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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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イマジネーター

「さて、自分の創作モンスターに転生した相手は、いったいどんな奴かな?」


星夜は胃の痛みを好奇心で上書きしようとして、そんなことを考えた。


これも結構気になることだったので、問題無く不安は上書き出来た。



そして、星夜達一行は迷宮の最奥に辿り着いた。


「・・・あれか」


星夜が入ったボス部屋は、さ迷える鎧の迷宮のと同じ構造をしており、入口から奥までが開けていて、ボス部屋の一番奥にボスが鎮座していた。


大きさは外に居たエレメンタル達のおよそ十倍。

一辺が3mはありそうだった。


大きさ以外にエレメンタル達と違う点としては、その輝きと配色が上げられる。

外に居たエレメンタル達は、全て単色で輝きが弱ったのにたいし、目の前にいるエレメンタルは虹色で、宝石のようにキラキラと自身が光輝いている。


明らかにこちらのエレメンタルの方が格上っぽい。


「あんな配色のエレメンタル、デザインしたっけ?」


が、星夜は属性由来で自小説のエレメンタル達の色を想像していっていた為、虹色のエレメンタルの属性が何なのか星夜にはすぐにはわからなかった。

そもそも、自分があんなエレメンタルをデザインしたかどうかを星夜は訝しんだ。


『普通にデザインされていますよ』

「うん?」


訝しむ星夜の頭の中に、落ち着いた女性の声が響いた。


「誰!?いや、この状況からすると」

『はい、私ですイマジネーター(想造主)様』


星夜がダンジョンマスターに視線を向けると、再び頭の中で声が響いた。


「念話か。けど、エレメンタルに念話のスキルなんて持たせたか?」


星夜はその伝達方法から、最近自分がよく使うスキルと同じものだろうと当たりをつけた。が、すぐにエレメンタルにそんなスキルをつけたか疑問を覚えた。


『このスキルはクリエーター(創造主)のサービスだそうです。さすがにダンジョンマスターが話せないと、いろいろ問題が出るだろうからっ、と』

「ああ、そういうことか」


星夜は、ダンジョンマスターの説明に納得した。

たしかにダンジョンマスターに意思疎通能力が無いと、いろいろとやりにくいことは想像がついた。


「ふむ。先程君は俺のことをイマジネーターと呼んでいたな。ひょっとしてだが、君は転生者じゃないのか?」


星夜は先の答えに納得した後、新しくわいた疑問について質問した。


『違います。私は最初から私として存在しています。その為、私には前世自体が存在していません』

「・・・そうか」


どうやらこのダンジョンマスターは、神様製の出来立てほやほやらしい。


星夜はまた一つ納得した。


「じゃあ次の質問だ。なんで俺が自分を想像した人物だとわかったんだ?」


いったいどんな方法で判別しているのか、星夜はわりと気になった。


『それは簡単です。私達イマジネーターの想像を元にした存在達は、全てイマジネーターとパス(繋がり)が出来上がっていますから』

「パス?いや、それよりも存在達っていうのはどういう意味だ?」


星夜は、間を置かずに返ってきたダンジョンマスターの答えに、さらに疑問を増やすことになった。


『存在達ですか?私達以外にも、イマジネーターの想造した者達が、実体化しているということです。この近くですと、アルカナやピース、アステリアン達が実体化しております』

「いっ!?」


エレメンタルの返答に、星夜は硬直した。


今エレメンタルが上げた名前は、どれもかつて星夜が自小説で登場させたモンスター達の名前だった。

さらに言えば、三種が三種ともチート主人公と戦えるような能力仕様になっていた。


はっきり言って、星夜としてはあまり出て来てくれない方が有り難かった。


下手に暴れられると、被害が街一つどころか国一つで済むかも怪しい連中なのだ。


星夜のその思いは、ある意味当然である。


「神様、なんでそんな危ない連中を生み出したんだ」

『面白そうだからだそうですよ』

「・・・そうか。はあ」


星夜はため息一つつき、深く考えるのはやめることにした。


神様の目的が主を楽しませることであるいじょう、星夜がこれいじょう考えても意味がなかったからだ。


「あー、エレメンタル」

『なんです、イマジネーター?』

「街へ襲撃をかけるのをやめてもらえないか?」


気を取り直した星夜は、早速エレメンタル相手に交渉を開始した。


『なんのことです?』


が、エレメンタルからは交渉以前の言葉が返ってきた。


「うん?街への襲撃を計画しているんじゃないのか?」


星夜はエレメンタルの返答に戸惑ったが、とりあえずは確認の為にもう一度尋ねた。


『なぜ私達がそんなことをしなければならないのです?むろん、それがイマジネーターのご意思であるのなら、今すぐに街の一つや二つ襲撃いたしますが』

「しなくて良い、しなくて良い!」


返ってきた返答からは、本当にエレメンタルに街へ襲撃するつもりがないことが窺えた。

が、続く物騒な発言については、星夜は全力で止めた。


「エレメンタル達に街への襲撃の意思がないことはこれでわかった。だが、ならこの依頼の意味は何なんだ?」


星夜はポケットから依頼の紙を取り出し、もう一度内容を確認した。


そこにはやはり、エレメンタル達の街への襲撃を阻止せよという文章が記載されていた。


「神様、依頼内容を書き間違ったのか?それとも、俺をエレメンタル達に会わせる為にわざとか?」


星夜はとりあえず、現状の理由をそのどちらかだろうと考えた。


「・・・他の依頼にエレメンタル達が必要なことを考えると、後者だろうな。けど、なんで創作モンスター達の内、エレメンタル達と最初に接触するようにしたんだ?別に他の創作モンスター達でも良いだろうに?」

『それは多分、私達の準備が一番最初に終わったからだと思われます、イマジネーター』

「準備?」

『はい。私の方は、イマジネーターが与えて下さった魔力自動回復と眷属召喚の能力がありましたので、この世界に降り立ってからすぐに陣容を整えることが出来ました。これにより、イマジネーターを歓迎しますのに足る準備が可能になったのです』

「歓迎の準備、ねぇ?」


星夜は、歓迎の準備とやらがピンとこなかった。


『今は隠していますが、プレゼントなどもバッチリ準備しております。後ほど、私達の歓迎を存分にお受け取り下さい、イマジネーター』


半信半疑の星夜に、エレメンタルはそう言った。


「ああ、まあ、好意は受け取っておくよ」


星夜は曖昧にそう答えておいた。


『楽しみにしていてください』


エレメンタルは、星夜のそんな態度を全く問題にしていなかった。



「・・・さて、それじゃあこの後どうするかな?」


交渉?が終わった星夜は、次にどうするかを考えた。


今のところ依頼達成の通知は来ないが、少なくともこれからエレメンタル達が街の襲撃に行くことはないはず。

当初の目的は果たしたとみて良いだろう。


この後エレメンタル達の歓迎は受けるにしても、この辺りがちょうど良い区切りだ。


ここに来ている分身をダンジョンに戻し、明日の為に石化解除ポーションを錬成しておくか、それとも頑張ってエレメンタルを一体でも倒し、錬成材料を手に入れて他の迷宮に向かうか。


どちらが良いだろうか?


「うん?」


星夜がこの分身の次の行動を考えていると、別の分身の方で動きがあった。


「これは?・・・向こうの方が行動が早かったか」


スケルトン達を相手にしている分身の前に依頼の紙が飛んで来て、その紙が星夜の目の前で四散したのだ。


この時、星夜は初めて神様からの依頼を失敗した。




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