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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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盗賊の話

「さて、この森に今いる盗賊の数はっと・・・三十ちょいか。結構多いな」


星夜は配下を追いかけるかたわら、マップを使って盗賊の数を確認した。


マップ上では、三十以上の黄色いカーソルが森の中を動き回っていた。


「なら、各個撃破の方針でいくか。集合しだしたら、その時に一網打尽にすれば良いし」


マップ上の盗賊の位置を見た星夜は、すぐにそう戦う方針を決めた。


『お前達、盗賊達をニ、三人に別けてから襲え』


そして、すぐに念話を使って配下の魔物達に指示を出した。


配下の魔物達は、星夜の命令に従って行動を開始した。



「あのちびすけ何処に行きやがった?」

「たしか、こっちの方に飛ばされたはずなんだがな?」


一方盗賊達の方は、カーバンクルを探して山狩りを行っていた。


いくつかのグループに分かれ、矢が当たったはずのカーバンクルをそれぞれが探し回っていた。


「あのちびすけ、ちょこまかと逃げて面倒だったが、動かなくても面倒だな」

「そうだな。あの大きさだと、動かないと見つけにくいからな」

「そういえばあいつ、なんで一匹だけだったんだ?普通、カーバンクルなら群れ単位でいるものだろう?」

「さあな。可能性としては、昨日来た連中が取り逃がした生き残りなんじゃないか」

「だが、そうなるとあいつらはちゃんとここに来てたってことだろう。なんであいつらは帰ってこないんだ?まさか、あのちびすけの仲間を連れて逃げたのか?」

「それはないだろう。あいつらだってお頭の強さと執念深さはよく知ってるんだからな」

「それもそうだな」

「それに、あいつらじゃあカーバンクルなんてレアな生き物を捌けねぇよ」

「それもそうだな。ガハハハ!」


盗賊達は、大きな声で笑い合った。


「だが、ならあいつらは何処に行ったんだ?」


笑っていた盗賊の一人が、ふと真顔になってそう疑問を口にした。


「わからん。そういえば、あの人も帰って来なかったよな」

「そうだな。あいつらなら何かヘマをしてそうだが、あの人が帰って来なかったことはおかしいよな」

「だよな。あの人、無口で付き合いづらかったけど、強さはお頭とどっこいだったからな」


盗賊達の話は、仲間達のことから外套の人物のことに移った。


「もともとカーバンクル達の話をお頭に持って来たのがあの人だったよな?」

「ああ。突然俺達のアジトに現れて、お頭に直接この儲け話を聞かせたんだ。お頭は最初半信半疑だったが、実際にあの人がカーバンクル達を捕まえて見せたからこの儲け話に乗ったんだ」

「俺もそう聞いたな。しかし、なんであの人こんな儲け話を俺達に噛ませてくれたんだ?」

「さあな。俺も気になって一度聞いてみたことがあるが、会話さえしてもらえなかったよ」

「あの人は本当に無口だったよな。それに、いつも顔を隠してたろう?俺はあの人が男か女かさえ知らねぇんだよな」

「それは俺もだ。いや、俺達の仲間内であの人のことを少しでも知っている奴なんていないだろう」

「たしかにそうだな。さて、いい加減ちびすけが見つからないものかね?」

「しかたがないさ。地道にやろうぜ」

「ああ」


盗賊達は話をやめ、カーバンクルの捜索に意識を戻した。



そんな盗賊達の会話を、星夜は盗賊の影の異世界で聞いていた。


「なるほど、主犯はあいつか。それともう一つ情報が手に入ったな。あの外套の人物はこいつらの所に帰っていない。だから、昨日ことも伝わっていない。この点は俺にとって好都合だな」


星夜は盗賊達の影の中から情報を収集しつつ、配下の影からそれぞれの魔物に指示を出して、盗賊達の数を減らしていた。


具体的に手順を説明すると、まずは星夜がマップを使って盗賊達の位置を捕捉する。

次に魔物達にその位置を教え、盗賊達の近くで待機させる。

魔物達の準備が整ったら、盗賊達の影を対象にゲートの魔法を発動。

そして連続してシャドウの魔法を使う。

あとは、無防備な盗賊達を影の手で拘束。

最後に、魔物達に盗賊達への突撃を命じて盗賊達をボコボコにすれば終わりだ。


この方法で、すでにこの森にいる盗賊達の半数が片付けられている。


ちなみに、盗賊達の痕跡は昨日同様スライム達が消して回っている。


また、盗賊達には悲鳴さえ上げさせなかったので、盗賊達は自分達に忍び寄る魔の手には気がついていなかった。


星夜は、もういないカーバンクルを捜す盗賊達を、それからもひそかに狩り続けた。



「おい、もういったん戻らないか?これだけ探しても影も形も無いんだ。他の奴らがもう見つけたかもしれないぜ」

「そうかもしれないな」


仲間がほぼ壊滅していると知らない生き残りの盗賊達は、集合を開始しだした。



「盗賊達が集まりだしたか。なら、最後の仕上げと行くか」


それを見た星夜は、魔物達が盗賊と接触しないように移動させながら、盗賊達を囲ませる位置に来るようにさせた。



「おうお前ら、ちびすけは見つかったか?」

「いや、そっちこそどうだ?」

「こっちも影も形も見かけねぇ」

「そうか」


集まった盗賊達は、情報交換をはじめた。


「そういえば他の連中はどうしたんだ?」


盗賊の一人が、集まった仲間達を見てそう疑問を口にした。


最初は三十ちょいいた盗賊達も、今では数人しか残っていなかった。


「まだカーバンクルを探しているか、こっちへ向かって来ているはずだ。ただ」

「ただ?」

「そのどちらでもない場合、昨日帰って来なかった連中みたいに何かあった可能性がある」

「何かって、何だ?」

「それはわからん。だが、この森の中で連中の痕跡は見つけられなかった。この森に来る前に何かあったのか、あるいはこの森で何かがあって、誰かがその痕跡を隠蔽したのかもしれない」

「結局何もわからないのか?」

「情報がまったく無いからな。カーバンクルも仲間も痕跡を残さずに消えた。まるで神隠しだ」

「おいおい、物騒なことを言うなよ」


神隠しと聞いた盗賊は、全身を震えあがらせた。


「そうだな。・・・もういったんアジトに戻るか?」

「おいおい手ぶらで戻ってどうするんだよ?お頭に怒鳴りつけられるぞ」

「そうだな。だが、現状ではらちがあかない。今ならアジトにまだ以前捕まえたカーバンクル達が残っていただろう。そいつらの内の一匹でも連れて来て、囮に使えば向こうの方から出て来るはずだ」

「なるほどな!頭良いじゃねぇか。たしかにあのちびすけどもは仲間意識が高いからな、確実に出てくらぁ!」

「異論は無いな。なら、もう少しだけ他の連中が帰って来るのを待つ。その後はいったんアジトに戻るぞ」

「「「おおー!」」」


盗賊達はその後少しだけ仲間を待った。



「捕まっているカーバンクル達がいたのか。なら、そいつらも助けないとな。この盗賊達にはアジトに案内してもらうことにしよう。カーバンクル救出のついでに盗賊達の本隊を叩けば、後顧の憂いを断てるしな」


星夜は、盗賊達が仲間を待っている間に盗賊達を囲ませていた魔物達を回収した。


そして、アジトに帰る盗賊達の影に潜み、盗賊達と一緒にアジトに向かった。



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