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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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再会

「随分と人がいるな。しかも十代の子供ばかり」


盗賊団を潰した次の日。

星夜は予定通り研修を受けに冒険者ギルドに来ていた。


今星夜の目の前には、星夜より少し若い少年少女達がたくさん集まっていた。


逆に、星夜と同じくらいやそれよりも年上の人間は数える程しかいなかった。


おそらくだが、今いる少年少女達は星夜と同じ初心者冒険者なのだろう。


その中で星夜は明らかに浮いていた。


年齢的にも身長的にも、彼らより上の為どうしても目立ってしまうのだ。


それは残りの少数派も同じらしく、だいたいの人が居心地が悪そうにしていた。


まあ、なかには兄弟の引率で来たのか一部の少年少女達と楽しそうに話をしている例外もいたが。


「うん?」


そんな例外を見ていると、見知った顔を見つけた。


「あれ?ああ、セイヤさん、おはようございます」

「ああ、おはようございますアリアさん」


その例外とは、神殿で星夜の担当をしてくれたアリアだった。


「アリアさんも初心者冒険者だったんですか?」


星夜はアリアも初心者冒険者なのか尋ねた。


「いえ、私は初心者ではありませんよ」


すると、初心者であることは否定された。

ただ、冒険者であることは否定されなかった。


「冒険者であることは否定しないんですね?」

「ええ」

「それじゃあ今日は弟や妹さんの付き添いですか?」

「まあ、それに近いですね」

「近いとはどういう意味です?」


星夜は、アリアの答えに引っ掛かりを覚えた。


「この子達は神殿に併設されている孤児院の子供達なんです」

「孤児院?教会とかではなく、神殿が運営しているんですか?」


星夜は、小説知識で孤児院などは教会がやるものだと思っていた。


「はい。この街でも前は教会が運営していたんですけど、数年前にちょっとしたごたごたがありまして、今では私達神殿が運営しています」

「ちなみに、そのごたごたってどういった?」


星夜は興味本位でアリアに聞いてみた。


「すみません。箝口令がしかれていますから、教えられません」

「・・・そうですか」

(箝口令がしかれるごたごたって、教会はいったい何をやらかしたんだ?)


星夜はそんな疑問を持ったが、厄介事になりそうなので追求はしないことにした。


「話を戻しますけど、私達は孤児院の子供達に職の斡旋などもしているんです。その中で、この子達は冒険者になることを希望した子達なんです。ですので、新人研修の時に神殿の人間が引率して、まとめて冒険者にするというのが最近の神殿の慣習なんです」

「そうなんですか」


孤児達への職の斡旋。別に神殿がそれをしてもあまりおかしくはないが、小説等だとあまり描写がないなと、星夜は思った。


孤児院を守る為に冒険者になるとかいう話なら、結構読んだのにとも星夜は思った。


「じゃあ、今日はアリアさんが彼らの引率担当の日だったんですね」


「いえ、本当は今日じゃなかったんですよ」


星夜は現状からそう思ったが、アリアはそれをすぐに否定した。


「そうなんですか?」

「ええ」

「誰かの代わりですか?」


星夜は適当に理由を考えて、どうなのか聞いてみた。


「それともちょっと違いますね」


が、これも外したようだ。


「じゃあ、どうしてですか?」

「上司の命令と言いましょうか、お節介のせいです」

「お節介?」

「はい」


上司の命令はともかく、子供達の引率が上司のお節介とどう繋がるのか、星夜には皆目見当もつかなかった。



アリアを子供達の引率となるようにしたのは、フォルン神官である。


アリアから話を聞いたフォルン神官は、アリアと星夜がお互いを知る機会を作る為、アリアをこの日の引率に指名したのだ。


ちなみに星夜が冒険者ギルドに所属していること。そして、いつ新人研修を受けるかなどの情報は、神殿の情報網を使って入手していた。


ある意味職権乱用だが、それをして行うのが部下の恋愛補助とは、かなり平和である。


少なくとも悪事ではないので、知られたとしてもフォルン神官は誰からも文句や苦情を言われることはないだろう。また、フォルン神官の意図にアリアは薄々気がついていたが、確信がなかったのでフォルン神官には何も聞いていなかった。


「そういえばセイヤさん。あの後あのクラスについては何かわかりました?一応私の方でも調べてみたんですけど、該当するクラスは見つかりませんでした」

「ええ。知人にもらった本に載っていましたから」

「そうなんですか。それはよかったですね」


アリアは星夜の答えに、安心したようにそう言った。が、すぐにアリアの顔が安心した顔から不思議そうな顔に変わった。


「どうかしましたか、アリアさん?」


それを見た星夜も、不思議そうな顔になった。


「いえ、長い間クラスを扱ってきた私達神殿が知らないクラスが載っている本というのを不思議に思いまして」

「ああ、そういうことですか」


たしかに長い間クラスのことを扱ってきた自分達が知らないクラスが載っている本の存在は、アリアさん達には不思議だろうな。


星夜は素直にそう思った。


「セイヤさん、その本の著者はどなたなのですか?」

「なんでそんなことを聞くんです?」

「いえ、私達の知らないクラスを知っている人みたいですから、有名な人か凄い人なのだと思いまして、それなら是非お話を聞きたいと思ったんです」

「ああ、そういうことですか」


星夜はアリアの言葉に納得がいった。


たしかに神殿が把握していないクラスを知っている人物から話を聞いてみたいと思うのは当然だ。


「そうですねぇ、名前は少々問題がある為言えません。ただ、著者が誰かと言えば俺にその本をくれた知人です」


星夜は今回は神様の名前を出すのは避け、そう当たり障りのない返答をした。


「著者の方はセイヤさんのお知り合いの方なのですか!?でしたら、今度紹介していただけませんか?」

「あー、それは無理です。その知人はかなり遠方にいますし、かなり忙しい人なんです」


アリアの頼みを、星夜はそう言って断った。


実際のところ、神様がいるのは遠方どころかこの世界の外だ。

夢を媒介に会える星夜ならともかく、普通の人間が神様に会うことは不可能だと言えるだろう。


なにより、直接あったらアリアが発狂するかもしれない上、神様とまともに意思疎通が出来るかもわからなかった。


転生者達は発狂はしていなかったが、会話が成立していたとは言い難いのでこの可能性もわりと高かった。


「そうですか。残念です。でしたら、今度そのクラスが載っている本を見せていただけませんか?」

「本をですか?」

「はい。セイヤさんのクラス以外にも未知のクラスが載っているかもしれませんから、是非読んでみたいんです」

「そうですねぇ?・・・機会があれば構いませんよ」

「ありがとうございます」


星夜は少し考え、本を見せるぐらいなら良いだろうと、アリアにOKを出した。


その後も星夜とアリアは、しばらく他愛もない会話をした。


「新人研修に参加する人達は、こちらに集まってください!」


それから少し経ち、冒険者ギルドの受付の方からそんな呼びかけがあった。


「どうやら時間みたいですね」

「そのようですね。みんな、行きますよ」

「「「「はーい!」」」」


呼びかけを聞いた星夜にアリア。そして、アリアが引率している子供達。また、冒険者ギルド内にいた初心者冒険者達が一斉に移動を開始した。


星夜はこの時には気がついていなかったが、その移動する者達の中には深剣や氷室。盗野に迷地。そして、彼らにくっついて移動する二人の少女の姿があった。



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