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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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狩りの獲物

「それで、シン達はどんな魔物と戦ってみたいんだ?」


星夜はとりあえず、彼らの希望を聞いてみることにした。


そしてその魔物に問題が無ければ、マップで探して戦いに行こうと星夜は考えていた。


また、もし万が一アクシデントが発生したとしても、星夜には空間移動系の魔法がある。危なくなったらすぐに逃げれば良いと星夜は楽観的に考えていた。


「そうだなぁ?・・・あっ!俺、あいつと戦ってみたいな」


シンは、何か戦ってみたい魔物を思いついたようだ。


「あいつってあいつのこと?」

「そうそう!」


ソルがそれを確認すると、シンは元気よく頷いた。


「それって、緑色のあいつのこと?」

「そうそう、それそれ!」

「「あいつ?」」


ファウナも、シンやソルがあいつと言う魔物に心当たりがあるようだ。


しかし、星夜とアリアの二人には三人がどんな魔物を倒したがっているのか皆目見当もつかなかった。


三人の話では、その魔物は緑色をしているようだ。


星夜は、頭の中で緑色の何かを想像しようとして、青虫の姿が出来上がってしまった為、即行でその想像を破棄した。


虫型の魔物がいないわけがないが、子供達が倒したがる魔物かと言うと疑問がある。


多分違うだろうし、なにより【イメージ補正】の効果のせいで、やたらリアルな青虫が想像出来てしまった。


その為、現在星夜は内心気分を悪くしていた。


どうやら、【イメージ補正】にはこういう弊害があったようだ。


「それであなた達、さっきからあいつとか言っているけど、どんな魔物と戦いたいの?」


青虫を想像してしまった星夜と違い、アリアは三人にどんな魔物を倒したいのか聞きにかかった。


「「「ゴブリン!」」」


アリアに聞かれた三人は、一斉にそう答えた。


「・・・ゴブリン?」

「「「うん!」」」


アリアの確認に、三人は一斉に頷いた。


「どうかしたんですか、アリアさん?」


三人の答えを聞き、なにやら難しい顔をしだしたアリアに、星夜はどうしたのか問い掛けた。


「いえ、私達だけでゴブリン達の相手が出来るか考えていました」

「充分対応出来るのではないですか?ゴブリンなんて雑魚でしょう?」


星夜の中のイメージでは、ゴブリンはスライムと並ぶ定番モンスター。


よく物語に雑魚として登場する上、星夜はこっちの世界ですでに遭遇したゴブリン達をまとめてラストの餌にしている。その為、星夜の中ではゴブリンが弱いという認識になっていた。


「いえセイヤさん、ゴブリンは雑魚じゃないですよ」

「そうですか?」


なので、アリアのこの言葉に星夜は半信半疑だった。


「はい。ゴブリンは群れを形成して数で攻めてくる魔物です。またバリエーションも豊富で、中には武器や魔法を扱う者もいます。スライムなんか足元にも及ばない厄介な魔物ですよ」

「そうなんですか」


アリアは真剣にゴブリンの危険性について星夜達四人に説明していた。が、星夜はやはり半信半疑だったし、子供達三人にもイマイチアリアの危機感は伝わっていなかった。


「なあアリア姉、そんなにゴブリンってまずいのか?」

「少なくとも、初心者冒険者であるあなた達が戦うような魔物ではありません」


シンの疑問に、アリアはシンの目を真っ直ぐに見てそう答えた。


「ちなみに、冒険者ギルドとしてはゴブリンの討伐はどのレベルの冒険者に推奨しているんですか?」

「そうですねぇ、・・・だいたい一人前からベテラン冒険者達あいてに推奨されてますね。初心者冒険者や、見習い冒険者だとあまり強くありませんし、対応力や持久力もありませんから、ゴブリンに数と豊富なバリエーションで攻められると、すぐに全滅させられてしまいますから」


星夜が冒険者ギルドでのゴブリンの扱いを聞くと、アリアはそう説明した。


先程よりはかなりわかりやすくなって、星夜はアリアがゴブリンを雑魚ではないということに納得がいった。


「なるほど。ちなみに、シン達の実力はどれくらいのゴブリン達くらいと戦えるくらいですか?」

「なぜそんなことを聞くんですか?」

「いえ、シン達にゴブリン数体と戦える実力があるのなら、なんとかしてあげられると思いまして」

「本当かセイヤ兄!」

星夜のこの発言に、シンが食いついた。


「ああ。強力な個体相手には無理だけど、ある程度弱い相手に対処出来る能力ならそれなりに持っているんだ」

「アリア姉!」


星夜の言葉を聞いたシンは、ばっとアリアの方を見た。

ソルやファウナも、上目づかいでアリアの様子を窺っている。


「・・・はあ。セイヤさん、その能力とはどういったものですか?」


アリアは、シン達を見た後何かを諦めたように一つため息をついた。そして、何かを決心したようにセイヤにそう尋ねた。


「相手の視界を遮る闇を生み出す魔法に、相手を眠らせる魔法。結界を張る魔法に、影で相手を拘束する魔法などです」

「たしかに数を相手に出来そうな魔法ばかりですね。これなら私が補助すれば、ゴブリン十体くらいなら私達だけで相手に出来そうです」

「「「!」」」


アリアがそう言うと、子供達三人組の表情が歓喜に染まった。


「決まりですね。それじゃあ手頃な数のゴブリンを探しましょうか、《マップ》」


これからの方針が決まると、星夜は早速マップを開いてゴブリン達を捜した。


「向こうにちょうど良い数のゴブリン達がいますね。さらに都合の良いことに、他の魔物や冒険者達は近くに居ません」


星夜はマップで手頃な群れを見つけると、四人にそう伝えた。


「セイヤ兄!セイヤ兄!今のってなんだ?」

「今のは俺の魔法の一つだよ。効果は、自分を中心とした一定範囲の情報がわかること。この魔法のおかげで、俺は魔物と遭遇するしないを好きに選べるんだ」


星夜ははしゃいでいるシンに、とっておきの秘密を教えるようにそう言った。


「すげえ~!」

「本当、すごい!」

「便利そう!」


子供達はテンションが上がっているようだ。シンだけではなく、ソルやファウナもはしゃぎ出している。


「たしかに便利ですねぇ。セイヤさん、その魔法ってどれくらいの範囲をカバー出来るんですか?」

「自分を中心にあそこくらいまでですね」


アリアの方も、星夜の魔法に感心していた。そして、より詳しい内容を聞いてきたので、星夜は自分と平原の向こう側を指差してそう答えた。


「あんな所までですか!?随分と広い範囲をカバーしているんですね」

「そうでしょう。実に便利な魔法ですよ」


魔法の範囲の広さに驚いているアリアに、星夜はそう自慢気に言った。


そうして一通りの驚きを四人が表現した後、星夜は四人を目的のゴブリン達のもとへ案内を開始した。


「あれですね」


五人が歩くこと二十分。現在五人は、森の茂みから獲物となるゴブリン達の様子を窺っていた。


「たしかにちょうど良い数のゴブリン達の群れですね」

「そうでしょう。それじゃあ早速、彼らの分断を始めますね」

「よろしくお願いします、セイヤさん」

「それでは、《ダーク》、《スリープ》、《結界》」


アリアに確認をとった星夜は、早速ゴブリン達に向かって三つの魔法を発動させた。


まずは闇を発生させてゴブリン達を包み込む。

次に眠りの魔法を発動させる。


すると、ゴブリン達がバッタバッタと倒れていった。


どうやらちゃんと眠りの魔法にかかったようだ。


最後に、結界で一匹ずつ隔離していけば準備は完了だ。


「ふむ。これで前準備は終わりっと。アリアさん、準備終わりましたよ」

「・・・」

「アリアさん?」


星夜がアリアにそう報告したが、アリアに反応はなかった。


「・・・えっ?ええ、ありがとうございますセイヤさん」


なのであらためて星夜がアリアを呼ぶと、アリアは慌てて星夜にお礼を言った。


「どうかしたんですか?」

「いえ、あまりに鮮やかな手並みでしたから、驚いてしまって」

「そうですか」


アリアがそう言うと、星夜は納得したらしく一つ頷いた。



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