表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
67/80

舞う赤羽根

「火翼の」

「アポスル?」


唐突に現れた星夜を見た御剣達は、無意識に星夜の名乗りを口にした。


「コケェー!」

「甘い」


人間二人はそんな感じで固まったが、コカトリス達魔物組はすぐに星夜に攻撃を仕掛けた。


まずはコカトリスが飛び上がり、星夜を蹴りつけた。


星夜は慌てずにコカトリスに向かって手を伸ばし、その足を掴んで投げ飛ばした。


「コケェー!?」


コカトリスの巨体が宙を舞い、こちらに攻撃しようとしてアルラウネ達の方に飛んで行った。


そしてそのままアルラウネ達に激突。

コカトリスとアルラウネは揃って目を回した。


「・・・」


次は、残ったゴーレムがアルラウネを守るように星夜に突撃して来た。


「あの質量はさっきみたいには無理だな。《フレイムフェザー》」


星夜は即座にそう判断すると、背中にある翼を大きく広げ、大量の緋色の羽根を周囲にばらまいた。


「!」


大量の羽根で周囲が赤く染まり、ゴーレムは星夜の姿を見失った。


「熔け落ちろ!」


そして、何処からともなく星夜がそう言うと、羽根が一斉にゴーレムの身体に纏わり付きだした。


「!」


ゴーレムが驚いた直後、ゴーレムの周囲の羽根が一斉に発熱をはじめ、瞬時にゴーレムは全身を高熱にさらされることになった。


「どれだけ持つかな?」


星夜はそんなゴーレムの姿を羽根の隙間からのぞき見。どれくらいゴーレムが原形を維持出来るのか考えた。


現在ゴーレムを取り巻いている赤い羽根の正体は、星夜がニクスを取り込んで得た火属性の魔力で生成した魔力物質だ。

羽根の一枚一枚が、火属性の魔法だと言ってもいいだろう。


そして、この羽根の真骨頂はその発熱能力にある。


星夜が念じれば、好きなタイミングで好きな羽根を好きな温度で発熱させられる。

羽根が達する温度は、星夜が込めた魔力でいくらでも上げることが可能だ。


現在ゴーレムに張り付けている羽根の温度は、実はまだたいしたことはない。


本来、現在の星夜の魔力を全て注ぎ込めば、ゴーレムを瞬間熔解・蒸発させることも十分可能なのだ。


なのになぜ星夜がそうしないのか?


その理由は御剣達にある。


ゴーレムを熔かすような熱量が発生するのだ。

ゴーレムのいる中心だけではなく、ゴーレムの周囲に拡散する熱だけでも恐ろしい温度になる。


そんな高熱に生物は耐えられない。


ちなみに、星夜は普通に耐えられる。


火属性を持ち、ニクスの特性を獲得している今の星夜には、火や熱を無効にする能力があるからだ。


星夜のその辺の事情はおいておくとして、星夜達が見ているゴーレムの熔解が始まった。


ゴーレムの表面がだんだん溶岩のように熔けだし、ゴーレムの輪郭が少しずつ曖昧になっていった。


それにともなって周囲の温度も上がっていたが、御剣達に届きそうな危険な箇所の熱は星夜が吸収していた。


そして星夜は吸収した熱を自分の力に変える。


魔力を魔力物質や熱に変えるのとは逆。吸収した熱を魔力に変換する。

そしてまた魔力を羽根に注ぐのだ。


ある意味星夜は永久機関と化していた。


時間経過で熱が増せば増すほど、エネルギーを得られるということだ。


相手を熔かしながら自分を強化する。

それがこの形態での星夜の戦い方だ。


「終わりだ」


星夜がそう告げると、ゴーレムの巨大が完全に熔け落ちた。

ゴーレムがいた場所には、かつてゴーレムだった溶岩が残るだけだった。


「さて、次は」


星夜はそれを見た後、視線をコカトリス達の方に向けた。


それは、ちょうどコカトリスとアルラウネが回復した時だった。


「次はどちらかな」

「コケェー!」


星夜が次の相手をどちらにするか迷った一瞬。

コカトリスの目が妖しく光った。


「まずい!」

「避けろ!」


すると、御剣達から悲鳴のような警告が星夜に放たれた。


「うん?」


星夜がそのことを疑問に思うと、星夜が着ている赤い鎧の表面が灰色に変わりだした。


どうやら今のは、コカトリスが魔眼を発動させた結果のようだ。


「石化の視線ねぇ。無駄なんだよな」


星夜がそう言うと星夜の身体から炎が生まれ、鎧の灰色になった部分を嘗めた。


「コケェー!?」

「「なっ!?」」


すると、灰色になっていた部分が元の赤い鎧に戻った。


これには石化をかけた本人であるコカトリスと、石化の怖さを知っている御剣達から驚きの声が上がった。


「残念。それではさようなら。《ヒートブラスター》」

「コケェー!」


星夜が指先をコカトリスに向けると、指先から赤い一条の閃光が放たれ、コカトリスの身体を貫いた。


ドサ


光に貫かれたコカトリスの身体が傾き、コカトリスはそのまま動かなくなった。


「二体目。さて、あとは」


星夜は次にアルラウネに視線を向けた。


ヒュンッ!


「おっと!」


ちょうどそれは、アルラウネの放った茨が星夜の目前に迫っている時だった。


星夜は茨は回避せず、そのまま鎧で受け止めた。


「残念」


そして、星夜に命中した茨が発火した。


先程ゴーレムを熔かした時に発生した熱を吸収していた今の星夜の体温が、アルラウネの茨の発火温度を越えていたのだ。


茨に発生した火は茨を遡って行き、アルラウネ本体に到達。そのままアルラウネを炎上させた。


「!!!」


アルラウネは声なき悲鳴を上げ、炎を消そうと地面の上を転がり回った。


しかし炎はいっこうに消えず、アルラウネの身体をどんどん燃やしていった。


「さようなら、《ヒートシャドウ》」


星夜はそんなアルラウネをいっぺいした後、先程作ったばかりの合成魔法を発動させた。


魔法が発動すると、地面を転げ回るアルラウネの影の色が、だんだん黒から赤へと変わりだした。


「!!!」


それに合わせて、アルラウネが地面からぴょんぴょん跳ねる動作をしだした。


が、それはアルラウネの意思ではなかった。


星夜が発動させた《ヒートシャドウ》は、影に熱を持たせる魔法だ。


その為、現在アルラウネの影は熱したフライパン状態となっていた。


だが、アルラウネがどんなに跳びはねて逃げようとしても、熱源は自分の影。

到底逃げることなど出来はしない。


そして、アルラウネが跳びはねている間も、最初に燃え移った火は今だにアルラウネの身体を焼いている。


もうアルラウネが助かる道も、手段も存在していなかった。


星夜達が見守る中、アルラウネはやがて炭になって倒された。


「これでここの分は終わりか?」


ポーン!


星夜がそう思うと、それを肯定するようにいつもの音が聞こえてきた。


【依頼達成。報酬贈呈。夢魔法:デイドリーム、空間魔法:コウオーディネットが使用可能になりました。スキル:ディストーションを獲得しました】


そして、星夜は無事に三つの依頼報酬を受け取った。


「さて、残りは」


星夜は視線を彼方に向けた。


星夜が視線を向けた先では、現在ヒュドラとドラゴンによる怪獣大決戦が行われていた。


下手をすると、この辺り一帯の地形が変わってしまいそうな勢いだ。


「早めに片付けないとまずいな」


星夜はあの戦いに介入することに不安を覚えたが、それでも戦いに介入しなくてはならなかった。


「《ゲート》、《魔獣現創》、《ゲート》」


星夜はコカトリスの死体をゲートで引き寄せ、それを材料に次のユニークスキルを発動。そのままヒュドラ達のもとに移動した。



「なんだったんでしょう、今の人?」

「さあ?」


星夜が去った後には、御剣と氷室。そして、四体の石像だけが残された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ