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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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愛玩系

「そういえばこの魔法、何処から何処までを俺の影として扱ってるんだ?」


しばらく影魔法のことを考えた星夜は、そんな疑問を持った。


この魔法は最初は自分の影を、そして魔法を習熟すれば他の影を操れるようになると本には書いてあった。

つまるところ、最終的には全ての影を操ることも不可能ではないのだ。

しかし、説明文を鵜呑みにするのなら、自分の影の方が操りやすいとなる。

だが、自分の影とは何処から何処までを指すのだろう?


目の前の影は自分の影だろう。なら、木陰に入った場合はどういう扱いになるのだろう?

いや、ここはもっと身近なことで想像してみよう。

例えば闇魔法のダークを使った場合。あるいは、先程考えた遮光結界を使った場合。

二つの場合、自分の影は何処から何処までがそうなんだろうか?


もしも、これで作った影も自分の影という扱いなら、おそろしく戦略が広がることだろう。


星夜は、次はこれを確認することに決めた。


「《ダーク》、《シャドウ》」


星夜は、闇の魔法で自分の周囲の光を遮っていった。


その結果、星夜の影は光を遮ったその分だけ肥大化していき、あっという間に最初の数倍の大きさにまでなった。


それを確認した後、もう一度影の魔法を発動。


影の形状をまたいじっていった。


しばらく動作を確認した結果、肥大化した影の全てが自分の影扱いであることがわかった。

ただし、表面積が増えたせいか影の動作は最初よりもゆっくりとなっていた。


気になったので試しに影をさらに肥大化させてみると、それに比例するように影の反応が鈍くなっていった。


「あまり大きくするのは駄目みたいだな。それとも、俺が慣れていないだけか?」


少しの間また影を動かした星夜は、そう思った。


「そろそろ実戦で使ってみるか。手頃な相手はいるかな?」


星夜がそう思いながらマップを見ると、黄色いカーソルがあった。それもそこそこ近くに。


「あっちか」


星夜はその相手がいる場所に向かって歩きだした。


それから少し経つと、星夜は目的の相手を目視で捉えた。


「あれだな」


星夜の視線の先には、複数の影があった。

その姿は、星夜にはウサギかリスに見えた。何故別の生物を上げているかというと、その影がその二つの特徴を持っていたからだ。


大きさはリスとウサギのちょうど中間くらい。体毛の色は焦げ茶色。耳はウサギのように長く、尻尾はリスのように長かった。

瞳の色は火のように赤く、その額にはルビーのように輝く紅い鏡のようなものがついていた。


「なんだあの魔物?ウサギ?リス?いや、似ているけど違うよな。なら、なんて魔物だ?」


星夜は相手の正体がわからず、首を傾げた。


「とりあえず一度接触してみるか」


少し考えたがあの魔物の正体がわからなかった星夜は、とりあえず一度戦ってみることに決めた。


キュッ?


星夜が近づいて行くと、正体不明の魔物達が一斉に星夜を見た。


「うっ!」


星夜はその場で立ち止まり、魔物達と目を合わせた。


しばらくの間、両者の間で沈黙が流れた。


「可愛いな。・・・こいつらを倒すのは駄目だな」


その後星夜は、そっとそう口にした。


その魔物達を正面から見た星夜は、彼らを魔物とは思えなくなっていた。


そのサイズも容姿も、何処からどう見ても愛玩動物のそれだったからだ。


魔物を殺すことに抵抗は薄くても、さすがに愛玩動物のような生物をどうにかするのは良心が咎めた。


「予定変更だ。シャドウのテストは別のやつでしよう。こいつらは、愛ちゃんのお土産にしよう。愛ちゃんは小動物が好きだし、留守番の共にもちょうど良い」


星夜は、彼らをダンジョンから出られない愛ちゃんの為に捕獲することを決めた。


「《結界》、《シャドウ》」


そう決めた星夜は、すぐに二つの魔法を発動させた。


一つは彼らを逃がさない為の結界。

もう一つは彼らを捕まえる為にシャドウの魔法を使った。


シャドウの魔法の力は非力だが、それでも子供くらいの力はある。


変幻自在な影としての特性と合わせれば、星夜の魔法の中で一番捕獲作業に向いた魔法だ。


星夜は、ゆっくりと彼らに近づいて行った。


キュッ!キュキュッ!!


すると、彼らの方からも星夜に近づいて来た。


星夜が襲い掛かってくるのかと少し警戒するが、彼らは星夜に縋り付いて来た。


「はっ!?」


星夜には何がなんだかわからなかった。

だが、縋り付いて来た彼らはそんな星夜の様子には気がつかず、星夜の全身にくっついてキュ、キュッと鳴いていた。


星夜が彼らをよく見てみると、彼らは身体のあちこちに怪我をしており、血を流している個体もいた。


星夜はどうしたら良いのか少し悩んだが、すぐにHPポーションを取り出して彼らを回復させにかかった。


彼らの怪我は、ポーション数本でとりあえずは治癒出来た。


星夜は、彼らが落ち着くのを待った。内心ではこれから何かに巻き込まれる気がひしひしとしていたが、彼らを見捨てるようなことはしないと決めていた。


それから少しすると、星夜に縋り付いていた彼らの大半は眠りに落ちた。

どうやらかなり疲労していたようだ。


そんな彼らの中、一体だけが起きて現在星夜と見つめあっている。


「何か言いたいことがあるのか?」


キュッ!


星夜がそう確認すると、彼は大きく頷いた。


「そうか、なら」


そうとわかった星夜は、念話のスキルを発動させた。


『これで通じるようになったはずだ』

『ツウジル?』

『通じると言ったか?』

『キュッ!』


星夜が聞こえた言葉が合っているか確認すると、彼はまた頷いた。


『なら問題は無いな。それで、俺に何が言いたいんだ?』

『ケガ、治シテクレテ、アリガトウ』


彼はぺこりと頭を下げた。


『別に気にしなくて良い。俺が勝手にやったことだ』


星夜は彼の頭を一撫でしてそう言った。


『ソレデモ、アリガトウ』

『ふむ。どういたしまして』


星夜は、二回目のありがとうは普通に受け取った。

あまり違うと言うのも、駄目だと思ったからだ。


『・・・アノ』

『どうかしたのか?』


彼は、チラチラと星夜の顔を見た。そして、星夜に声をかけられた直後、何かを決心したように星夜を仰ぎ見た。


星夜は、彼のそのただならぬ様子に何かあると感じた。


『オ願イシマス!仲間ヲ助ケテクダサイ!』


彼は星夜に飛びつくと、必死にそう頼んできた。


彼の念話には、かなり切羽詰まった思いが乗っていた。


『とりあえず落ち着いてくれ』

「うん?これは・・・」


星夜は、彼を抱きしめて彼を宥めた。

そうしていると、星夜の目の前に一枚の紙が飛んできた。


「依頼の紙?なんでこのタイミングで?」


星夜は突然きた依頼を疑問に思ったが、まずは依頼内容の確認を行った。


おそらくだが、この依頼は彼らと無関係ではないと直感が働いたからだ。



【緊急依頼】

カーバンクル達に迫り来る、ヒューマン達の魔の手を払い退けろ!

※敵の壊滅を推奨。

【報酬】

ダンジョンコアに新機能実装



「カーバンクル。これがこの魔物の名前か。そして依頼内容は、カーバンクル達をヒューマンの魔の手から助けること。カーバンクル達が怪我をしていた理由と、さっき言っていた助けてというのはこういうことか」


星夜は、依頼の内容からおおよその事情を理解した。


「緊急とついている以上はかなり急ぎだな」

『お前の仲間達を助けてやる。お前の仲間は何処にいる?』

『コッチ!』


星夜は、カーバンクルの案内に従って移動を開始した。


ちなみに、移動する前に寝ているカーバンクル達は夢の世界に移動させている。



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