ゴブリンとの戦い
「それじゃあみんな、早速始めようか」
「「「おー!」」」
星夜がそう言うと、子供達三人は元気よくそう返事をした。
「じゃあ、まず最初は誰が行く?」
「俺俺!」
「僕僕!」
「私、私!」
星夜は最初に誰が戦うか聞くと、子供達三人は自分が戦うと主張した。
「みんな元気だなぁ。なら、三人で戦うか?」
「「「うん!」」」
星夜がそう提案すると、三人はそれで良いらしく、一斉に頷いた。
「アリアさんもそれで構いませんか?」
「はい、大丈夫です」
「それじゃあ、三匹結界から出すぞ」
アリアに許可をもらった星夜は、ゴブリンを三体結界から解放した。が、スリープの効果で解放されたゴブリン達は今だ寝込けていた。
「セイヤ兄」
「わかってるからちょっと待って、《シャドウ》」
寝ているゴブリン達を見て気勢を削がれたシンに呼ばれた星夜は、すぐにゴブリン達の傍の影を使って寝ているゴブリン達を叩き起こした。
「「「ゴブ!?」」」
寝ているところに攻撃を加えられたゴブリン達は、慌てて起き上がり周囲をキョロキョロ見回した。
自分達の状況がまるでわかっていない様子だ。
まあ、最初から今までずっと不意打ちを喰らっているのだから、ゴブリン達のこの反応も無理はないだろう。
「「「ゴブ!」」」
そんなゴブリン達が星夜達を見つけたようで、星夜達の居る方向に駆け出した。
「ほら来たぞ」
「おっしゃあ!」
「待ってよシン!」
「じゃあアリアお姉ちゃん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。くれぐれも気をつけるのよ」
「「「はーい!」」」
そんなゴブリン達に向かって、星夜達の側からはシン達子供三人が駆け出して行った。
「三人とも結構強いんですね」
「ええ。戦闘訓練などは孤児院の方でちゃんとしていますから、あれくらいなら」
現在星夜とアリアは、子供達三人とゴブリン達の戦いを少し離れた位置から見守っていた。
また子供達三人は、とくに危な気なくゴブリン達と戦っていた。
まずはシン。彼の武器は短剣で、身軽な動きでゴブリン達にヒット&ウェイを仕掛けている。
ゴブリン達がヒット&ウェイを仕掛けてくるシンに注意を向けると、その隙を見逃さずにソルが長剣で切りかかっていく。
そして、男の子二人がゴブリン達の相手をしているうちにファウナが攻撃魔法を詠唱し、二人がゴブリン達から離れたタイミングで魔法を放っていた。
今のところシン達の連携に問題は無く、少しずつだが確実にゴブリン達を追い詰めていた。
現在シン達の相手をしているゴブリン達は無手だが、次は武器を持ったゴブリン達の相手をさせても大丈夫そうだと星夜は思った。
「そういえばアリアさん」
「なんです、セイヤさん?」
「この実戦での討伐の証明ってどうするんですか?」
そして、そのゴブリン達が倒された後のことを考え、先程アルバートが言っていなかった部分について星夜はアリアに確認した。
「それは普通の討伐依頼と同じです。討伐した魔物から討伐証明部位を剥ぎ取り、それを持って行けば問題ありません」
「そうですか。おっ!どうやら終わったみたいですよ」
「そのようですね」
星夜とアリアが話ていると、その間にシン達が三体全てのゴブリンを倒したようだ。
「やったぜセイヤ兄!」
ゴブリン達が動かなくなったことを確認したシン達が、星夜達の所に戻って来てそう報告した。
「よく頑張ったな」
「へへ!」
星夜がそう褒めると、シン達はとても嬉しそうだった。
「じゃあ、次はどうする?またシン達が戦うか?それとも、俺の分を終わらせた方が良いか?」
そんな三人を見た後、次は誰が戦うか星夜は尋ねた。
先程の戦闘を見たかぎり、このままシン達が戦っても良いように見えた。が、休憩を取ることも大事なことだ。
シン達が休憩している間、星夜は自分のノルマを片付けても良いと思っていた。
「それなら俺、セイヤ兄の戦いを見てみたい!あんなにいろいろな魔法が使えるんだ、もっと他にも魔法を持ってるんだろう!」
シンは、なにか確信を持っているようにそう星夜に言った。
「僕もセイヤ兄さんの魔法をもっと見てみたい!」
「私も!」
ソルとファウナの二人も、シンに賛成してそう声を上げた。
「私も見てみたいです」
星夜がシン達を見た後にアリアに視線を向けると、アリアも星夜にそう言ってきた。
「そうですか、わかりました。もう少し俺の手持ちの魔法をお見せします」
「「「わーい!」」」
星夜が四人の提案を請けると、子供達から歓声が上がった。
「けど、あれら以外に戦闘用の魔法はあまり持ち合わせがありませんから、そんなに期待しないでくださいね」
星夜は一応そう断りを入れておいた。
星夜としては、あまり過度の期待を持たれても困るのだ。
「大丈夫だってセイヤ兄なら!」
「うん!」
「ねぇー!」
「こちらが無理を言っていますので、そこまで気にしないでください」
が、四人は期待が大きいようで、そんな言葉が返ってきた。
アリアだけは子供達程にははしゃいでいなかったが、その目には明らかに期待の色が宿っていた。
星夜は若干プレッシャーを感じたが、あまり意識しないことにした。
「まずは一匹解放」
星夜は結界の一つを解除し、中のゴブリンを一匹外に出した。
「《シャドウ》」
そして影で一発小突く。
「ゴブ!?」
すると、さっきのゴブリン達のようにゴブリンが飛び起きた。
「まずは一撃、《シャドウ》」
ゴブリンが起きたことを確認した星夜は、影の魔法でさらにもう一撃加えた。
星夜がハンマーのような形状の影を使ってゴブリンを叩くと、ゴブリンは驚く程よく吹き飛ばされた。
「ふむ。やはり厚みがある方が威力は上か。なら、次は逆に厚みを無くしてみるか」
星夜は、今度は糸と見紛う程に細く薄い影でゴブリンを攻撃した。
「やっぱり薄いと物理干渉力は弱いか」
しかし、糸状の影に触れても今度はゴブリンは吹き飛ばされることなくぴんぴんしていた。
が、それでも影に触れると動きが鈍くなっていたので、まったく効果が無いわけではないようだ。
「次は干渉面積を広げてみるか」
次に星夜は影を紙のように薄く伸ばしてゴブリンを攻撃した。
薄く伸びたぴらぴらした影がゴブリンに触れた。
すると、今度は吹き飛ぶまではいかなかったが、ゴブリンの頭を回転させる程度のことは出来た。
威力を換算すると、ハリセンで叩かれた程度だろう。
「手加減した攻撃としては良い感じみたいだな。しばらく叩き回せばゴブリンくらいなら倒せるだろうし」
星夜は今の攻撃結果からそんな評価をくだした。
「もう少し威力があれば攻撃魔法として使えるんだけどな。・・・そうだ!」
星夜は他にどんな形状の影が攻撃に適しているかを考え、一つの使い方を思いついた。
「そういえば普段はあまり意識していないけど、この魔法の影って物理干渉対象にしなければものを透過出来るんだよな?出来たとしたらかなり危ない使い方だけど、試してみるか」
星夜は影の物理干渉を停止させ、影をゴブリンの身体の中に差し込んだ。
物理干渉を停止させている為、当然ゴブリンにはなんの影響もなかった。
星夜のこの行動には、星夜とゴブリンの戦いを見守っていたアリア達だけではなく、影を差し込まれているゴブリン自体いぶかしんだ様子を見せていた。
「それでは実験開始」
星夜がそう告げた瞬間、事態は急変した。
影が刺さっていたゴブリンが真っ二つになったのだ。
真っ二つになったゴブリンの身体はバランスを失い、そのまま地面に倒れこんだ。そして、切断面から大量の血液が溢れ出し、地面を赤く染め上げていった。




