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金色の瞳  作者: 七篠 月
第二章 鬼導隊編
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悲鳴の正体


 男女の区別のつかない悲鳴が、屋敷を駆け巡ると、ドタドタドタとけたたましい音が続いた。

 沙紀さきは身を固くさせて、じっと耐えていた。

 しかし、嫌なモノほど、近づいてくるもので、音と振動は次第に大きくなっていて、沙紀たちの方へと向かってきている。

 それに気づいた沙紀はさらに体に力が入った。

 ただ、それを和らげるような温かいものが沙紀を包んだ。

「大丈夫だよ、沙紀。俺が守るから。」

 その言葉に、沙紀は力が抜けた。

 その時、沙紀たちの目の前に、何かがなだれ込んできた。

「出たー!!」

「マジで、怖えわ!」

 などと、いろいろ言っている若者の集団が、沙紀たちの目の前で興奮しながら息を整えている。

 沙紀は、その光景に呆気に取られていた。

 すると、自分の頭上から声が降ってきた。

「なるほど。そういうことか。」

 その声に驚いて、顔をあげると、高貴こうきの端正な顔がすぐそこにある。

 沙紀は、冷静になって、自分の状態を見ると、高貴の体に抱き付いた格好になっていて、高貴は沙紀を受け止めるように包んでくれていた。

 その状況に、沙紀の顔は沸騰していた。

「ご、ごめんなさいっ!」

 そう言って離れると、高貴は不思議そうに首をかしげた。

「別に謝るようなことは…。」

 そんな会話をしていると、いきなり光が目に飛び込んできた。

「まぶしっ!」

 思わずそう叫んで、光を見ると、若者たちが懐中電灯をこちらに向けていた。

 そして、少しの沈黙の後…。

『ギャー―――――――――――!!』

 先ほどより大きな悲鳴が襲い掛かる。

 それに、たまらず栄輝えいきが叫んだ。

「うるせえ!落ち着け!!」

 


 どうにか若者たちを落ち着かせた沙紀たちは、事情を聴くことができた。

 どうやら、彼らは大学生で、興味本位で『お化け屋敷』として有名なここで、肝試しをしていたらしい。

 沙紀が見た光も懐中電灯の明かりで、男女ともつかない悲鳴も男女混合の悲鳴だったから、区別がつかなかっただけというわけだ。

「それで、あなたたちは、『何か』見たんですか?」

 高貴がそう尋ねた。

「俺は見てない。誰か見た奴いる?」

「私も見てない。」

 首を振る者ばかりで、結局誰も見ていないらしい。

「じゃあ、なんであんな悲鳴を上げたんですか?」

「何か、背筋がゾワッてしたの。それで怖くなって。」

 一人の女性がそう答えたことで、結論は出たようだった。

 一人が叫べば皆が叫ぶ。

 集団ならではのパニック状態となったというわけだ。

「なるほど。ご協力ありがとうございました。」

 高貴がそう女性に微笑みかけると、女性はぽっと頬を染めた。

 さっきまでの恐怖心はどこへやらだ。

「あのー、ちょっといい?」

 大学生には幼い顔だちの青年が声をあげた。

「どうしました?」

 それに高貴が応えると、彼は集団の中から出てきた。

 短髪で、太い眉が特徴的な青年だ。

 そして、高貴の刀を指差した。

「もしかして、君たちって鬼?」

 その言葉に、彼以外の周りが凍りついた。

 頬を染めていた女性も、今度は青白くさせている。

 どうやら暗がりで、刀の存在も沙紀たちの格好にも気づいていなかったようだ。

 ただ彼だけは、興味津々といったキラキラした瞳を向けてくる。

「そうですよ。いわゆる『心霊スポット』も邪が出る可能性があるので、見回っているんです。ですから、あまりこういうところには、来ないようにしてくださいね。」

 いつもより敬語口調だが、有無を言わせない感じで、高貴は言った。

「す、すいませんでした!これからは気をつけます!ほら、行こうぜ!」

 大学生の一人がそう言うと、我先にと、大学生たちは洋館から出ていった。

 しかし、眉の太い彼は動こうとしなかったので、他の大学生が彼の首根っこを掴んで引っ張った。

「ちょっ、俺は聞きたいことが…。」

「いいから、早くしろ!」

 太い眉の彼は何か言っていたが、引きずり出されていった。


「とりあえず、静かになったな。」

 栄輝の言葉通り、大学生たちがいなくなったおかげで洋館は静まり返っていたが、薄気味悪さも帰ってきた感じだ。

「人間たちの噂っていうのも、肝試しを楽しんでた奴らの悲鳴だったってことだろ?なら、もう帰ろうぜー。」

 栄輝は大学生たちがいたことで、ここには邪がいないと確信したようで、さっさと帰ろうとする。

 しかし、高貴は眉をひそめた。

「だめに決まってるだろ。さっきの女子大生が言っていたことも気になるし、一通りは見てから、帰るぞ。」

 高貴は、テキパキと指示を出した。

 その結果、栄輝は単独で二階へ、高貴と初任務の沙紀は一階を担当することになった。

 栄輝は渋々きしむ階段を上がっていった。

「じゃ、俺たちも行こうか。」

「はい。」

 高貴と沙紀は廊下を歩いていく。

 不気味な雰囲気は変わっていないが、高貴がいるだけで、どこか安心して歩けてしまう。

 沙紀と高貴は、部屋を一つ一つ点検していったが、邪がいる様子はなく、あっという間に、一番端まで来た。

「ここで最後か。」

 高貴が最後の部屋のドアノブに手をかけた時だった。

 高貴が少し固まった。

 沙紀がどうしたのかと尋ねようとする前に、高貴が小声でささやいた。

「誰かいる。」

 その言葉に沙紀は、刀の柄に手をかけ、身構えた。

 高貴は、沙紀とアイコンタクトと取った後、バッとドアを開けた。


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