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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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捜し人

『さて、あの中にいてくれると良いんだが』

「あの中にも孫の顔はないのう。ちなみに、どうやって転生者か確認するんじゃ?」


入口と奥、双方の顔ぶれを確認した老人は、どちらからも孫を見つけることは出来なかった。


その後は、星夜が会おうとしている転生者から何か孫のことがわからないかと、星夜にそう尋ねた。


『・・・シンプルに尋ねるのと、状況から判断するのとの二択だな』


星夜は少し考えて、老人にそう答えた。


前者は、老人とのように会話で確かめる方法。

後者は、先程までのように依頼が達成するかどうかで確認する方法。


穏便に済ませるなら前者の方法だが、この方法だと惚けられる可能性がある。


逆に、後者だと血生臭くなるが、確実に転生者かどうか確かめられる。


どちらも一長一短だ。


「お前さんはどちらの方法で確認するつもりじゃ?」

『最初は尋ねる。次に彼らに挑み、それを確定させる。もともと俺が主から請けた命令には、転生者達との交戦が入っていた。まあ、お前のは救出だけだったがな』

「そうかい。なら儂も行くとしよう」


老人は星夜の答えに一つ頷いた。


そして、影絵と老人は両者の中間に移動して行った。


『《ダーク》、《スリープ》関係無い者達は眠れ』


両者の中間地点にまで影絵を動かした星夜は、そこで闇と眠りの魔法を発動させた。


影絵を中心に闇が生まれ、その闇に触れた人々は次々に眠りに落ちていった。


最終的には十人の人間を残し、それ以外のこの空間にいる全ての人間達は眠りに堕ちた。


『予想以上に残ったな。一部は転生者として、残りは眠り耐性なんかを持っている連中か?』


星夜は洞窟の現状を確認し、そう結論した。


本来なら転生者達だけ起きていてくれた方がこのましいが、状態異常に耐性があれば防がれるのは当然。


星夜は、ある程度転生者の候補をより分けられたということで満足することにした。


『さて、ここからさらに絞り込んで、半分くらいにしないとな』


そして星夜は次の行動に移ろうとした。


「「「ちょっと待て!!」」」


が、その場にいた全員から待ったがかかった。


『どうかしたか?』


星夜は、影絵の隣にいた老人に尋ねた。


「どうしたもこうしたも、お前さんの行動は唐突過ぎる。見ろ!状況についていけていない連中の顔を」


老人にそう言われた星夜は、盗賊と冒険者達の顔をそれぞれ確認した。


盗賊の頭、冒険者達のリーダーと思われる年かさの者達以外は、現状についていけていないという顔をしていた。


『たしかに現状についてこれていない顔をしているな。だが、別段俺に説明の義務は無いしな』


星夜は彼らの様子を確認した後、そうばっさりと切って捨てた。


事実、星夜にいちいち説明するような義理も義務もなかった。


「「「おい!」」」


が、それでは堪らないのが星夜に一方的に仕掛けられている盗賊と冒険者達だ。


彼らにとって、星夜は突然乱入して来た第三者なのだ。

彼らとしては、星夜の目的の一つも知りたいところなのだ。


盗賊にとってみれば、襲撃して来た冒険者達を迎撃に出たはずが、最初に出た仲間達はほぼ壊滅。

さらに言えば、自分達の仲間達だけではなく、襲撃して来た冒険者達も同じく壊滅状態。


一方、冒険者達もその辺りは盗賊達と変わりない。

盗賊を襲撃する為に洞窟に突入した先陣は壊滅状態。そして、襲撃した相手である盗賊達も壊滅状態。


そんな互いに潰しあったような状況の中で、星夜の影絵の存在はひどく浮いていた。


その為、この状況にしたのが星夜だとも両者は疑っていた。


そして、星夜が介入した結果こうなっているのだから、その疑いは正しい。


もうここまでくると、星夜は第三者ではなく第三勢力と言っても過言ではない。


実際、星夜は一対多でも戦えるので、それも間違ってはいない。



『そんなに俺の目的が知りたいのか?』


星夜はそんな両者を見て確認すると、その場にいたほぼ全員が一斉に頷いた。


『そうか。なら、確認ついでに言っておくのも良いか』


星夜はどうせ最初は尋ねて転生者を特定するつもりだったので、支障の無い程度に彼らに自分の目的を伝えることにした。



『俺の第一の目的は人探しだ』

「「人探し?」」


星夜の言葉を聞いた両者は、血生臭い現場と合わない星夜の目的に疑問を覚えた。


『そうだ。勘違いしているようだが、この場に倒れ伏している連中はお互いに潰しあった結果こうなった。別に俺が直接何かしたわけじゃない』


星夜は言うことは事実ではあったが、間接的には完全に星夜のせいであった。


「信じられんな」


盗賊達の先頭に立つ、筋肉質ながっしりとした体格の男がそう言ってきた。


「たしかに」


それは冒険者達も同じらしく、こちらも冒険者の先頭に立っていたある種の貫禄を持った年かさの男が盗賊に同意した。


『お前達が信じようが信じまいが事実は変わらん。さて、次に俺が捜している人物についてだが、それは四人程いる』


星夜は別に両者に信じてもらう気がない為、そのまま話を続けた。


「四人。そういえば、先程我々をさらに半分近くにするとか言っていたな」


年かさの冒険者は、少し前の星夜の発言を覚えていた。


『そうだ。俺は主からその人物達につけられた称号しか知らない。それゆえに、十人から少しづつ候補を絞っていく必要がある』


迷走のノーマッドなどは称号と言うより役柄の名称だが、星夜は相手にわかりやすいようにそう表現した。


「一応聞いておいておこうか、その称号ってやつを」

『光剣のブレイバー、剛腕のバンデット、空転のキャスター、氷爪のバーサーカーの四人だ』


盗賊から聞かれた星夜は、捜している四人の転生者の称号を伝えた。


「そんなのに該当する奴らは、俺の子分達にはいないぞ」

「我々もだ。今の称号をつけられるような冒険者は、我々の中にはいない」


星夜から称号を聞いた両者は、仲間同士で視線を交わし、該当する人物がいないことをお互いに確認した。


『そうか。まあ、称号だけで見つかるとは俺も思っていない。あと一つだけ、その捜し人達について知っていることがある』


星夜は両者の答えを聞いても、とくに残念がらなかった。

その理由は、迷走のノーマッドの時みたいに、転生特典や役柄の自覚が本人にない可能性をちゃんと考えていたからだ。

なので、次は迷走のノーマッドにも確認した、転生者という言葉を使うことにした。


「それはなんだ?」

『その捜し人達の共通点は、転生者であることだ』

「「「「!」」」」


星夜がそう告げると、盗賊も冒険者達も一斉に息を呑んだ。


『その反応、俺の捜し人に心当たりがあるようだな。しかし・・・』


(しかし、なんで全員が反応しているんだ?しかも、個人で浮かべている表情にやたら差があるし?)


星夜は彼らの反応から、彼らが転生者について知っていると確信した。


星夜は、ナイアルラトフォテップさんからこの世界に人物達以外の転生者が来ていないことを聞いていた。

その為、この世界に転生者と言う言葉や概念は今までなかった。


となると、少なくとも彼らは誰か転生者と名乗る者を知っていることになる。


が、今だ起きている全員が転生者という言葉に反応したことは、星夜にとって予想外だった。


てっきり転生者本人か、その転生者からそのことを打ち明けられた人物だけが反応するだろうと星夜は思っていたのだ。

なのに、全ての人間が反応した。

そんなに有名な転生者がいるのか、あるいは何かやらかした転生者がいるということだろうか?


星夜はそう疑問に思い、彼らが浮かべている表情を注視した。

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