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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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合成魔法

「ふむ。どうなるのか怪しかったが、予想通りにいったか」


星夜は倒れたゴブリンの状態を確認し、実験は成功したと判断した。


「セイヤさん!」


星夜が冷静に現状を観察していると、アリアが星夜の傍まで駆け寄って来た。


「すみませんアリアさん。スプラッタを見せるつもりはなかったんですけど・・・」


星夜はアリアを怖がらせてしまったと思い、謝罪した。


「いえ、私は治療院の手伝いもしますから、血には慣れていますからご心配なく。それよりもセイヤさん、今何をしたんですか!?」


どうやらアリアは、スプラッタではなく星夜が何をしたからこうなったのかが知りたいようだ。


「何って、使い方を工夫してシャドウの魔法を使っただけですよ?」


星夜の認識では、そうとしか言えなかった。


「そんなことはありえません!私の知人に同じシャドウの魔法を使える人がいますが、最初の方はともかく、最後のゴブリンを真っ二つに出来るようなことが可能だとは聞いたことがありません!」

「・・・ただ、さっきのような使い方を思いついていないだけでわ?」


詰め寄って来るアリアに、星夜はそう反論した。


実際に自分は出来ているのだし、ようは使い方の問題だろうと星夜は思っていた。


「たしかにその可能性はあります。ですが、影を操るだけの魔法でどうやったらゴブリンを真っ二つに出来るんですか!?」


アリアは星夜の主張を否定しなかった。だが、自分の知っている魔法との差異に、冷静ではいられないようだ。


「そんなに不思議なことですか?ただ影を相手に差し込んで、物理干渉を発動させただけですよ?」

「物理干渉?セイヤさん、物理干渉ってどういうことですか?」


アリアは、星夜が言った一つの単語に反応した。


「どういうことって、シャドウの魔法は影を操ることの他に、物理干渉出来るようにする魔法ですよ。アリアさんも言ってたじゃないですか、最初の方はともかくって。影の形状を変えたり物理攻撃をしたりするのは、シャドウの効果の範疇ですよ」

「・・・たしかにそういう魔法だとは聞いています。なら、先程のも物理攻撃なのですか?」


星夜の言葉にアリアは少し考えて頷くと、次にそう星夜に尋ねた。


「そうですよ。まずは物理干渉を切ります。これで影は形を操れるだけの影になります。この状態の影はなんにも触れませんが、逆になんでもすり抜けることが出来ます。ただの影に厚みなんてありませんから、壁や人体にもするりと差し込めます。真っ二つになる前はゴブリンに変化はなかったでしょう?」

「たしかにそうですね。影が刺さっていたゴブリンは、なんともありませんでしたから」


アリアは、死ぬ間際のゴブリンの様子を思い出しながら答えた。


「ところで、話は少し変わりますがアリアさんは細胞ってわかりますか?」

「細胞ですか?私達の身体を構成しているものでしょう?」

「そうです。細胞が寄り集まって俺達の身体を構成しています。逆に言うと、人体は一つの細胞ではないということです。これがどういうことだかわかりますか?」

「いえ、どういうことですかセイヤさん?」

「つまり、細胞には認識出来ない隙間が存在するということです」

「言われてみればそうですね。ですが、それがどうかしたのですか?」

「これが俺が最後にやったことの種なんですよ、アリアさん」

「種?」

「はい。俺がさっきやったのは、今言った細胞の繋がっている部分。その隙間部分に影を入り込ませて、物理干渉を行ったんです。意味はわかりますか?」

「影を隙間に入れて物理干渉を行う?それってまさか!」


アリアは何かに気がついたように声を上げた。


「そうです。細胞と細胞の間で影を物理干渉させると、細胞がくっついていない状態になるんです」

「なるほど。それでゴブリンが真っ二つになったんですね」

「そうです」


アリアは、星夜の説明で状況を理解した。


「それではアリアさん、また離れていてもらえますか。他にも試してみたいことがあるんです」

「わかりました」


星夜がそう頼むと、アリアはシン達の方へ戻って行った。


「さて、次は合わせ技でも試してみるか」


星夜は次にすることを決めると、今度はゴブリンを二体結界から解放した。


「凍てつく死よあれ、《フューネラル》」


そして、そのゴブリン達に向かって魔法陣から白いガスを噴射させた。


「「ゴブ!?」」


それを見たゴブリン達は慌てて逃げようとしたが、影に足首を捕まれて逃走を阻止された。

その結果、ゴブリン達の片方に白いガス取り込まれ、凍りついていった。


「ゴブ!」


隣で凍りついた仲間を見たゴブリンは、恐怖に顔を引き攣らせた。


「第一段階はこれで良し。続いて第二段階。《アブソープション》」


ゴブリンが凍りついたことを確認した星夜は、凍りついた方のゴブリンに影を纏わり付かせ、吸収のスキルを発動させた。


すると、凍りついていたゴブリンの身体から氷がだんだん消えていき、その代わりのようにゴブリンに纏わり付いていた影の色が黒から透明感のある白い色に変わっていった。


影の色が完全に変わる頃には、凍りついていたゴブリン表面の氷は全て消失していた。


後には、瞬間凍結で凍死したゴブリンの死体だけが残った。


「第二段階も無事終了。予想通り氷を影に吸収させられたようだな」


星夜は影の変化に満足したようで、一つ頷いた。


「このまま第三段階もいってみるか」


星夜はそう言うと、白くなった影を剣の形に変え、ゴブリンの死体に突き刺した。


「ゴブ!」


すると、恐慌状態のゴブリンの目の前でゴブリンの死体に変化が起こった。


影の剣を起点に、先程の比ではない速度と範囲でゴブリンの凍結現象が起こり、ゴブリンの死体はあっという間に一つの氷像に変わった。


「おしまい」


そして、星夜がそう言うとゴブリンの氷像は粉々に砕け散った。


「ゴブ!?ゴブッ・・・」


その光景を見た残ったゴブリンは、慌ててまた逃げようとした。が、足首に巻き付いている影のせいで再び逃走は失敗。


やがてゴブリンの顔が恐怖から絶望の表情に変わり、そのまま気を失った。


「魔物でも気絶するんだ」


星夜はさすがに怖がらせ過ぎたかと、少し反省した。


「だけど効果は問題無さそうだな」


が、試した魔法の結果については満足したようだ。


ポーン!


【合成魔法:コールドシャドウが使用可能になりました】


そんな星夜の頭の中に、そんなメッセージが浮かんだ。


「合成魔法?派生魔法じゃない?」


星夜はてっきり、神様の依頼以外で得られる魔法は派生魔法くらいだと思っていたので、このメッセージには驚いた。


「・・・後で調べてみるか。先に残りを片付けておこう」


気を取り直した星夜は、まだ生きている気絶したゴブリンを見た。


「さて次はっと、痺れる死よあれ、《フューネラル》、そして《アブソープション》」


今度出現した魔法陣からは幾条もの電撃が放たれ、今回はゴブリンに命中する前に影に吸収されていった。


影の色が白から黄色に変わっていき、影の表面でバチバチという音が鳴りはじめた。


「今度も成功っと。それじゃあトドメだ」


星夜は気絶しているゴブリンに向かって、黄色くなった影を突き立てた。


「ゴブ!?」


一瞬ゴブリンから閃光が周囲に放たれ、次に見た時にはゴブリンは黒焦げになっていた。


ポーン!


【合成魔法:エレキシャドウが使用可能になりました】


それを星夜が確認すると、新しい合成魔法が使えるようになった。


「ふむ。吸収を利用すれば、魔法に他の魔法を上乗せ出来るってことか。後で他の魔法でも試しておこう」


星夜は今した実験の結果を踏まえ、魔法のバリエーション増加に夢を馳せた。


一通り余韻に浸った星夜は、驚いた様子で自分を見ているアリア達に合流しに向かった。



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