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金色の瞳  作者: 七篠 月
第一章 鬼となった少女
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人を守る鬼

 しかし、包丁が振り下ろされることはなく、黒い影が、沙紀と母の間に入った。その後、金属音がして、刀がきらりと光った。母の包丁は刀にはじかれたのだ。

 恐る恐る視線を上げると、きれいな金茶色の髪が見えた。そして、黒い軍服に刀。

 鬼だ。

栄輝えいき、逃がすな!!」

「あいよ!」

 逃げ出そうとした母を台所から出さないように、もう一人の軍服に身を包んだ鬼が入口をふさいだ。慌てふためく母に、金茶色の髪の鬼がものすごいスピードで近寄る。

「さあ、出ていけ。」

 そう、声をかけると、母の額に札を貼り付ける。すると、母の体から、ぶわっと、黒い影のようなモノが噴き出す。そして、母は倒れこんだ。

『オノレ、オニがあああ!!』

 母の体から噴き出した影には顔があり、雄たけびをあげながら憎悪の顔で彼らを見ている。

 これが『邪』。沙紀は『邪』を見たことが無かったが、直感的にそう思った。

『ワレノ食事を邪魔スルナーーーー!!』

 邪は怒りのまま、金茶色の髪の彼に襲い掛かる。

「ふん。」

 そう、彼が鼻で笑うと、影は彼の刀で両断された。すると、邪は真っ二つになりながら蒸発するかのように消えていった。

「おいおい。また、お前の手柄かよー。」

「しょうもないこと言ってないで、救急車を呼べ。あと、上にも報告しろ。」

「へいへい。」

 先ほどまでの戦慄とは裏腹に、緊張感のない会話が飛び交う。金茶色の髪の美男子に指示された黒髪のやんちゃそうな彼は、渋々、スマホを取り出し、電話をし始めた。一方、金茶色の髪の彼は、へたり込む沙紀の目の前にしゃがみ込んだ。

「大丈夫?」

「…はい。」

 心配かけまいとそう返事をして、顔をみると、至近距離に美しい顔があるものだから、一瞬のうちに、沙紀の顔の温度があがった。美しいアップに耐えかねて、顔をそらした。

「そう、よかった。」

 そんな沙紀の様子に気づかない彼は安心したように微笑んだ。

 顔をそらしたままの沙紀は、倒れたままお母を見つめた。

「あの、お母さんは?」

「ああ、気を失っているだけだから、大丈夫。救急車もくるしね。」

 彼の言葉に、沙紀は胸をなでおろす。

「え?俺たち以外には鬼はいませんが。」

 電話をしていた黒髪の彼の少し戸惑う声が耳に入った。そして、なぜか沙紀に目線を向ける。金茶色の髪の彼も不思議に思ったのか、電話をしている彼に近寄った。

「確かに、いますけど。でも、とても小学生には…。」

 困り顔で電話をし続ける彼の言葉を聞いて、金茶色の髪の彼は自分に代わるよう合図を出した。

高貴こうきにかわります。」

「はい、高貴です。」

 彼は高貴というのかと、沙紀は名前を知ることができてなんとなくうれしく思っていると、高貴は深刻そうな顔で話をしていて、やはり沙紀を見た。

「わかりました。連れていきます。はい。」

 そういうと、彼は電話を切った。そして、先程の穏やか雰囲気とは違う雰囲気で近づいてきた。

「君、名前は?」

「や、山田沙紀です。」

 有無を言わさない雰囲気で、少し怖くなりつつも沙紀は答えた。一体、何があったのかと不安が渦巻いた。

「沙紀、いい名前だ。」

 そんな言葉をこんな美男子に言われたら、鼻血でも出てしまうほど歓喜しそうだが、この雰囲気では冷や汗しか出ない。

 沙紀には、嫌な予感が当たりませんようにと願うことしかできなかった。

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