだ十四だった彼女は横槍を入れんとする万の軍勢を相手に単身でそれを押し留め、残る四人のために覚醒者との決戦の舞台を整えてくれた影の英雄。

 だが彼女――アナトリア・リーヴァは仲間が覚醒者と相打ちになったという結末を知り、英雄達の弔いを済まるせるとそこで初めて涙を見せ、それを最後に彼女は姿を消した。不死の加護を受けた身、加え寡黙で尚且つ他者との交わりを頑なに拒んだ少女だけあって、おそらくそこで人との交流自体を断ったのであろう、結局それ以来彼女の消息を追うことはついに叶わなかったのだが。

 そんなアナトリアを、しかも愛称で呼ぶほどの仲となればもしや――

 無論、別人である可能性も否定はできない。むしろそう考えるのが妥当だろう。しかし少年の力は紛れもなく覚醒者のもの。それと友の名が無関係であるとも思えず。

 そしてこの少年もまた、覚醒者の力に抗うような素振りすら見せた。単なる破壊者ではないのだと、そうありたくはないと訴えるように。

「やれやれだ、甘くなったな私も」

 自嘲するような女の声を最後に、夕闇の森に輝く炎は煙のように掻き消えた。





 宙を飛んでいるかのような浮遊感。不思議な感覚に目を開くと、見惚れてしまいそうな星空に、その横では大きな墓石が二つ。

「ぁ……そっか、私」

 ふと、自分の身に起こった最後の記憶が甦る。

 剣を持った女を前に、しかし刃を交えることすらできず力尽きた無様な最後を。

 果たしてあの後どうなってしまったのか、レオンは無事なのだろうか。不安は尽きない。

 もしやそんな未練を残してしまったがゆえに、幽霊にでもなってしまったのかとリーシャは内心で焦りを感じていた。つまり視界に映る墓石はレオンが立てたリーシャの墓ということかと、そこでふと――

「って、私のお墓でかすぎぃ!?」

 誰に突っ込むでもなくリーシャは叫んだ。その勢いで上体を起こしてみたが、体を見る限りどうにも霊体になったような感じではなく、むしろ地面の上で寝ていただけのようにも思える。

 手の平からは土の感触がはっきりと感じ取れるし、足は長時間歩いたせいか少し疲労が残っているようだ。背中の傷口にはまだ違和感が残るが、妙な異物感は薬か何かを塗布されてのものか意識を失う前よりは大分痛みも和らいでいる。これはつまり、

「あれ……もしかして私、死んでない?」

 もう一度体の各所を手で触り確認。明らかに実体を伴いリーシャはここに存在している。

 ほっと胸を撫で下ろした矢先、ではレオンはどこかとリーシャは立ち上がって探そうとするも体は思うように力を発揮してくれず、やむなく視線を動かすだけでなんとか友の居場所を探ろうとする。

 すると、背後で突然、

「ああ、よかったリーシャさん。ずっと起きないから心配してたよ」

 ちょっと気が弱そうな、聞き慣れた優しい声。体がうまく動かず無理矢理首を後ろに回すと、そこには覚醒者ではなくレオンの、友の姿があった。

「あ、あ……よか、よかった……レオン」

「えええ!? ちょっと泣かないで! 僕は大丈夫だから! ね?」

 しかし、大丈夫だと言うわりにレオンは細い糸で何重にも巻かれ木の幹に縛り付けられている。誰がどう見ても拘束された状態なのは明白。

 ではそんなことをするのは誰か。と、そんなのは考えるまでもない。

 レオンの安否を確認し気の緩んでいた身を奮い立たせ、リーシャは周囲を注意深く観察する。

 しかし女の気配はない。ついでに神剣も無い。おまけに体が動かないとなれば、これはもうお手上げも同然だ。

「ごめん……もしかしなくてもピンチだったりする?」

「だったらもう死んでいてもおかしくないと思うけど……ううん、僕もよく分からないね。僕だけ縛られてるのも妙だし」

 言って、レオンは唯一自由な足を左右にゆらゆら動かして精一杯困った様子をアピールする。

 レオンは腕ごと体を糸で巻きつけられ、その状態で幹に背を預けるように座らせられ拘束されている。あれでは動けないし彼ではどうしようもないだろう。

 対してリーシャは拘束こそされていないが、怪我のせいか立つことすらままならない。どうやら逃亡という選択肢はないようだ。

 あとはもう、二人を捕らえた人物に命運を託すしかないわけだが――

「やっと起きたか。やれやれ、森の知識もなく、ゴブリンの腐毒の処置も知らず、大層な武器と大層な力だけ抱えてどこへ行くつもりだったんだお前達は」

 呆れ果てたような、落胆の意を込めたような声音。それが上方から発せられたことにいち早く気づいたリーシャは、視線を素早くそちらへ向ける。

 すると、先程まで気配すら無かったというのに、二つ並んだ墓標の左側、その頭頂で足を組んで座る女がリーシャを見下ろしているのが見えた。

「あんた……」

「ああ、これか? 悪いが今は預からせてもらうぞ」

 女の手には、リーシャの神剣が握られていた。あれが敵の手の内にある以上、もはやリーシャに残された反撃の道は断たれたも同然だ。

「なに、殺すかどうかはお前たちの答え次第だ。お前達はどうにも妙な縁があるようだしな。さて小僧、そこでだが、お前が先に呟いたトーリャという名前、それはアナトリア・リーヴァのことで間違いないか?」

「なっ!? あんたトーリャと何の関係があんの! トーリャにまで手を出すんなら容赦しないわよ!」

 激昂したようにリーシャは叫び、それが同時に肯定を示していると読んだ女は安堵とともに嘆息し、聞き分けのない子供を目の当たりにしたかのように両手を広げて半目で見据える。

「まったく、私はあいつに聞いたんだが、まあいい。それだけ君達がトーリャを思ってくれるなら私も気楽に話ができる」

 一瞬だが僅かに表情を綻ばせ、女は墓石から飛び降りると神剣を地面に突き刺し、リーシャの傍らに歩み寄るとそっと体を抱いて床に寝かせる。

 触るなと手で女を跳ね除けようと試みるも、思ったより体の衰弱が激しいのか腕に力が入らず軽く女の体に触れるだけに終わり、それが悔しくてリーシャは涙を浮かべながら唇を噛み締めた。

「薬草を塗り込んだがまだ傷は癒えていない、もう少し寝ていろ。君は……まあいいか。霞蜘蛛の糸は貴重品だ、壊されても困る」

 リーシャを楽な姿勢で横にして、女はレオンのところまで歩くと今度は彼の体に巻き付いた糸を解いていく。

 少なくとも敵意はないように見えるが、だからといって安心できる相手ではない。一度刃を向けてきた相手に、そう簡単に心を許してはならないのだ。

「あ、ありがとうございます。リーシャさんの傷も、治療してくれて」

「感謝するのはまだ早い。君の返答次第で私はまた剣を抜くことにもなろうよ。だからな、何故覚醒者である君がこんな場所にいて、なぜトーリャが君達の側についているか……それを話してもらおうか」



 虚言を言ったところで、騙せるような嘘をさながら真実のように語るだけの口の上手さはレオンもリーシャも持ち合わせてはいなかった。

 実際に剣を向けられているわけではないにしろ、今レオン達は喉元に切っ先を突きつけられているのと同じ状態。すなわち、ここで互いに振るうのは剣ではなく言葉の刃ということになる。これから発する一言一句が、レオン達の命を繋ぎ止める剣となるわけだ。

 ならばレオンにも勝機はある。これまでの言動から、女はトーリャと何らかの関係がある人物と見ていい。であるならば、取り繕った虚言を並べて騙すより、レオン達の身に起こった全てを、そしてその意志を伝えることこそがこの戦いを勝利へと導く鍵となるはずだ。

 レオンは直感を信じて彼女に全てを話した。オスティアの起こした戦争、そして覚醒者として目覚め、だがその力を否定したレオン。リーシャとトーリャ二人との出会いに、アナトリアとの別れの話を。

 そして事の全てを話し終えたその時に、女が薄く口元に笑みを浮かべたのをレオンは見逃さなかった。

「なるほどな。事情は分かった。お前達の意思も」

「じゃあ、僕らを解放してくれますか?」

「ああ、それは構わん。だがな、小僧」

 和みかけた空気、だがそれは一瞬で掻き消され、代わりにレオンを射抜いたのは研ぎ澄まされた刃の如き鋭さのこもった視線。

「その程度の力で、まして覚醒者の力を封じてオスティアの軍を、そしてそれを統べる王を討つなどどは、今どきの子供とてそんな夢物語は語るまい。む……? いや、私が『今』を語るのは妙か。まあ、つまりはあれだ、お前達では無理だ、無謀だ、できるわけがない。死ぬ、絶対死ぬ」

「それは……」

 言いかけて、レオンは出かかった言葉をそのまま飲み込んだ。

 その通りだ。事実、もし女が矢を射っていればレオン達の旅はそこで終わっていた。いや、もしこの女性と出会っていなかったとしても、森の魔物に食い殺されていたかもしれない。

 ここを通れたとして、無事に目的を完遂できる確率は限りなく低いだろう。少なくとも、今のレオンでは。

「で、それを何とかするだけの策も無いのだろう? やると言うだけなら誰にでもできる。それを成そうというのなら相応の準備くらいはしてから始めるべきだろうよ。……まあ、聞くに帝国が今それだけの余裕を持っているとも思えんが…………やれやれ、これも何かの導きか」

 突然前髪をかきあげ、女が唸る。すると諦めたように深く息を吐いて、背にした墓標を見上げ女はレオン達に聞こえぬように何かを囁いた。

「分かった、いいだろう。私がお前達と共に行こう。この地を守護すると誓った身だが、一時の間ならヤツも許してくれるだろうよ。それに……オスティアの現状、一度この目で見届ける必要がありそうだしな」

 仕方なくといったようで、だがどこか決意のこもった口調で女は言い放つ。職人の手で研がれた剣のように鋭く、そしてどんな高潔な騎士よりも真っ直ぐな瞳がレオンを見据えた。

「いいん……ですか?」

「放っておくわけにも行くまい。トーリャの件がある手前、無視も出来んからな。なに、気負わずとも私なりにお前達と共に行くだけの理由はある、気にするな。というかお前ら、私を連れて行かないと死ぬぞ」

 強引な物言いに反論できず、レオンは苦笑するしかなかった。

 レオンからすれば、頼もしい味方が一行に加わろうとすることに対してそれをあえて拒絶する理由はない。それが、目標の一つであるトーリャとの再開に対して事を優位に運べるだけの要素を備えた人物であるのならば尚更だ。

 だからきっと、この時レオンの胸中に浮かんだ黒い感情は、強者の介入に自身の無力を助長させるのではないかという一抹の不安と劣等感がもたらしただけのもの。

 それを静かにしまいこんで、レオンは精一杯の笑顔を向ける。

「うん、その……ありがとうございます。えっと……」

「ああ、そういえば名乗っていなかったか。私はミリア、月影騎士団のミリアだ。まあ今となっては、元……だがな」

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