クラス
神殿を後にした星夜は、一度宿の自分の部屋に戻った。
本当はそのまま冒険者ギルドに行き、冒険者登録をしようかとも思ったが、アリアに詳細不明と言われた夢幻術師と、不遇職扱いの錬金術師のことを先に調べておいた方が良いと判断したからだ。
「さてと、クラスの内容のページはっと」
星夜は、ベットに腰掛けて本を開きクラスの載っているページを探した。
「おっ、あった!ええっと何々・・・」
星夜は、見つけた夢幻術師と錬金術師の内容を読み出した。
【夢幻術師】
夢と幻を操る魔法職。生きとし活ける全ての者を眠りにつかせ、意思ある者を夢の世界へと誘う。
現実世界では無数の幻を操り、相手を幻惑する。
【クラス獲得時から使用可能になる初期能力】
闇魔法、夢魔法、時間魔法、空間魔法、記憶能力上昇、イメージ補正、空間認識能力上昇、時間感覚上昇
【錬金術師】
複数のものを掛け合わせて性能の向上や、まったく別のものを生み出す生産系魔法職。材料さえ揃えばあらゆるものを生産可能。材料不足も、複数回の錬成や代用品で補うことが可能。
【クラス獲得時から使用可能になる初期能力】
鑑定、錬成、分解、視力上昇、直感
「ふむ。なるほど、最初から持っていた魔法は夢幻術師のおかげか。けど、なんで時間や空間の魔法がこのクラスで手に入るんだ?」
星夜はクラスと魔法の繋がりがわからず、首を傾げた。
「・・・考えてもわからないか。あと、錬金術師の方はだいたい予想通りの内容と能力だな。ただ、視力上昇とか直感が入っているのは気になるな。こっちもなんでだろう?この世界のクラスっていうのはこんなものなんだろうか?・・・こっちもわからないか。機会があればこっちの世界の人に聞いてみよう」
星夜は初期能力で少し悩んだが、疑問は先送りにすることにした。
「あとしておくことは、初期能力の確認だな」
星夜は、能力についての記載を探してページをめくっていった。
「あった!ここからだな」
能力についての記載を見つけた星夜は、クラスのページと能力のページを見比べて、初期能力について調べていった。
その結果、以下のようになった。
【闇魔法】
闇の属性を扱う魔法系統。相手の視界を奪う魔法や、相手の精神に働き掛ける魔法が多い。
【夢魔法】
夢を扱う魔法系統。他者を眠らせる魔法や、相手に見せる夢に関する魔法が多い。極めると、現実と遜色のない夢を構築出来る上、五感の再現や相手の感じる違和感を無くすことも可能。
【時間魔法】
時間を扱う魔法系統。自分や他人、ものの時間を操作出来る魔法。遡航、停止、減速、加速など速度を操ることが可能。
【空間魔法】
空間を扱う魔法系統。人やものの位置、空間の広がり、密度などを操作出来る魔法。同一空間上の転移から、空間接続等も可能。亜空間の形成による結界の構築も出来る。
【記憶能力上昇】
所持者の記憶を能力が上昇する。物覚えが早くなり、物忘れしなくなる。
【イメージ補正】
所持者の脳内イメージに自動的に補正が入る。ぼやけている部分が綺麗になる。
【空間認識能力上昇】
所持者の空間認識能力が上昇する。方向感覚や上下感覚、平衡感覚が強化される。自分の周囲の様子を感じやすくなる。
【時間感覚上昇】
所持者の時間感覚が上昇する。時計がなくても時間が正確にわかるようになる。
【鑑定】
所持者が見たものの簡易情報を確認出来るようになる。
【錬成】
ものAとものB以上のものを組み合わせてものCを生産する能力。使用時、生産するものに比例した魔力を消費する。使用回数の上昇に伴い、魔力消費の軽減は可能。
【分解】
対象を分解して複数のものにする能力。対象に触れてから分解するまでに時間がかかる為、生物への使用はオススメしない。
【視力上昇】
所持者の視力を上昇させる能力。所持者の視力に2.0追加。
【直感】
所持者の第六感が覚醒する。本能の部分でわかっていることを意識的に理解出来るようになる。
「名前のとおりの効果がほとんどか。けど、一部はちょっと予想外の内容だな」
星夜は、空間魔法の内容を見てそう思った。てっきり空間転移とかする程度だと思っていたのに、密度がどうこう書いてあって、何が出来るのか不思議に思ったのだ。
「まあ、能力はこれくらいで良いか。あとは今出来る魔法や、錬金術で出来ることはっと。これかな?」
星夜はまたページをめくり、今どんな効果の魔法が使えるのか、錬金術で何が作れるのかを調べた。
【闇魔法】
視界阻害魔法
・任意対象の周囲に闇を発生させて視界を塞ぐ魔法。
【夢魔法】
睡眠誘導魔法
・任意対象を眠らせる魔法。明るい場所では効果が半減。暗い場所では効果が増大。
夢形成魔法
・眠っている自分・他者に夢を見せる魔法。夢の内容は術者が自由に設定可能。
事象託宣魔法《神託》
・夢の中で高位存在と交信する為の魔法。通常の交信相手は加護をもらっている神など。ただし、可聴範囲を広げればそれ以外の者との交信は可能。
【時間魔法】
思考速度加速魔法《速考》
・自分の思考速度を周囲の時間よりも早くする魔法。発動後、周囲の動きが遅く感じるようになる。
身体時間加速魔法
・肉体の動作速度を加速させる魔法。
【空間魔法】
空間把握魔法
・自分の目の届く距離を最大範囲とし、その範囲内の空間情報を把握出来る魔法。
収納空間魔法
・自分の指定した任意の隙間に収納用の亜空間を形成する魔法。亜空間の広さは、術者の魔力量に依存。亜空間内の法則は任意指定可能。
【錬金術】
体力回復薬《HPポーション》
<材料>
水、薬草、スライムの体液(分解後)
※味が欲しい場合は、果物等も同時に錬成すること。
魔力回復薬《MPポーション》
<材料>
水、薬草、スライムの体液(分解後)、魔物の魔石または錬成時に魔力を追加
※味が欲しい場合は、果物等も同時に錬成すること。
「ふむ、見事に攻撃能力に乏しいな。けど、それ以外の部分ではわりと優秀だな。戦闘は、ダークとスリープのコンボで相手を眠らせて回避すれば良いかな?相手が多かったら速考とアクセルで逃げ切れば良いし。あとは、マップで周囲を探って敵を回避するっていう手もあるし。錬金術の材料を集めたらポケットに確保して、宿に帰ってからポーションの類いを錬成すれば良い。今出来る流れだとこうだな。なんか見事に錬金術師ご用達といった能力してるな。まあ、しばらくは錬金術師がメインで良いだろう。冒険者になっても討伐依頼とかは無理なんだから、採取系の依頼で日銭を稼いでいこう。その間に市場の確認もしておかないとな。ポーション類なら自分で使えば良いけど、いらないものや使えないものを作ると、素材が無駄になるからな。いや、分解すればリサイクルは可能なのか?・・・あとで実験してみよう。さて、そろそろ冒険者ギルドに行くか」
星夜はこれからのプランをまとめ終わると、宿屋をでて冒険者ギルドに向かった。