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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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禁忌の名

『そういえば・・・最後に一つだけ良いか?』

「なんだ?」


とりあえず盗野のこれまでを聞き、一段落ついた後、星夜はふとあることを思い出して、そのことを盗野に確認することにした。


『盗野にカーバンクルの話を持って来た外套の人物は何者だ?』

「なんでそれを!」


星夜の質問に、盗野はひどく驚いた顔をした。


「「「カーバンクル?」」」


そして、そんな顔をした盗野に驚きつつ、他の三人は星夜の言った言葉を口にした。


『カーバンクルというのは小動物型の幻獣の名前だ。俺は昨日、森で盗賊に襲われていた彼らを保護した。その際、その外套の人物を見た』

「・・・お前があいつらをやったのか?」

『・・・いや、俺は直接手を下していない。それに、外套の人物には空間転移で逃げられた』


星夜は本当のことは言わず、少しはぐらかした。


「あいつは生きているのか?」

『昨日時点では生きて逃げ延びた。だが、今日森で偶然盗賊達を見つけ、話を聞く機会があった。あいつがカーバンクル達を捕まることを盗野に提案したんだってな。それに、まだ帰って来てないんだってな。それは事実か?』

「・・・ああ、どちらも事実だ。あいつの提案でカーバンクル達を捕まえることにしたことも、あいつが昨日から帰って来ていないことも間違いない」

『そうか。これであいつが諸悪の根源であることが確定したな。今度会ったら始末してやる』


星夜は、カーバンクル達の為にもそうしようと決めた。


「あいつを始末するつもりなのか?」

『ああ。保護しているカーバンクル達の為に、危険の芽は早めに刈っておくつもりだ。あと、なんでこんな話を請けたんだ?自分で言うのもなんだが、俺同様かなり怪しい格好だったろう?』


星夜は自分の影絵の姿を指さし、盗野がどうしてあの人物の話を請ける気になったのか尋ねた。


「・・・転生者だったんだ」

『うん?』


盗野の声が小さく、星夜達にはよく聞こえなかった。


「あいつは転生者だったんだ。それで、少しぐらいなら頼みを聞いてやっても良いかと思ったんだ」

『「「「!」」」』


盗野は四人に聞こえていなかったと判断すると、今度はさっきよりも大きな声でそうはっきりと言った。


『あいつ、転生者だったのか。なら、あいつが空転のキャスターか?』


星夜は昨日見た外套の人物の格好と、空間転移という能力からその可能性が高いと思った。


他にも、あの人物なら洞窟に戻って来て、ここにいる二人と同じ空間にいることがあるだろうということもその根拠になっている。


今まで影も形もなかった第三者が割り込んで来るよりは、そう考える方がすっきりする。


依頼が三人を追い詰めろというものないじょう、確実にこの三人は近々出揃うはずだ。


星夜は、外套の人物が空転のキャスターであると、確定して行動することにした。


他の二人と違い、あの人物にはカーバンクル達とも星夜とも因縁がある。


たっぷりと追い詰めてやろうと星夜は思った。


『もう情報交換はこの程度か。なら、そろそろ向こうに戻るか』

「ああ、お前の魔物達の相手をしている子分達が心配だ」


数日の間に情が移ったのか、盗野は本当に心配そうにそう言った。


『それなら安心しろ、あいつらにそこまでの攻撃力は無い。まあ、消化ボディーと質量押しで骨折とかはしているかもしれないがな』


星夜は、わりとスライム達の力を過小評価していた。が、錬成スライム達を筆頭に、実際にはそれなりに強かったりする。


「そういえばあなたはどうやってあの魔物達を操っているんですか?さっき聞いた話だと、あなたの転生特典は夢幻術師というクラスであって、ダンジョンじゃないんでしょう。そうなると、僕達が今いるダンジョンもどうやって入手したんですか?それとも、ここはさっき言っていた幼なじみの人のダンジョンなんですか?」


星夜が盗野と話していると、深剣が矢継ぎ早にそう質問してきた。


『まあ、落ち着け。それくらいなら、今から教えてやるから』

「わかりました」


深剣は一歩後ろに下がり、星夜の説明を待った。


『まず最初の質問についてだが、あのスライム達は俺が作ったものと、ダンジョンの機能で出現させたものだ』

「「「「魔物を作ったあぁ!?」」」」


星夜の突拍子もない答えに、全員が驚きの声を上げた。


「どういうことですか!?」

『ああ、さっき俺が持っているクラスに錬金術師があると言っただろう』

「・・・たしかに言ってましたね。まさか!」

『ああ。錬金術師の能力を使えば、魔物を錬成出来るんだ。あの中にいた少し変わっている魔物は、俺がその力を使って作りだしたんだ』


星夜は自慢気にそう言った。


「この世界、人が魔物を造れるんですか」

「なんかゲームみたいだな」


深剣と氷室の二人は、とくに違和感なく星夜の言葉を受け入れた。


「魔物を造れる?」

「なんとまあ」


が、盗野と迷地の二人は受け入れがたいようだ。


これも世代差であろうか?


『次に、俺がなんでダンジョンを持っているかだったな?』

「はい」


星夜は二人をほおって、深剣の二つ目の疑問を確認した。


『あれはさっき見せたのと同じ依頼の報酬だ』


本当は少し違うが、依頼を達成したからもらったか、依頼を達成する為に必要だからもらったかの違いだったので、星夜は深剣にそう答えた。


「え!?ダンジョンまで依頼報酬なんですか!?」

『そうだ』

「へぇ~、アイテムにユニークスキル、ダンジョンまで報酬にくれるなんて、あなたの主の人はすごい人なんですね」

『そうだな』


(なんせ神様だからな)


感心したように言う深剣に、内心星夜はそう言った。


「いや、さすがにそれはおかしくないか。ダンジョンをくれる人物って、いったい何者だよ?」


深剣は素直に納得してくれたが、氷室はさすがにおかしいと思ったらしく、星夜にそう突っ込んできた。


『あいにくと主の名前は言えないぞ』

「なんでだ?後ろ暗いことでもあるのか?」

『いや、とくにそういうことはない。ただ、普通の奴が名前を聞くと、発狂する可能性があるだけだ』


星夜は神様の名前から、そうなる可能性を危惧していた。その為、星夜はこっちではナイアルラトフォテップのことを神様と呼称している。


「名前を聞いただけで発狂するって、お前の主は何者だよ!?」


さすがに星夜のこの返答は、誰もが聞き捨てに出来なかった。


『余計な詮索は本当にしない方が良い。これは同じ転生者としての忠告だ』


星夜は、殊更真剣に四人に忠告した。


星夜のただならぬ雰囲気に、全員が押し黙った。


『さて、もう本当に切り上げよう。向こうの様子も気になるしな。《シャドウ》《ゲート》』

「「「「うわっ!?」」」」


星夜はそう言うと、来た時と同じように影を出入口にして、彼らを向こうに送り返した。


「俺は依頼報酬を確認してから追いかけるか」


星夜は彼らを送った後、ポケットからいつもの本を取り出し、今回手に入れた魔法とスキルについて調べた。

もちろん、ユニークスキルについて調べることも忘れていない。



「・・・このユニークスキル事典、スキル名と発動条件しか載っていないのはなんでだ?」


魔法とスキルを確認し終えた星夜は、現在さっき入手したユニークスキル事典を見ていた。


しかし、その内容は星夜が期待していたものではなかった。


なぜなら、本に書かれていたのが、ユニークスキルの名称とその発動条件だけで、実際にどんな効果があるのか書かれていなかったからだ。


なんで肝心な部分が載ってないのか、星夜には不思議でならなかった。


「・・・とりあえず、確認は後回しにするか」


星夜は一旦ユニークスキルについては忘れることにした。

そして、先に送った四人の後を追いかけ、ダンジョンをあとにした。

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