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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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初めての錬成

「さて、寝るまでの間ポーションを作りまくるか」


外から宿屋に戻った星夜は、汲んできた水を床に置き、床に座って集めた材料をポケットから取り出していった。


「まずはHPポーションからで良いかな?ええっと作り方は・・・これだな。そんなに難しくないというか、ほとんど工程が無いな」


星夜は、最初に錬成するものを決め、本を開いて錬成方法の確認を行った。確認した結果、錬成方法は単純で簡単なことがわかり、少し拍子抜けした。てっきり、いろいろすり潰したり混ぜ合わせたりするものだと思っていたのに、材料を用意して錬成を発動させるだけだったからだ。


「簡単で良いような、味気無いような。ポーション類の作り方が簡単なだけの可能性があるから、錬金術らしいアイテムの作り方は別のやつに期待するとしよう」


星夜は気を取り直すと、井戸水、薬草を一カ所にまとめ、ポケットからスリープで眠っているスライムを一体取り出した。


取り出されたスライムは、起きることなくすやすや眠っている。


「さて、それでは分解を始めるか。《分解》」


星夜はスライムを手に持ち、分解を発動させた。すると、星夜の手の中にいるスライムの形状がだんだん崩れていった。別にデロンデロンというか、ドロドロになったというわけではない。

水風船みたいだったのが、三つの塊に分かれ出しただけだ。一つの器から三つの器に流れ込むように、スライムの体積が少しずつ減っていき、代わりにスライムの身体の外に流れ込んで行った先の塊が大きくなっていった。


二十分もすると、星夜のの手の中からは完全にスライムが消失した。

そして、星夜の目の前には新たに三つの物質が転がっていた。

一つ目は、スライムの身体を構成していた体液。

二つ目は、スライムの中に浮かんでいたスライムの核。

最後の一つは、スライムの核と同じくらいの大きさの、ビー玉のような石。いつの間にか出現したもので、鑑定していない今の状態だと、星夜にはそれがなんであるかわからなかった。


さらに、ご丁寧にというべきか、スライムの体液は分解が終了した瞬間、何処からともなく出現した瓶の中に詰め込まれていた。


「これが異世界の不思議というやつか。それで、こっちはなんだろう?」


星夜はしばしスライムの体液の入った瓶を見つめ、その後正体不明の石を手に取った。


「スライムの核はもうあるし、スライムの身体の何処からこんなものが出て来たんだ?・・・鑑定してみればわかるか。《鑑定》」


星夜は三つ目に出て来た石を少しの間掌で玩び、鑑定を使ってその正体を探った。


【スライムの魔石】

スライムの魔力が集まって出来た石。

魔力量:小

品質:普通


「このビー玉みたいな石がスライムの魔石ねぇ?魔石はたしかMPポーションの材料にあったな。全身が錬金術で使用可能な材料になる、か。スライムと錬金術は相性が良いようだな」


体液はポーション類の材料になり、魔石はMPポーションの材料に使える。核は新しいスライムの核としてリサイクルが可能。


薄水色の魔石を弄りながら、星夜はスライムの有用性を認識した。


「まあ使えるものがあるなら利用しよう。HPポーションの材料は水、薬草、スライムの体液(分解後)。果物は手持ちに無いから味を確認してから次回どうするか決めるとしよう。それでは《錬成》」


星夜は、井戸水、薬草、スライムの体液(分解後)を一カ所にまとめ、早速ポーション作りを開始した。

星夜が錬成を発動させると、材料の足元に幾何学模様の魔法陣が出現した。

そして、その魔法陣がゆっくりと回転を始めた。

すると、魔法陣の中にある薬草の輪郭がだんだん解けてきた。

それは魔法陣が回転する事に顕著になり、やがて薬草は見た目緑色の液体の状態になった。

薬草がその状態になると、今度は桶に入っていた井戸水と瓶に入っていたスライムの体液に変化が起き出した。

桶と瓶が魔法陣の外に吐き出され、残った井戸水とスライムの体液が液体化している薬草と合流を開始し始めた。

三つの液体はゆっくりゆっくりと混じり合い、やがて色が透明になってきた。

すると、魔法陣の回転速度が少しずつ早くなってきた。

魔法陣に合わせるように液体も透明度を上げていき、液体が完全に透明になると魔法陣の回転が緩やかになっていった。

そして魔法陣が完全に停止すると、魔法陣が一瞬発光してその後消滅した。

魔法陣が消えた後には、スライムの体液の時同様瓶詰めされた状態の何かの液体が残されていた。


「これで完成か?《鑑定》」


これで完成なのか半信半疑な星夜は、瓶を手に取って鑑定してみることにした。


【HPポーション】

飲むとHPが回復するポーション。

使用方法:傷や怪我を治す場合は傷口に直接かける。

体内ダメージや肉体疲労を治す場合は一瓶分服用する。

効能:HP10分の上記を回復する。

品質:普通


「HPポーションに間違いはないか。けどHP10分って、実際にはどれくらい回復するんだ?」


星夜は、回復量が実際どれくらいなのか具体的な想像が出来ず、首を傾げた。


「今度怪我した時にでも試してみるか」


星夜は少し悩んでからそう結論した。


所用時間分解含めて約三十分。こうして初めての錬成は成功した。



「HPポーションの錬成は成功した。けど、一つ作るのにだいたい三十分もかかるとは、工程は少ないのに時間のかかることだ。魔力もそれなりに消費したみたいだし、次にMPポーションかスライムを作ったら今日は寝るとしよう」


星夜はそう決めると、次は何を作ろうか考えた。

MPポーションかスライムか。

MPポーションの材料は、HPポーションと一つしか違わないから工程もたいして変わらないはず。たいしてスライムの方は、作り方はポーションと違うだろうから作る過程に意味はある。だけど、スライムはポケットの中にまだまだいる。今すぐにスライムを作る必要性は薄い。というか、今作っても邪魔にしかならない。

なら、作るのはMPポーションで決まりだ。


「それじゃあさっきと同じように材料を置いてっと。《錬成》」


井戸水、薬草、スライムの体液(分解後)。それにスライムの魔石を加え、星夜は再び錬成を発動させた。


HPポーションを錬成した時と同じ現象が起こり、魔法陣の中で材料がゆっくりと混ざりあっていった。

違う点があるとすれば、新たに入れた魔石の変化だろう。

魔石は薬草とは違い、液体化はせずにその形状を保っていた。ただし、液体化しなかっただけで、変化は普通にあった。ビー玉のような大きさだったのが、液体化した他の材料を取り込み、HPポーションの瓶くらいのサイズまで巨大化していったのだ。

それに何の意味があるのかはわからないが、魔石のサイズが瓶と完全に同じになると、錬成が終了した。

あとには、HPポーションと瓜二つの見た目の瓶詰めされた液体だけが残されていた。


「完成か。にしても、魔石を入れただけなのになんであんな変化になったんだろう?」


星夜は、HPポーションとMPポーションの差が不思議でしょうがないようだ。


「うっ!魔力を使い過ぎたかな?もう寝よう。MPポーションの鑑定は明日やれば良いや」


二つのポーションのことを考えていると、星夜は突然強い眠気を覚えた。それが錬成で魔力を使ったせいだと判断した星夜は、さっさと眠ることにした。


星夜は作ったポーションや材料を部屋の隅にまとめ、ベットに潜り込んだ。


こうして星夜の転生一日目は終了した。

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