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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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ゲート

『なんで無理なんだ?』

『合ワナイ!』

『合わない?何が?』


星夜が卵を温めるのが無理な理由をカーバンクル達に尋ねると、カーバンクル達は説明をはじめた。

カーバンクル達の説明を文章にまとめるとこうなる。


カーバンクルいわく、その卵と自分の属性が合わないそうだ。


カーバンクル達は火の属性。

それにたいして、この卵は水の属性らしい。

ニクスは自分達と同じ属性だった為、自分達の魔力を注いで生まれるの助けられたそうだ。


卵のニクスの周りで踊ったり、赤い光を放射していたのは、魔力を渡す為の行為だったそうだ。


その結果、本来なら一ヶ月は生まれないはずのニクスを、たった一日で孵かさせた。


この事実には、星夜も普通に驚いた。


それはともかく、属性が合わないと卵を温めるのは問題があるそうだ。


だからカーバンクル達にこの卵を温めるのは無理らしい。


ちなみにどんな問題があるかというと、卵の中の生物の弱体化や虚弱化。果ては暴走を引き起こす可能性があるらしい。


なので、星夜もカーバンクル達に無理を言えなかった。



『それじゃあしかたがないな。この卵はゆっくり孵かさせるか』


星夜は、その方針でいくことにしようとした。


『提案』


そんな時、カーバンクルの一体が星夜に声をかけた。


『提案?なんだ?』

『仲間、呼ブ、良イ?』

『仲間を呼ぶ?カーバンクル達をか?なんでまた?ああ!他にもまだ仲間が残っていたのか。まあ、スペースはあるから別に良いぞ』

『アリガトウ。ケド、少シ、違ウ』

『違う?何が?』


星夜がどう違うのか聞くと、カーバンクルは説明をはじめた。


なんでも、カーバンクルが呼ぶといった仲間は群れの仲間ではなく、近縁種の幻獣のことらしい。

それぞれ別の属性の宝石を持ったカーバンクルと似た存在で、それらの幻獣達もヒューマン達の欲望の対象になって苦労しているそうだ。

なので、それぞれが昔から安住の地を探していたそうだ。


今回、カーバンクル達はここという安住の地を得た。

是非他の幻獣達もこの地に呼び寄せたいらしい。


星夜としては、さっきも言ったとおりとくに問題は無い。


連れて来る相手が変わっても、それで何か問題が発生するわけではないからだ。


それに、カーバンクル達いわく星夜の手伝いもしてくれるそうだ。


それぞれの属性の仲間がいれば、その属性の卵の孵かを早めることが出来るらしい。


これは星夜にとってかなり嬉しいことだ。

卵が早くかえれば、その分戦力の増強になるからだ。


それに、カーバンクル達には他にも星夜に協力することが出来るそうだ。


それは、カーバンクルの能力と生態に由来する。


能力の方でいえば、カーバンクル達には鉱石や貴金属を見つける能力がある。


生態の方でいえば、カーバンクル達は定期的に火ルビーと緋ガーネットを星夜に供給出来る。


これは、カーバンクル達の魔力を額に宝石あるに貯蔵し、一定量貯まると宝石が生え変わるという生態が理由だそうだ。


『そうか。それは有り難いな』


星夜は、降って湧いたようなお礼に感謝した。


これが俗に言う、情けは人の為ならずというやつだろう。

やはり人助けはしておくものだ。


キュッ?


『ああ、好きなだけ仲間を呼び寄せてくれて構わない』

『ウン!』


星夜はそっと外への出入口を開いた。すると、数体のカーバンクルが夢の世界から外に出て行った。

おそらく、仲間達に連絡を取りに行ったのだろう。


「ふむ。俺も外に出るかな。たしか街とダンジョンを往復するという依頼があったはず。それを達成して報酬の魔法を手に入れておこう。たしか、空間魔法のゲートだったな。名前からして移動関係の魔法だろう。今の内に獲得しておけば便利そうだ」


星夜はそう決めると、夢の世界から外へと向かった。



「さて、どう移動するかな?」


星夜は現在位置と街の場所を思い浮かべ、どう移動するかを考えた。


ダンジョンから街までは、直線距離で歩いておよそ三時間。

普通ならば直線距離で移動するのが普通だ。しかし、移動の過程でこのダンジョンの場所がばれる危険性がある。

そうなると、街へは周り道をして行く方が良いだろう。


ただ、そうなると直線距離で移動するよりも時間がかかることになる。

それだと、単純計算で一往復するだけで半日以上かかることになる。


道中にあるであろう魔物との戦闘も考慮に入れる、それが丸一日になる可能性は高い。


さすがにそれは時間の無駄遣いになる。


「なら答えは決まりだ。移動距離を零にしてしまおう。《ディスタンスチェンジ》」


時間を惜しく思った星夜は、移動するという過程を無くすことを選択した。


ダンジョンから少し離れた場所に移動し、そこから街までの直線上の空間の距離を零にした。


あとは、ただ一歩街に向かって踏み出すだけで街に到着した。


「障害物が無いと簡単だな。しかし、この移動手段がばれると面倒だな。さっさと回数をこなしてしまおう」


星夜はそう言うと、繋げた空間を行ったり来たりしていった。


ポーン!


しばらくそれを繰り返すと、いつもの音が星夜の頭の中で鳴った。


【依頼達成!報酬贈呈!空間魔法ゲートが使用可能になりました】


「依頼達成っと。さて、ゲートはどんな魔法かな?」


星夜はポケットから本を取り出し、空間魔法の項目から調べた。


「あった!これだな・・・かなり良さそうだな」


【空間魔法】《ゲート》


任意の対象と対象を繋ぐ魔法。一般的には、術者の傍の空間と目視出来ない程遠くの空間を繋ぐ為に使われる。が、別にそれしか出来ないわけではない。


対象を門とし、門とした対象の異世界に入ることが可能になる。


影を門にすれば影の世界に。

鏡を門にすれば鏡の世界に。

水を門にすれば水の世界に。

大気を門にすれば大気の世界にそれぞれ入ることが出来る。

そして、その世界からは門にしたものと同じものを門にすれば簡単に出られる。



「この魔法、どんな空間魔法なんだ?今までも亜空間とかいうのは説明文に入っていることがあったが、とうとう異世界ときたか」


星夜は、ゲートの魔法のスケールの大きさに驚いた。

というか、明らかに過剰なスペックをした魔法だと星夜は思った。


「・・・気にするだけ無駄だろうな。せっかくだから、試しに一回やってみるか。何を門にするかな?」


星夜は、自分の周囲に何か門に使えそうなものがないか探した。


「そういえば生き物は無理なのか、この魔法?」


星夜は、この魔法が生物に使えるのか疑問を持った。


「・・・少し試してみるか。カーバンクル」


星夜は駄目もとで試してみることにした。

ただし、生物が無理だった場合を考慮し、額に宝石を持っているカーバンクルを門として選んだ。


これで、生物が駄目だった場合はすぐに宝石の方を対象に出来る。


キュッ?


星夜が呼びかけてすぐ、ダンジョンから一体のカーバンクルがこちらにやって来た。


「少しじっとしておいてくれよ。《ゲート》」

星夜が魔法を発動させると、カーバンクルの額の宝石から光の扉が出現した。


「生物は無理だったか。まあ、それはそれで良いか」


星夜は現状を確認すると、そう結論を出した。


「さて、せっかく門を開いたんだ。一度異世界に行ってみるか」


星夜は気持ちを切り替えると、カーバンクルの正面にある光の扉をくぐった。



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