ケンタウルス風な何か
「さてさてなんて書いてあるかなぁっと」
星夜は、図鑑のページをめくった。
【ドッグスライム】
【材料】
通常のスライムの素材+ハングリードッグの素材
【説明】
星夜が錬成したスライムベースの魔物。スライムとハングリードッグの錬成体で、スライムにハングリードッグの形状などの情報や能力が継承されている。
通常のスライムでは出来ない細胞の変化が可能で、ハングリードッグの牙に爪、嗅覚を再現出来る。また、ハングリードッグの知能や行動原理も継承されている為、同種で群れを形成して狩りを行う。最初は単体でスライムの分裂を繰り返しながら群れを構築。その後は増えた端からさらに増殖を繰り返し、すぐに大規模な群れを形成する。
数日もほおっておくと、村の一つや二つは物量押しで滅ぼせるようになる危険な魔物である。
【分解後の素材】
スライムの素材一式、ハングリードッグの素材一式
【ラビットスライム】
【材料】
通常のスライムの素材+ラビットの素材
【説明】
星夜が錬成したスライムベースの魔物。スライムとラビットの錬成体で、スライムにラビットの形状などの情報や能力が継承されている。
通常のスライムでは出来ない細胞の変化が可能で、ラビットの爪に脚、聴力を再現出来る。ラビットの脚を再現したラビットスライムのキックは強力で、まともに受ければ大の大人でも良くて骨折。悪ければ内臓を破裂させられて死に到る可能性さえある。また、その脚は穴掘りにも活躍し、高速で深い穴を作り出すことが出来る。
ラビットスライムの聴力は数キロ先の音を拾うことが可能。さらにスライムの特性で聴覚を増強すれば、数十キロ先の音を拾うことも可能になる。
【分解後の素材】
スライムの素材一式、ラビットの素材一式
【スピードスライム】
【材料】
通常のスライムの素材+ハングリードッグの素材+ラビットの素材
【説明】
星夜が錬成したスライムベースの魔物。スライムとハングリードッグとラビットの錬成体で、スライムにハングリードッグとラビットの形状などの情報や能力が継承されている。
通常のスライムでは出来ない細胞の変化が可能で、ハングリードッグの牙に爪と嗅覚、ラビットの脚に聴力を再現出来る。また、ハングリードッグの知能や行動原理が多めに継承されている為、同種で群れを形成して狩りを行う。最初は単体でスライムの分裂を繰り返しながら群れを構築。その後は増えた端からさらに増殖を繰り返し、すぐに大規模な群れを形成する。
数日もほおっておくと、村の一つや二つは物量押しで滅ぼせるようになる危険な魔物である。また、ラビットの習性でもある穴掘りの能力を利用すれば、物量のごり押しも地上と地下、または地下からでも可能になっている。
総合能力でいけば、街の一つや二つ滅ぼせる魔物である。
【分解後の素材】
スライムの素材一式、ハングリードッグの素材一式、ラビットの素材一式
「スライムをベースにしたのは間違いだったな」
星夜は、図鑑を閉じると目頭を押さえてそう断定した。
錬成した三種類全部が村を滅ぼせるようなスペックだったのだ、それも無理はないだろう。
「今度はスライムを使わない方向で錬成しよう。いや、神様的にはこういうのの方が面白いのか?」
村や街を滅ぼしそうなのは星夜的にはNGだったが、神様的にはどうなんだろうと星夜は思った。
ナイアルラトフォテップの感じでは、これくらいアレの方が喜びそうだと星夜は思ってしまった。
「なら、とりあえず一体は錬成しておくか」
それを踏まえた星夜は、錬成した後はダンジョンに置いておけば良いかと考えた。図鑑の内容は実際のところ外での問題なので、ダンジョンに置いておけば大丈夫だと思うことにしたのだ。
「それじゃあ次にいってみるか。その前に一本」
星夜は、次の錬成前にMPポーションを一本開け、魔力を回復させた。
「ポーションの素の味はソーダ風か。果物混ぜてなかったから、この味がベースになるんだろうな」
星夜は、ポーションの味がまずくなくて安堵した。
やはりこれからお世話になりそうなアイテム、味の美味いかまずいかは大切なことだ。
「ふむ、今度は果物を混ぜて、炭酸飲料系のシリーズものでも錬成してみるか」
星夜は、魔物を錬成する方向からポーションを錬成する方向に思考を傾けだした。
ちなみにMPポーションを一本飲んだ結果、星夜はスライムシリーズ三体を錬成する時に使用した魔力の五分の一の魔力を回復した。
つまるところ、三体錬成して消費した魔力の合計は50ということだ。
これが多いのか少ないのかはわからないが、それまでなら星夜は倒れることなく錬成を行えるということだ。
「新しくポーションを作るなら材料がいるな。まあ、ポーション各種はあるから、必要なのは果物程度か。だけどどうするかな?果物を取りに行くにも、本体は愛ちゃんに抱き着かれていて動かせないしなぁ。・・・果物を取りに行ってくれる魔物でも錬成するか。材料は何が適しているかな?」
星夜は次に錬成する魔物のテーマを決めた。そして、何をどう錬成するのが良いか思索し始めた。
「まずは果物を探す能力があると良いな。いや、この世界なら森に行けば簡単に果物程度は見つかるのか?・・・わからないから、一応候補に入れておくか。今俺の手持ちでそういう能力がありそうなのは、ハングリードッグ、ドッグスライム、スピードスライムの三匹だな。これだと、ただ探すだけなら新しく錬成する必要性はなさそうだ。・・・いや、この三匹には手がないから、果物を見つけても持って帰れないかもしれないな。そうなると、こいつらに手を足してやれば良いのか?今の手持ちで該当するのは、ゴブリンかコボルトだな。犬繋がりでまとめるなら、ハングリードッグにコボルトを錬成すれば良いな。こう、ケンタウルス風で」
星夜は、頭の中でコボルトの上半身が生えたハングリードッグの姿を想像した。
「うん?・・・少し無理があるか?」
しかし、コボルトとハングリードッグをそのまま合成したその姿には、無理があるように星夜は思った。
「何が悪いんだ?・・・わかった!ハングリードッグのサイズだ!」
星夜は、今自分がした想像の魔物を夢の世界で実体化させ、上から下まで観察した。その結果、ハングリードッグの脚の部分が震えていることに気がついた。
そして、脚が震えている原因を考えていった結果、ハングリードッグがコボルトの上半身を支えきれていないのだと理解した。
よくよく考えてみれば、それは当然のことだった。構想のもとにしたケンタウルスに問題がなかったのは、下半身が大型草食動物の馬だったからだ。それにたいして、ハングリードッグは小型の犬。そもそも支えられる重量に拓きがあったのだ。
現状の仮想状態で錬成した場合、下半身であるハングリードッグの部分は、常に自分と同程度の重量を支え続けることになる。これは、普通の犬が飼い主の子供を常に背負っている状態に等しい。とてもではないが、錬成した魔物は満足に活動することも出来ず、すぐにへばることだろう。
ならどうすれば良いか?星夜の答えは簡単だった。ハングリードッグの部分を巨大化させることにしたのだ。
現在の状態から、ケンタウルスの状態と釣り合う形にすれば問題は無いだろうという発想である。
「二体。いや、ここはハングリードッグ三体で錬成してみよう。《錬成》」
星夜は、早速ハングリードッグ三体分と、コボルト一体分の材料を持ってきて、錬成を開始した。




