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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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夢現のアポスル

「セイヤさん、あなたはいったい何者なんですか?」


その場にいた者を代表し、アリアがそう星夜に問い掛けた。


「俺が何者かですか?」

「はい」


星夜の確認に、アリアを筆頭に周囲にいる者達が頷いた。


「うーん、なんと答えたものですかね?」


星夜はなんと答えればアリア達が納得するのかと思案した。

ただの人間と答えるべきか、転生者と答えるべきか、ダンジョンマスターと答えるべきか、それとも神様の使いと答えるべきだろうか?


星夜の頭の中では、自分の肩書きになりそうな言葉が踊っていた。


しかし、アリア達に言う言葉としてはあまり適切なものがなかった。


ならば、勝手に肩書きを創って名乗るのも良いかもしれない。


星夜はそう思った。


「そうですねぇ、じゃあこう名乗っておきましょうか。主に仕える千の影の一人。夢現のアポスル」


神様に飛ばされた人数プラス、光剣のブレイバーのような二つ名を創って星夜はそう名乗った。


「主に仕える千の影?」

「夢現のアポスル?」


星夜の名乗りを聞いたアリア達は、星夜の名乗りの意味を計りかねた。


「意味はそのままですよ。同時期に主に仕えだした千人のうちの一人。夢現の方は、俺の能力からくる二つ名です。アポスルの意味も使徒で、主に仕えるものという意味でしかありません」


星夜の説明を聞いたアリア達は、それで何を判れと?と、いった顔した。


しかし、星夜には他に答えようがなかった。


「セイヤさ」

「あっ!」


アリアはあらためて聞き直そうとした。

だが、その言葉は星夜の驚きの声に遮られた。


「セイヤさん?」


アリアは何事かと思い、星夜を見た。


ポーン!


【依頼達成。報酬贈呈。夢幻のローブを入手しました】


アリアが見ている星夜の頭の中では、いつものメッセージが流れていた。

そして、虚空から夜色の一枚のローブが星夜の上に舞い降り、そのまま星夜に装備された。


「・・・スケルトン達が全滅しました。ドラゴン達がこちらへの進行を再開しました」


星夜はそれを後回しに、自分が声を上げた理由をアリア達に伝えた。


「「「なっ!?」」」


アリア達は星夜その言葉に驚き、慌てて星夜から魔物達の方に視線を移した。


アリア達が視線を向けた先では、魔物達が倒したスケルトン達を蹴散らしながらこちらに向かって来ている最中だった。


「「「ひっ!」」」


それを見たアリア達の口からは、小さな悲鳴が上がった。


この状況になると、アルバートはともかく他の面子に星夜の正体を詮索している余裕はなくなった。


「おい坊主、まだあいつらの足止めは出来るか?」

「可能ですよ」


アルバートと星夜。この状況下で今だ冷静な二人は、あの魔物達についての話を進めた。


「じゃあ、頼む」

「はい。《ゲート》、《エクスパンション》」


アルバートに頼まれた星夜は、ヒュドラとコカトリスにたいしてゲートの魔法を発動させた。


「あっ!ヒュドラが!?」

「コカトリスの方もだ!?」


星夜が魔法を発動させると、アリア達の見ている前でヒュドラとコカトリスの二体が、地面に吸い込まれていった。


「消えた?何処に行ったんだ?」

「あっちだよ」


消えたヒュドラ達の姿を捜すシン達に、星夜はドラゴンやゴーレム達がいる方を指差した。


「えっ?」


シン達は、一斉にドラゴン達の方を向いた。


ちょうどその時、地面に消えたヒュドラ達が地面から吐き出されるところだった。


地面から出現したヒュドラ達は、移動中だったドラゴン達にそれぞれ激突。

それぞれが錐揉みした後、両者はそれぞれ戦闘を開始した。


「これでもう少しの間は時間を稼げます」

「まさか本当に時間稼ぎが出来るとはな」


何かやり遂げた様子の星夜に、アルバートは信じられないものを見たような顔を向けた。


「でも、この辺りが俺の限界ですよ。さすがにもうゲートを開くだけの魔力はありませんから」


戦況をここまで操作していた星夜だが、さすがに魔力消費が激しいらしく、そんなことを言いだした。


「そうか。まあ、無理もないな。良し!全員魔物達が潰し合っているうちに街に戻るぞ!今ならあいつら自分達に集中していて、俺達が避難しても追いかけてはこれないはずだ!」

「わかりました」


星夜の言葉聞いたアルバートは、すぐに次の行動を決めると、初心者冒険者達全員に街への避難を指示した。


それを聞いた初心者冒険者達は全員が頷くと、ダッシュで街へと向かった。



「・・・行かないんですか、アルバートさん?」

「そういう坊主はどうなんだ?」


初心者冒険者達が走り去った後、平原にはアルバートと星夜の姿が残っていた。


「俺には主から請けた依頼がありますから、まだあの魔物達に用があります。俺の方はそんな理由ですけど、アルバートさんはどうして初心者冒険者達のことをアリアさんに任せてまでここに残ったんです?アルバートさんが先頭か最後尾にいた方が彼らは安全でしょう?」


星夜には、なぜアルバートが平原に残ったのか不思議でならなかった。


「それは簡単なことだ坊主。今日ここに来ているのは、今帰した連中だけじゃないからさ。俺は初心者冒険者達全員の引率なんだ。あいつらだけ帰せば良いってわけじゃない」

「なるほど。そういえばそうでしたね」


星夜はアルバートの言葉に頷いた。


星夜は忘れていたが、先程までここにいたのはアリアを引率にしたグループと、アルバートを引率にしたグループの二つだけだった。


他の引率者に率いられた初心者冒険者達のグループはいなかったのだ。


星夜がよくよく思い出してみれば、今のグループに御剣達の姿が無いことに気がついた。


どうやら彼らもまだ避難していないグループのようだ。


「それじゃあアルバートさんは、今から初心者達の回収ですか?」

「そのつもりだ」

「そうですか」

「・・・坊主、やっぱりお前先程嘘をついてやがったな」

「なんのことです?」

「さっきお前はゲートを開ける魔力がもう無いと言っていたよな?」

「言いましたね。それがなんで嘘だと思うんです?」


星夜は、なぜアルバートがそれを嘘だと思ったのかわからなかった。


「坊主がここに残っているからさ。魔力が無いのにドラゴン共の傍に残るなんて、自殺行為だろう?」


どうやらアルバートは、今の状況から星夜が先程嘘を言ったのだと考えたようだ。


まあ、状況証拠としてはそれはありだろう。

ただし、あくまでも状況証拠でしかなかった。


「まあ、魔力の無い状態で魔物達の傍に残ることが自殺行為だとは俺も思いますよ。ですが、別に俺は嘘なんて言ってませんよ」


「ほう?ならなんでこの状況で落ちついていられるんだ?」


アルバートは星夜の顔を覗き込み、星夜が嘘を言っていないことを理解した。だが、そうなるとなぜ星夜が今自然体で居られるのか疑問が出てきた。


「それは、魔力の回復手段があるからですよ。《アブソープション》」


星夜は吸収のスキルを発動させ、ダンジョンに置いてあるMP・SPポーションを吸収した。

その結果、星夜の魔力は満タンにまで回復した。


「なるほどな。今使ったのが何のスキルかはわからんが、魔力の回復手段を持っていたわけか。たしかにそれなら別に嘘はついてはいないか。言った時点では実際に魔力がなかったのだからな」

「でしょう」

「・・・お前がさっき言っていた主の依頼とはなんだ?」


アルバートは一つ頷くと、今度は別のことを星夜に問い掛けてきた。


「特定の魔法やスキルを使ってあの魔物達を倒すことです」


星夜は正直に答えた。

ここで嘘をついても仕方がないからだ。


「・・・お前はあの魔物達を倒せるのか?」

「ドラゴンやヒュドラはわかりませんけど、コカトリス達ならなんとか。まあ、倒せなくても自分が逃げることは簡単ですよ」

「ゲートの魔法を使えるのだからそうなんだろうな。なら、少しの間時間稼ぎを頼めるか?」

「構いませんよ。その代わり、何を見ても詮索はしないでくださいよ」

「それが時間を稼いでくれる条件か?」

「そうとってもらって構いませんよ。どうします?」

「・・・わかった。その条件をのもう」

「言質はとりましたからね」

「ああ。俺に二言は無い」

「わかりました。《ゲート》」


星夜はアルバートが嘘を言っていないことを確認すると、魔物達のもとに向かった。


それを見送った後、アルバートも初心者達の回収に向かった。



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