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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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牢屋

「ここがそうか」


盗賊達は、森から離れた洞窟に移動していた。


星夜は影から外の様子を伺い、この洞窟が盗賊達のアジトだろうと考えた。


星夜がそう考えていると、盗賊達はそのまま洞窟の中に入って行った。


星夜が影の中から洞窟の中を観察してみると、洞窟の中はかなり人の手が入っていた。


この分だと、隠し通路や逃走経路も後付けで掘られているかもしれないと星夜は思った。


まあ、異世界を渡れる星夜からは逃げられないので、星夜にとってはあったとしても問題にはならないが。


「カーバンクル達は他の連中と一緒に牢屋の中だったな」


(他の連中に、牢屋?)


星夜は、盗賊の言う他の連中とやらが気になった。まさか、カーバンクル達以外にも何か盗賊達に捕まっているのだろうか?


星夜が疑問を覚えている間も盗賊達は移動していき、洞窟のかなり奥。鉄格子のある場所までやってきた。


(見つけた!)


星夜は影から鉄格子の向こう側を確認し、カーバンクル達の姿を見つけた。


(どうやらここにいるのは全員生きているみたいだな)


星夜が見たカーバンクル達は、所々怪我をしていたが、少なくとも全員が生きていた。


これならHPポーションで治療出来る。


星夜は、カーバンクル達に死者がいないことを喜んだ。


カーバンクル達の無事を確認した後、星夜は盗賊達が言っていた他の連中とやらの姿を探した。


すると鉄格子の向こう、カーバンクル達とは別の場所で動く複数の影を見つけた。


(アレが盗賊達が言っていた他の連中とやらか。どうやらここの連中、誘拐か人身売買にまで手を出してるみたいだな)


その影達の正体を確認した星夜は、盗賊達のやっていることにそう当たりをつけた。


その影達の正体は、人間だった。老若男女で年齢性別などはバラけていて統一性がなかった。さらに言うと、種族もまちまちだった。


ヒューマンが一番多かったが、ちらほらとヒューマンではない者達が混じっていた。


身体的特徴で言えば、頭の上に耳。お尻から尻尾が生えているファンタジー世界の獣人ぽいの。

逆に人型の獣というファンシーな者。

他にも耳が尖っているエルフっぽい者や、背丈が低くてガタイの良いドワーフっぽい者も居た。



「さっさとこのちびすけどもを連れて行こうぜ。余りもたもたしていると、お頭に見つかっちまう」

「そうだな」


盗賊達は、鉄格子の向こう側からカーバンクル達が入った籠を持って来て移動しようとした。



(カーバンクル達の安否は確認出来た。もうここでこの盗賊達は片付けても良いか?)


そんな盗賊達を影の中から見ていた星夜は、今すぐに盗賊達を片付けた方が良いのか考えた。


星夜が盗賊達を今どうにかするかの判断を迷った理由は、囚われている人間達にあった。


盗賊達を全滅させるのは簡単だが、その光景を彼らに見せても大丈夫なのか気になったのだ。

下手をすると、彼らにトラウマを植え付けるかもしれない。


また、ここで盗賊達を片付けるとなると、現場を目撃した彼らをどうするのかという問題もある。


人道的には助けるべきだ。

が、ダンジョンマスターでもある星夜が助けても敵認定される可能性はある。

可能性の話をするなら、彼らを救出するのが他の転生者のイベントの可能性もあった。


現在位置や盗賊達の強さ、街にいるであろう転生者達のこと。

それらを加味して考えると、その可能性は以外に高そうだ。


テンプレート的な展開だと、転生者達が盗賊達を討伐して彼らを救出する。その後、彼らの内の誰かが転生者達のパーティーに加わる。


想像してみると結構ありえそうだ。


となると、今は放置の方が良いだろうか?


星夜はわりと真面目にそう考え始めていた。



(うん?)


星夜がどうするか少し考え込んでいると、依頼の紙が目の前に飛んで来た。しかも複数枚。


(このタイミングで来たってことは、やっぱりイベントか?)


【依頼】

盗賊を討伐に来た【転生者】光剣のブレイバーを支援せよ。

【報酬】

ユニークスキル事典



【依頼】

【転生者】剛腕のバンデットを支援せよ。

【報酬】

【スキル】アブソープション



【依頼】

【転生者】空転のキャスターを生け捕りにせよ。

【報酬】

【魔法】空間魔法:エクスパンション



【依頼】

【転生者】氷爪のバーサーカーを支援せよ。

【報酬】

【魔法】時間魔法:フューネラル



【依頼】

三人の【転生者】光剣のブレイバー、剛腕のバンデット、空転のキャスターと同時に戦い、三人を追い詰めよ。

【報酬】

【ユニークスキル】昇華



【依頼】

【転生者】迷走のノーマッドを救出せよ。

【報酬】

【魔法】時間魔法:タイムリープ



(・・・なんだこの依頼のラインナップ?)


依頼内容を確認した星夜は、確認直後にそう思った。


まず目に止まったのは、複数の転生者達の名前。

光剣のブレイバー、剛腕のバンデット、空転のキャスター、氷爪のバーサーカー、迷走のノーマッド。

光剣のブレイバーはともかく、初見の転生者の名前が四つもあった。

しかもこのタイミングで依頼に名前があるということは、この五人とすぐに出会う可能性がある。


転生者達との遭遇率がはっきり言って異常だ。


次に彼らがどう今回の件に関わってくるのかという疑問がある。


光剣のブレイバーについての依頼は盗賊の討伐とあったのでこれは良い。


迷走のノーマッドについても救出と書いてあったので、おそらくすぐそこの牢屋の中にでも居るのだろう。


問題は残る三人。剛腕のバンデット、空転のキャスター、氷爪のバーサーカー。

この三人はどんな理由でここに来るのだろう?


光剣のブレイバーの仲間として?それとも盗賊の仲間に居る?

あるいは、まったくの第三者として介入がある?


この依頼内容からだと、その辺りのことがわからなかった。


名称からすると、盗賊、魔術師、狂戦士という役柄だと推察出来る。しかし、役柄通りの行動をとっているかは不明。


はっきり言って、転生者達の行動原理なんてわからない。


その為星夜は、ここは臨機応変でいくことに決めた。



「襲撃だぁー!!」


星夜が次の行動を状況任せにすると決めた後、洞窟の入口の方からそんな叫び声が洞窟の奥にこだました。


(早速光剣のブレイバーが来たのか?)


星夜は、依頼内容から現状をそう推察した。


「襲撃?一体誰が?」

「おそらく冒険者か領主の軍だろう」

「おいおめぇら!加勢に行くぞ!」

「「「おおー!!」」」


襲撃を知った盗賊達は、カーバンクル達が入った籠をおき、洞窟の入口の方に駆け出して行った。


「眠れ、《スリープ》」


星夜は影の中から盗賊達を見送った。そして、盗賊達が牢屋から完全に離れたのを確認すると、牢屋の中にいる人間達に眠りの魔法を使った。


星夜の魔法を受けた人々は、一人を残してみんな眠ってしまった。


「《シャドウ》」


洞窟の暗さも手伝って、眠りの魔法は良く効いたようだ。


ほとんどの人間が眠ったことを確認した星夜は、影の魔法を使って牢屋の中に一つの人型の影絵を作りだした。


そして、その影を牢屋の中でただ一人起きている人物の傍に寄せた。


『お前が迷走のノーマッドか?』


そして、星夜は依頼達成の為に行動を開始した。

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